12月16日はカレー記念日

カレー記念日

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12月16日はカレー記念日

カミュエラ

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カレー記念日とは?

加齢を実感したら、それはカレー記念日。
抗ったり笑い飛ばしたりしながら、毎日華麗に加齢していきましょう。

あなたのカレー記念日も、教えてください。
五七五七七形式で、下の句は「○月○日はカレー記念日」なので
上の句の五七五だけ送ってね!

日付は掲載日に変えさせていただきます。

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じじょうくみこの崖のところで待ってます

あのひとは言った、「未来のためにはアレを焼け!」

 

そのひとから返事がくるとは、夢にも思っておりませんでした。

 

 

 

 

「じじょうさま、ご連絡ありがとうございます。
ぜひ一度お話しできればと思います。
ご予定を教えてもらえますか」

 

 

 

 

ヤギシタさんの名前は、シマ島に引っ越してすぐに覚えることとなりました。廃業した民宿を改装して、島で初めてのオーベルジュ(泊まれるレストラン)をつくったこと。それを成功させたことで、これまで島にはいなかった新しい層の旅行客を呼び寄せたこと。島では「ヤギさん」の愛称で親しまれていること。

 

何かにつけて話題にのぼるヤギさんについて、とにかくすごいひとなんだ、と興奮気味になるひともいれば、よからぬものを口にしたみたいな顔をするひともいました。本土から遠く離れた小さな島のムラ社会で、新しいことを始めること、続けること。その厳しさをいろんなひとの言葉からうっすら感じられて、新米島民として息をひそめて暮らしていたわたしは内心モヤモヤをつのらせていたのでありました。

 

だから、いつか聞いてみたかったのです。
本土では気鋭の起業家として知られた存在のヤギさんが、なぜ離れ小島のシマ島でオーベルジュをやろうと思ったのか。
そしてそんな店を、なぜ人気絶頂で突然やめてしまったのか。そこにはきっと、わたしがこの先この島で生きていくためのヒントがある気がしました。

 

しーかーしー。まさかこんなに早く、こんな形で実現するとはねえ。

 

そんなこんなで噂のヤギさんから連絡がきて、あれよあれよという間に話が進み、せっかくだから直接会いましょうなんてことになって、メールを書いて1週間後には東京で会うことになったんだから、人生一寸先は闇じゃなくて光ってところで前回のつづきです。

 

 

 

シマ島の民はTシャツからモコモコダウンに衣替え

 

 

 

というわけで用事を早々に済ませ、待ち合わせ場所として指定された喫茶店に向かいました。

 

言われた通り、のこのこ来てしまった。さて、どうしよう。何から話せばいいのか。会って何が起きるのか。なんか目的あるわけじゃないってわかって、不審に思われたらどうしよう。ここまで来といてナンだけど、あーいますぐ島に帰りたい。

 

落ち着かない気持ちで迎えた待ち合わせ時間。メール受信。

 

 

「すいません、前の仕事が押してまして、10分遅れます!」

 

 

待つこと10分。メール受信。

 

 

「すいません、まだ時間かかりそうです。あと15分待っててください!」

 

 

 

待つこと15分。メール受信。

 

 

 

「本当にすいません! あと15分、いや10分! 待てますか??」

 

 

 

 

あれ、これ詐欺かなんかかな?

 

 

 

そんな疑惑が浮上したりしなかったりをくり返しながら窓の景色をぼんやり眺めていると、通りの向こうからものすごい勢いで近づいてくる1台のロードバイクが見えました。

ヤギさんそのひとでありました。

 

 

 

 

 

「す、す、すいません! すっかりお待たせして、しまって申し訳ない! いやあ、クライアントとトラブっちゃって」
「大丈夫なんですか?」
「まあ、あとは部下がやってくれると思うので」
「どこから自転車でいらしたんですか?」
「赤坂なんだけど、こういうときは自転車が便利ですね。ぜんぜん速いですよ。それよりお詫びにおごりますから、何でも頼んでください。あ、ケーキどうですかケーキ。ここのチョコレートケーキ、結構うまいんですよ」

 

汗びっしょりでペコペコと頭を下げるヤギさんは、わたしが勝手に考えていた「やり手のアラフォー起業家」のイメージとはまるで違っていました。クライアントというのが、おそらくわたしが聞いたらびっくりするような大企業だろうことは想像がつきましたが、それにつけてもこのフラットな雰囲気はどうしたことか。昔からの知り合いだっけ、と一瞬錯覚してしまうようなナチュラルさ。ナチュラルすぎて、初めましての挨拶を忘れてしまうほどでした。

 

ヤギさんのほうも特に挨拶することもなく、水をゴクゴク飲み干して一息つくと、リュックからノートパソコンを取り出して「えーと、なんでしたっけ」と何やら確認を始めました。どうやら、わたしのメールを読み返している様子。

 

「うんうん、なるほど、ライターをされていて。シマ島にいま住んでおられる。ふむふむ、ああそうか、うちには泊まれなかったんですね。それは本当に申し訳ないです! ふうむ。なるほど、いや、別にトラブルがあったわけではないんですけどねえ、」

 

……。

…まさか、このひと、

 

わたしが何者か知らないで「会いましょう」って言ったのか??((((;゚Д゚)))))))

 

 

 

明らかに「いまメール読みました」ってテイで話し始めたことに驚きを隠せませんでしたが、「ぼくね、全然ネガティブには捉えてないんですよ。だって、よそものがうまくいかないのは当然だと思ってるから」といきなり核心の話が始まったので、そのまま聞くことにしました。

 

「オーベルジュを閉めることになったのはいたって単純な理由で、家族が島に帰ってくるから家を返してくれないだろうか、と大家さんに持ちかけられたから。手をかけて育てた場所だったし、賃貸契約はまだ残っていたんだけどね。大家さん一家とは友好な関係を築けたと思うし、いまでも島に行けば普通に会って話します。

 

ただ、これはぼくの想像だけど、大家さんはひょっとしてまわりの人に何か言われたんじゃないかと思う。島の人間じゃなく、よそものに家を貸すなんて、とかなんとか。大家さんはぼくにそんなこと一言も言わなかったけどね。大家さんを苦しめたくはないし、島のひとがそんな風に言うのもわかるので、わかりましたと言って引き下がりました」

 

島の外からはたくさんの旅行者が来たけれど、島の中ではあることないこといろんな噂が流れたこと。不審がられて、冷たい言葉を投げかけられたこともあったこと。でも笑顔で接しているうちに、だんだん理解者や協力者が増えていったこと。それでも、店を続けることは叶わなかったこと。

 

不思議でした。輝かしいキャリアを考えれば、できれば触れてほしくない話のはずなのに、どうしてこのひとは初めて会ったわたしにここまで率直に話してくれるんだろう。ふと以前はらぷさんが「なんか、すごい。」で書いていた「Uさんの家(猫の話)」を思い出して、「いつも扉が開いている家」ってこんな感じかなあ、なんて考えていました。

 

でもそのあと跡地はどうなったかというと、大家さんの家族が住むわけでもなく、そのまま放置されているわけで。島のひとと関係をつくって、どうにか家を借りられることになって、大切に大切に使ってきたのに突然「やっぱ返して」と言われて、その家がどんどん荒れていくのを見かけたら…と考えただけで胸が痛い。

 

「どんなに仲良くなっても、島のひととは超えられない壁がある。それはもう、しょうがないことです。でもね、それでもぼくはシマ島が好きなんですよ。島にいるだけで、気持ちがスーッとする。それに、シマ島は不便でしょ。行政もちゃんとしていないし、観光地としては非常に遅れている。でも、ぼくはそれが面白いと思ったんです。行政主導のろくでもない開発が進むより、よっぽど面白いことがおきるチャンスはあると思う」

 

意外でした。わたしはむしろ、シマ島ってどうしてこんなに停滞しているんだろうと思っていたのに。それが面白い、なんてそういう考え方があるのか。

 

そのときヤギさんはおもむろにわたしを見て「じじょうさんはいま島でどんなひとと付き合ってますか?」と聞いてきました。何人かの名前を挙げると「なるほど。Aさんは知ってますか? Bさんは?」とたたみかけてきます。

 

「移住者って転校生みたいなもので、一度ピタッとくるひとと出会えると一気に人間関係が広がるんですよ。たぶん、じじょうさんは出会いたいコミュニティにまだ出会えてないと思いますよ。たとえば、このひととか、このひとあたりに出会えるといいんじゃないかな」

 

そういって、ヤギさんは自分のFacebookのともだちリストから何人かの島民を指し、そのひとがどんな性格で、どんなネットワークを持っているかを教えてくれました。「ただし、ここからFacebookでともだち申請するのは違うんですよ」というアドバイスつきで。

 

「大事なのは、直接会って仲良くなること。島に限ったことじゃなくて、田舎で今までにないことをしようと思ったら、時間はかかるものです。ぼくもシマ島でいずれ何かやりたいという気持ちはあるけど、自分がやりたいことができるのは島の中枢が世代交代してからかなと思っています」
「えー、そんな先なんですか…」
「だから、じじょうさん」
「はい」
「むずかしい顔してちゃダメです」
「えっ」

「島でネットワークを広げようと思うなら、むずかしく考えないほうがいい。ライターとか、よそものとか、そういうことを振りかざさないほうがいいです」
「はあ…」
「てっとりばやく島になじめる、いい方法を教えましょうか」
「はい」
「それはですね」
「はい…(ゴクリ)」
「そばです」
「は、」

 

そば、焼いてください」
「はっ」
「焼きそばを」
「焼きそば」
「そう、焼きそば。思いっきり。島の祭りで。それに尽きますよ!」
「はい?」

 

 

 

 

 

神輿をかつぐのでなく

 

 

 

 

水風船ふくらますでもなく

 

 

 

 

わたしの未来は焼きそばにかかっていると

 

 

「焼きそば、なんですか」

「そうですね」

「そうですか」

「まあ、そんなこと言ってるぼくは」

「はい」

「田舎の濃ゆい人間関係が苦手なんですけどね」

「は??」

「やっぱ都会が好きなんスよー♩」
「はいー???」

「じじょうさんは、がんばってくださいねー♩♩」
「はいいいーーーー???」

 

 

 

反則やがな

 

 

 

結局ヤギさんから何かスペシャルなオファーがあるわけでもなく、特に見初められたわけでもなく(当たり前だ)、何事もなく面会は終了。ロードバイクで颯爽と去っていくヤギさんの後ろ姿を眺めながら、狐につままれたような気分でシマ島へ帰ることになりました。

 

この日、彼から聞いた情報がどれほど重要だったのか、その意味に気づいたのはずっと後のことです。そして、相変わらず島になじめず悶々としていたわたしは、結局焼きそばじゃない方向で(焼かないんかい)自分の道を模索することになるのでした。

 

今週も長くなりまして失礼しました。そして次の日曜は出張&1年ぶりの里帰りのため、おやすみさせていただきます。なんかこのペースだとセカンドシーズンは年越してしまいそう。

 

それではみなさま、12月の日曜に崖のところでお待ちしております。

 

 

text  by  じじょうくみこ
illustrated  by  カピバラ舎

*「崖のところで待ってます。」セカンドシーズンはたぶん12月末までの毎週日曜更新です。

 

バックナンバーはこちら→

2ndシーズンはこちら↓
2-1 ハーフセンチュリーは嵐の季節。
2-2 シマ島の2年目は、モヤモヤから始まった。
2-3 恋わずらいみたいになって、あのひとにメールを書いた。


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コメント、ありがとー!

  • あずみ

    ご無沙汰しております。南の島フォルモサのあずみです。

    泣いちまいました。電車の中で泣いちまいましたよ。
    ヤギさん、すげえ。いろんな人の立場が考えられる人ってすごいっす。

    そして、Tシャツからモコモコダウンに変わるそのそれに大きく頷いてしまいました。こちらフォルモサもダウン登場です。

  • じじょうくみこ

    じじょうくみこ Post author

    >>フォルモサあずみさま

    こんにちは! お久しぶりです〜〜!
    コメントありがとうございます!お返事遅くなってしまい申し訳ありません(^_^;)

    そしてTシャツ→モコモコダウンルートは、フォルモサも同じなのですね。
    沖縄ガールズはおしゃれしたいがために、わざわざダウンを着るとか。
    おしゃれって、忍耐。

    ヤギさんのような人がいてくれたら、シマ島の未来はずいぶん違ったかもしれませんね。
    シマ島が動くか、わたしの寿命が終わるか、どっちが先かなー(笑)

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