<今月の質問>年金受給の際、自分と妻を世帯分離して片方を非課税にできますか?
<今月の質問>
にゃまの先生、こんにちは。ミカスです。
オバフォー読者のKさんからこんな質問をいただきました。
ご回答をお願いします。
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私62歳、妻60歳、共働きです。年金は共に国民年金と厚生年金です。
金額はそれぞれ概算ですが15万円/月、9万円/月です。
年金受給になった場合、妻を扶養に入れると世帯年収が300万円弱になり非課税世帯ではなくなります。
質問です
1.それぞれを世帯主にすることはできるのでしょうか?
2.別世帯にできる場合私は課税世帯、妻は非課税世帯になるのでしょうか?
3.その場合私が先に他界した場合妻は遺族厚生年金の受給はできるのでしょうか?
4.それが可能な場合、そのようにした方がいいでしょうか?
Kさん
にゃまの先生 さっそく読者の方から質問が届いたんですね。では、順番にお答えしていきましょう。
まず質問1。それぞれを世帯主にできるか?というご質問ですが、夫婦の場合、民法で互いに扶養義務があるため、申請窓口で世帯分離は基本的に受け付けてもらえません。もちろん「自己負担を減らしたい」という理由もだめです。
ミカス 夫婦は世帯分離できないということですか?
にゃまの先生 基本的にできないですが、次のような理由なら世帯分離できる場合もあります。
・一方が施設に入って別家計の場合(よくある事例で、施設費の自己負担が格段に安くなる)
・別居して家計が別な場合
・DVや虐待がある場合
<世帯分離しても遺族厚生年金は、夫婦(事実婚含む)なら受け取れます>
ミカス なるほど。Kさんご夫婦がこの条件に当てはまるかどうかですね。
質問2はどうですか?非課税世帯については第1回でもちらっと話題になりましたね。
にゃまの先生 質問2ですが、Kさんのおっしゃる通りです。
非課税世帯とは住民税が均等割、所得割ともにかからない世帯のことです。もし世帯分離した場合
夫は月額15万円、年額180万円の年金収入なので課税世帯
180万円-年金控除額(65歳以上)110万円=70万円(所得金額)
この所得金額から基礎控除、生命保険控除などを差引いた金額に税金(所得税、住民税)、社会保険料(健康保険、介護保険)がかかります。住民税や介護保険は地域によって変わりますが、だいたい税金と社会保険料の総額で年金収入の12~13%になり、その差額が手取りになります。
妻の年金は110万円いかないなので非課税となります。
ミカス ほおー。世帯分離できたとしたら奥さまは非課税になるんですね。
ただ、もし世帯分離をしたとして、Kさんが先に亡くなった場合、奥さまが遺族厚生年金を受給できるのか?そこを心配なさっているのが3つめの質問です。別の世帯になってしまっても遺族年金を受給することはできるんですか?
にゃまの先生 遺族厚生年金に世帯要件はないので、夫婦(事実婚含む)に受給権はあります。
ミカス ああ、それは心配ないんですね。よかった。しかも、事実婚の方たちも受給権があるんですね。
さて、Kさんは、もしご自分たちが世帯分離可能だとしたら分離した方がいいのか迷っていらっしゃるようです。質問4ですね。Kさんの場合、世帯分離をした方がいいのでしょうか?
にゃまの先生 同居している現状で世帯分離はまず不可能だと思います。もし妻が施設入居した場合は住民票を施設に移して世帯分離を検討するのが良いでしょう。
なお非課税世帯か否かは行政の窓口に確認して下さい。
<両親を世帯分離させれば、施設入居費用が安くなる?>
ミカス にゃまの先生、「もし妻が施設入所した場合は世帯分離を検討するのがいいでしょう」とおっしゃってますが、実は、私はまさにそこを悩んでいるんです。あ、私自身のことじゃないですよ。両親です。
母が特養に入所して、介護費用がぐんと上がってしまったんです。両親を世帯分離させれば母が非課税世帯になって特養の入所費用が安くなると聞いたので役場に確認したところ、父が課税なので、このままでは非課税世帯にはならないと。母が施設に入所しているのなら世帯分離できると言われたのですが…。母を父の扶養から外すことで他の費用(後期高齢者医療保険や介護保険)が上がってしまって、結果的には大差なしなんてことにならないかと心配で二の足を踏んでしまっています。
にゃまの先生 世帯分離は住民票の移動でできます。また、元に戻すこともできますよ。
メリットはお母さんの「高額介護サービス費」の上限が非課税(単身)の場合15,000円になり、介護費以外の自己負担分(住居費、食事代など)の軽減制度(年収、預貯金の要件あり)も使えるので自己負担がかなり減ることになると思います。
デメリットは同じ世帯で介護サービスを2人うけている場合「合算制度」を使えないこと。また、相続時に「小規模宅地の特例」を使えなくなることなどです。お父さんの後期高齢者医療保険料や介護保険料はお母さんの扶養が外れるのでたぶん高くなりますが、年収にもよるので、役所の窓口に行く前に、地域包括支援センターやケアマネさんに相談して下さい。
とにかく介護の世界は地域で異なるし複雑なので、地元の専門家で聞きやすい人に聞くのがいいと思います。メリット>デメリットなら世帯分離ですね。
IUが出演した韓国ドラマ「マイ・ディア・ミスター 私のおじさん」というドラマをご存知でしょうか。これがまさに世帯分離を知らない孫娘がおばあちゃんの介護で壮絶な苦労する話でした。韓国の制度は日本とよく似ているようですが、制度を知らないがゆえの悲劇は日本にもあると思います。とにかく専門家に聞きまくり、制度を使い倒したいですね。
★Kさん、ご質問、ありがとうございます。にゃまの先生の回答、お役に立ちましたか。みなさんからのご質問、待ってます!ささいな悩みでも構いません。どんどんお寄せください。
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★講師 ファイナンシャルプランナー 長野 郁子さんI
現代ビジネスでは記事を連載中。どれも面白いです。
【PROFILE】
1956年 静岡県生まれ。会社員、自営業を経て化粧品通販会社で経理・総務を担当し、取締役をつとめる。2008年に退社しFP資格の勉強始め、2010年 CFP®認定者と1級ファイナンシャル・プランニング技能士の資格を取得。「お金塾.jp」を開設し、現在FPとして活動。ほぼ同時期に区立保育園の非常勤職員(保育補助)になり、2022年退職するまで11年間、0歳児と1歳児のお世話をした。今は区の子育て支援員(ファミリーサポート)をしている。また老後の楽しみとしてボードゲーム「オンリーワン同好会」の運営委員を夫婦してやっている。
著書に「老後の住まい:老後の自立は小さな家から」(Kindle版)がある。新刊出ました!年を取ったら狭い家: 66歳FPの老後住み替え体験記 (こちらから、記事の一部を読むことができます)新刊についてのカリーナの記事はこちらです。
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匿名
Kです
丁寧な回答ありがとうございました。
非常に分かりやすかったです。
将来の生活設計の参考にさせていただきます。