50代、男のメガネは近視と乱視とお手元用 ~夏になると、新しいTシャツが欲しくなる。
夏になると、新しいTシャツが欲しくなる。
それほど派手ではない柄のTシャツがいい。だけども、なんの主張もないTシャツは面白くない。ユニクロもいいけど、地元の神楽坂を歩いているときに向こうから同じTシャツの人が歩いてくると逃げ出したくなる。手ごろな価格で、友だちが「いいなあ」と褒めてくれて、しかも、人とかぶらないTシャツが欲しくなる。
毎年、何枚かのTシャツを買って、そこへまた新しいTシャツが加わっていく。となると、「Tシャツが欲しい」と言うたびに、「だったら、古いのを捨てるなりなんなりして、整理してちょうだい」とヨメから言われる。彼女は「買わないで」とは決して言わない。暗に「たくさんあるでしょ」とほのめかし、同時に、「買うなら整理しろ。自分の衣服の整理もしないくせに」と小さなジャブをはなってくる。
まあ、今すぐ、欲しいTシャツが目の前にあるわけでもないので、「う〜ん」などとうなってその場を収める。収めながら、真剣に今あるTシャツを整理してやろう、なんて考え始めてしまう。
しかし、世の男性諸氏に警告しておくが、ここでこれ見よがしにTシャツの整理を始めてはならない。そんなことをした日には、荒野の果てで腕利きのガンマンと差しで勝負をするのと同じくらいの傷を負うことになる。大切なのは、いつもタイミングだ。
そんな話をした後に、ヨメが夕餉の買い物などに出かけ、おいしいコロッケを安売りで買って、「見て見て、いつものコロッケが半額だったの!」などと、必ずひとつはうれしい出来事を挟まなければならない。ひとつうれしい出来事があると、あら不思議。その前の軽いジャブなどはすっかり忘れてしまうのだ。ただし、うれしい出来事がなくても、忘れているように見えることがあるのだが、これには注意が必要だ。まるでおとり捜査のように、こちらの出方をじっと見ている場合がある。このおとり捜査に引っかかると、立ち直れないくらいの痛手を負うことになる。
と、男性諸氏への警告はこのくらいにしておいて、Tシャツの整理だ。できれば、ヨメがいないときにやるのがいい。万一、ヨメがいるときにこれを始めてしまうと、「Tシャツがきれいに整理されている」という結果を要求されるからだ。もちろん、男性諸氏ならわかっていると思うが、私たちは結果のために動いているわけではない。「整理しよう」という取り組みが大切なのだ。それをうちのヨメときたら「思うだけなら誰でもできる」とばかりに小馬鹿にしたりするのだ。ちゃんちゃらおかしいってもんだ。思うだけでも充分立派なのだ。だって、普段そんなこと思いもしないんだから。
とまあ、それはこちらの身勝手というものなのだが……。ここでやっとTシャツの整理が始まる。というか、始めようと一応Tシャツを手に取ってみる。しかし、破れてもいないTシャツをどのタイミングで捨てるというのか。多少色落ちしたTシャツは寝間着がわりに使うじゃないか。小さな穴がひとつ開いてるくらいでも、充分に部屋着にはなるだろう。第一、穴が開いていてもこのイラストが気に入っているんだ。「着ないなら捨てて」と気軽に言うけれど、この着ないTシャツは息子がユニバーサルスタジオで買ってきてくれたスパイダーマンのTシャツだぞ。恥ずかしくて着れないけれど、思い出が詰まっているじゃないか。
と、このように整理は進まない。捨てるべきTシャツが一枚も見つからない。勢いよく取り出したTシャツをもともとあった場所へ戻していく。
そこへ、ヨメが通りかかって、「なにしてるの?」と聞いてくるはずだが、間違っても「Tシャツの整理」と答えてはいけない。さっきも言ったように、結果を求められてしまう。こんな時には、「この洗濯物をたたんでおこうかと思って」と答えてみることをお勧めする。うちの場合には、この申し出には必ず「あなたに頼むと、くしゃくしゃになるからいい」という拒絶の言葉が返ってくることになっているのだ。この答えには「う〜ん、きれいにたたんでいるつもりなんだけどなあ」と少しすねて答えて、早々に退散する。
こうして、私のTシャツはいつまで経っても毎年少しずつ微増を続けているのである。
植松眞人(うえまつまさと)
1962年生まれ。A型さそり座。
兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。
現在、オフィス★イサナのクリエイティブディレクター、東京・大阪のビジュアルアーツ専門学校で非常勤講師。ヨメと娘と息子と猫のマロンと東京神楽坂で暮らしてます。
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サヴァラン
すみません。サヴァランです。
うちのシュジンはケッコン以来、
靴下一足、パンツ一枚自分で買ってきたことがありません。
そもそもお店に立ち寄ることがありません。
必要に迫られたとき
試着室から出て来る主人は、
七五三の少年のようにぎこちなすぎて気の毒になります。
自分の衣類の整理はおろか
自分の持ち物の把握も全くしておりません。
ケンカをして、靴下の左右を全部バラバラに組み替えても
なんの制裁にもなりません。
すみません。悩んでおります。
uematsu Post author
サヴァランさん
僕はユニクロで下着や靴下や定番のシャツを買うくらいは大丈夫。でも、おしゃれ要素が少しでも入ると、1人では買いにいけません。ヨメか、娘か息子か、なんなら事務所のアルバイトの女子でもいい。とにかく、誰かいてくれないと試着ができません。できなくはないけど、恥ずかしくて、選べません。
でも、衣服に興味がない訳じゃないんです。
その点、ご主人は興味があんまりないんでしょうね。
ならば、興味のあるもので制裁を。
お酒が好きなら銘柄を入れ替える。
プラモが好きなら、ガンダムのプラモを姫路城のプラモと入れ替える。
おでんが好きなら、ちくわとちくわぶを入れ替える。
そんなとこでいかがでしょう?
サヴァラン
たびたびすみません。サヴァランです。
・「恥ずかしい」、そうですね。
わたしも自分の買い物のとき
わずかにどこか「恥ずかしい」のを
「しゃべり」で誤魔化している自覚があります。
美容院でも、黙ってると恥ずかしいからしゃべります。
・制裁方法、お知恵をいただきありがとうございます。
ところが。
シュジンはお酒もプラモもおでんも興味がありません。
「ちくわじゃなくってちくわぶなんだね」終了。
先日、車のホイールキャップがないのに気付いたときも
「なくなったね。でも走るね。モンダイないね」終了。
こういう糠釘症候群への対処法はいかがしたらいいものか。
男性のお知恵を頂戴したいです。
uematsu Post author
サヴァランさん。
僕には無理です(笑)。
サヴァラン
植松さま。
悩みを聞いていただいて
ありがとうございました<(_ _)>
uematsu Post author
どういたしまして(^^;;