現代アートを見に行く。休みだった。
現代アートの作家さんの個展を見に行った。ところが、僕が曜日を間違えてしまい、クローズしていたのだ。
会場はギャラリーというか、おそらく割としっかりとした工場跡をリノベーションしていて、どこが入口なのかわからない作りだった。だから、最初、オープンしているのか、クローズしているのかよくわからず、周囲をグルグル回っていた。
だんだんわかってきたのは、その会場にはたくさんの大きなドアがあり、おそらく全開すると大きな機械や重機も出入りできそうな感じだということ。なので、僕は周囲をグルグル回りながら、どれか一つドアを開けると中に入れそうだなと思った。でも、どのドアをスライドしようとしても、動かない。一瞬、ちょっとだけ動くので「もしかしたら!」と思うのだけれど、本当にちょっとしか動かないのだ。
このあたりで、さすがの僕も「ああ、今日は休みなのか」と思ったのだが、それでも去りがたくて建物の周囲を回っていると、こんなにたくさんある窓のたった一つにだけポスターが貼ってあるのを発見した。その作家の名前と加工した全身写真がぶれて写っている。
しばらく、このポスターを眺めていると、ちょっと不思議な気持ちになっていた。この建物の中には、彼のたくさんの作品が展示されていて、ちょっとだけ動くたくさんのドアに囲まれている。いま僕は会場が休みで作品を見ることができないと思っているけれど、もしかしたら、オープンしている日に来ても、この状態なのではないだろうかと思い始めたのだ。
たくさんの作品を思いながら、個展のタイトルと、作った男の写真をぼんやりと眺めながら、時を過ごす。そんな状況そのものが、彼の考えた作品なのだとしたら…。もう、そんな妄想に取り憑かれてしまった僕の気持ちは、だんだんと高揚してきたのだ。
不思議なもんだなあ。人間て。というか、僕がヘンなだけなのか。
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植松事務所
植松雅登(うえまつまさと): 1962年生。映画学校を卒業して映像業界で仕事をした後、なぜか広告業界へ。制作会社を経営しながら映画学校の講師などを経験。現在はフリーランスのコピーライター、クリエイティブディレクターとして、コピーライティング、ネーミングやブランディングの開発、映像制作などを行っています。