<今月の質問>障害のある夫と二人暮らし。私に何かあった時のために準備しておけることは?
<今月の質問>
「オットと二人暮らしで子どもはいません。
オットは失語症という障害があり、
読み書きや数字の把握が苦手です。
将来、私のほうが先に要介護状態になったり、
先立ったりした場合、
オットがお金の管理をしなければなりませんが、
障害の状態から考えるとかなり難しそうです。
オットがひとりでも困らないよう、
いまのうちに準備しておけることはありますか」
質問者:こめPさん
にゃまの先生 こめPさま、難問ありがとうございます。
これはこめP家だけの問題でなく、引きこもりや障害のある子のいる親御さんから良くいただく質問です。結論は自分ができなければ「常に自分にとって最善を考えてくれる人」に頼むしかありません。
<人に頼むときに考えるべき3つのポイント>
どの程度、本人が出来るのかにより、何を頼むのかも変わりますが、
人に頼むというポイントは3つ
1)財産はシンプルに
自分の財産を人に頼むときは、なるべく整理し数を減らしシンプルにします。金融資産で言うと日常の「家計口座」と「まとまった預金口座」の2つ、運用をする人は「運用口座」も含め3つ。
まず「家計口座」は年金受け取り口座に生活費の2~3ヶ月分ぐらい。公共料金や税金の自動引き落とし、クレジットカードやデビットカード(枚数も最低限)、電子マネーのチャージなどもこの家計口座に紐付けし、この口座に大金はいれません。
そして「まとまった預金口座」はなるべく昔ながらの通帳と印鑑のみで、キャッシュカードすらやめて外部に紐付けを一切しません。これ今どきのフィッシング詐欺予防だけでなく、マンションの管理組合などで行われている使い込み防止の原始的方法で、通帳と印鑑を持つ人を別にすることで、鉄壁の防御となります。
運用している人は「投信定期売却サービス」などで年金の足りない分を定額で取り崩し「家計口座」に自動的に入金する手続きをしておく。
なお貸金庫を利用すればよりいいです。(ただし、現金、金は別)。
便利なカード類は止められないけど、もし被害にあっても最低限ですむ方法だと思います。これは昨年、カードの不正利用で大変な目にあった私の教訓です。
2)制度を知る
人に財産を頼む制度は、自分で判断出来るなら任意後見制度(家庭裁判所管轄)や家族信託(家族だけでなく他人も可な民事信託契約)があります。そして自分で判断できない場合は「法定後見制度」になります。検索すれば詳細がわかるので省きますが、どちらも一長一短ですし、制度は良く変わります。なお少額なら本人以外がお金を下ろせる金融機関の「指定代理サービス」も始まっています。
3)誰に頼むか
問題は誰に頼むかということです。これがむずかしい。1人なのか複数なのか? 肉親なのか他人なのか? 個人なのか法人なのか? 組織なら行政なのかNPOのような非営利団体なのか、会社など営利団体なのか? 取りあえず地域包括支援センターで相談し、今そこで使えるサービスを聞きましょう。
前回も書いたとおり、自分の老後のマネージメントを人に頼むなら「信頼関係がある、お金に困っていない、能力がある、問題を抱えていない、時間がある」人でないと頼めません。もちろん肉親でも他人でも、実費プラス出来る範囲の謝礼は必要です。
こと高齢者のお金に限って言えば、だます犯罪者が跋扈しているので、用心深く、人を疑うのは当たり前ですが、一方自分の老後を託す人探しも高齢者の最後の大事な仕事。人を「疑う」と「信じる」というブレーキとアクセルを踏みつつ、20歳ぐらい年下のしっかり者に自分の老後を託しましょう。
たぶん子どもがいない、もしくは肉親が担いきれない場合、介護保険のように行政が窓口になって、審査を通った法人や個人を紹介してくれるシステムが出来ていくと思います。もう始めている地方自治体もあります。それを担う専門資格職もそのうちできるでしょうが、今は社会福祉士や司法書士、FPなどが実務を担い、行政の監査を受けて、介護におけるケアマネさんのような支援者になるでしょう。
こうしておくと、頼まれた人も月に1回ぐらい美味しい物でも手土産に訪問し、お茶でも飲みながら困りごとを聞き、郵便物の処理、通帳やカードのチェック、生活に支障はないか出来てるか(冷蔵庫、ゴミ出し)を確認し、必要なら介護や看護支援者と連絡を取りつつ、支援につなげます。
ゆみる にゃまの先生、この問題は私もとても興味のあることです。私は現在、居住区の社協(社会福祉協議会)の地域生活支援員として活動しています。地域生活支援員は社協の方と2人一組で、にゃまの先生が最後に書かれているようなお元気確認や郵便物の整理、公共料金の支払いなどの日常的な金銭管理や生活状況の確認、そして必要時には公的な支援につなげるような活動です。
この活動を知った時に私も将来このサービスを絶対に利用したいと思い、利用者さんに対しては将来の自分に対応するような気持ちでお会いしています(まだ新米ですけど)監督として社協の人がいるので安心ですし、営利目的ではないので料金的にもかなり良心的だと思います。ちなみに料金は1時間1800円で、非課税世帯なら半額、生活保護世帯なら無料です。
老後への心配が大きい私もこのサービスを知った時ちょっとだけ安心しました。近い将来、もっと安全なサービスがいろいろ出来るといいなと期待しています。
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★講師 ファイナンシャルプランナー 長野 郁子さんI
現代ビジネスでは記事を連載中。どれも面白いです。
【PROFILE】
1956年 静岡県生まれ。会社員、自営業を経て化粧品通販会社で経理・総務を担当し、取締役をつとめる。2008年に退社しFP資格の勉強始め、2010年 CFP®認定者と1級ファイナンシャル・プランニング技能士の資格を取得。「お金塾.jp」を開設し、現在FPとして活動。ほぼ同時期に区立保育園の非常勤職員(保育補助)になり、2022年退職するまで11年間、0歳児と1歳児のお世話をした。今は区の子育て支援員(ファミリーサポート)をしている。また老後の楽しみとしてボードゲーム「オンリーワン同好会」の運営委員を夫婦してやっている。
著書に「老後の住まい:老後の自立は小さな家から」(Kindle版)がある。新刊出ました!年を取ったら狭い家: 66歳FPの老後住み替え体験記 (こちらから、記事の一部を読むことができます)新刊についてのカリーナの記事はこちらです。
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Comet
にゃまのさん
質問者です^ ^
難しい質問に、わかりやすく詳しくお答えくださりありがとうございます。
まず口座の整理から。これは、オットだけでなく私もすぐにやらないと、と慌ててます。
また、後見人制度や家族信託についてザックリ知ってはいましたが、オットのケースと結びつけて考えたことはありませんでした。読み書きと数字は苦手でも自己判断能力はあるので、後見人をつけるまでではないだろうと思っていたのですが、やはり、誰かに助けていただかないと困りますね。信頼できる親族というと、とびきりしっかりしている姪が浮かぶのですが、遠方に住んでいるし、こんな負担をかけるのは申し訳ないと感じてしまいます。専門職後見人の社会福祉士さんなら、オットの障害に対する理解も得やすいと思うので、自治体の専門相談窓口に連絡してみます。
やるべきことがわかって、少し安心しました。
ありがとうございます!
これからの手続きが面倒そうで気が滅入りますが^ ^; ゆるゆる進めていきます。