50代、男のメガネは近視と乱視とお手元用 ~ 山形で好奇心を思う
山形で好奇心を思う
山形国際ドキュメンタリー映画祭がお目当てで、二泊三日の山形旅行へ出かける。山形国際ドキュメンタリー映画祭は、2年に1回の開催で、僕自身は今年が2回目の参加。ただ、前回も二泊三日で、かなりの本数の映画を見たのでかなり疲れてしまった。そこで、今回はあんまり根を詰めて見ずに、休憩を挟みつつ、時には観光などもしながら、のんびりと映画をみようと出かけたのであった。
ところが、いざ見始めると二泊三日で9本の映画を立て続けに見ることに。やっぱり、「せっかく来たんだから」という気持ちになってしまって、Twitterで「おもしろい」とつぶやかれている映画のスケジュールを調べては見る、という繰り返しで、腰が痛い、目が疲れた、と言いながらも到着直後から出発直前まで今回も映画を見続けてしまったのであった。
さて、今回の話題は山形でも、ドキュメンタリー映画でもない。先ほどの話に出てきた「せっかくだから」というワード。今回、僕は「せっかくだから」と映画を見まくったのだけれど、普段、この「せっかくだから」という言葉をよく口にするのは女性ではないかと、僕は密かににらんでいる。
特に旅先で、女性の口から「せっかくだから」という言葉をよく聞く気がするのだけれど、どうだろう。少なくとも、うちの嫁さんは、確実に言う。別にうちの嫁さんが女性の代表だとは思わないし、統計をとったわけではないけれど、そんな気がするのだ。でも、女性はと言い切ってしまうと、なにかとあれなので、うちの嫁さんの話にしてしまおう。
若い頃、パリに行ったときに嫁が言いました。
「せっかく、パリまできたのだからニースまで足を延ばしましょうよ」
まだ、大阪に住んでいた頃、東京に遊びに来たときには、嫁はこう言いました。
「東京見物にきたのだから、横浜にも行きたいわ。あ、それならついでに鎌倉にもいきましょうよ」
僕はたとえば、パリに行ったら、パリの街に腰を据えて、カフェ巡りでもしながら、その街を知りたい、と思うタイプだ。パリにきたからニースに行かないといけない、というなら、ニースにいったついでにモナコに行かなければならなくなり、知らない内に世界一周をしてしまうということになるよ!と思ってしまう。
同じように、東京に来たから横浜にも鎌倉にも行きたい、というのは、大阪に住んでいて、朝から神戸と京都と奈良を回るようなもんだよ、と。
そういうと、嫁さんは決まって、「あんたはいっつもそう。好奇心というものがない」と毒づくのだ。そう言われると僕は傷つく。だって、好奇心がないわけではない。逆に好奇心は旺盛だ。しかし、その好奇心は広く浅く、という方向にではなく、どこまで深められるか、という深度へと向かうのである。
山形の映画館のシートに身を沈め、せっかくだからと映画を見まくりながら、そんなことを思い出していたのだった。
植松眞人(うえまつまさと) 1962年生まれ。A型さそり座。 兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。 現在、オフィス★イサナのクリエイティブディレクター、東京・大阪のビジュアルアーツ専門学校で非常勤講師。ヨメと娘と息子と猫のマロンと東京神楽坂で暮らしてます。
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はしーば
うえまつさん、こんにちは。
いつも、50代男性の目線を興味深く読ませて
いただいております。
(夫も今年51歳なもので、尚更です。)
「ついでだから」って、良く使いますね。
女性は、幕の内弁当的な広く、沢山の情報を
欲しがり、男性は丼飯的な深く一点集中的な
突き詰め方をする人が多い気がします。
現に私もアラフィフですが、昼食には丼よりも
幕の内、若しくは松花堂弁当を選びます。
脳の違い、なんでしょうか。
Comet
義両親は義母が「せっかくだから」派で、義父は「動かない」派でした。実家の両親は父が「せっかくだから」派で母が「動かない」派です。文句言いながらくっついてしまうS極とN極の関係なのかも。
サヴァラン
植松さま こんばんは。
うちのシュジンは、一緒に車で出かけると、往きのルートと帰りのルートを変えようとします。
わたしが助手席で「なんでー。わたしは往きの道の、あの不思議な建物をもう一度見ようと思ってたのにー」と毒づきます。
シュジンは「別の道を通りたい」と言います。
わたしは「同じ道を通りたい」と主張します。
両者の言い分は「せっかくだから」です。あれ。
カリーナ
植松さん、こんにちは!
聞いてください。わたしの女友達に「せっかくだから」の権化みたいな人がいるんです。六甲山に上ったときは、彼女の言う通り歩いて下山していたら遭難していました(途中から漆黒の闇&雨)。彼女が80代のお母さんと京都のどこだったかの奥の院をめざして登り切ったら、帰りのバスがなくなっていて、これまた死ぬ思いで下山し、タクシーを拾って帰ってきたそうです。わたしも、彼女の「せっかくだから」に何度かつきあいましたが、川辺で塩釜を焚火で作り、いつまでもご飯が食べられませんでした(泣)
「せっかくだから」は、ですから恐ろしい言葉です。せっかくだから、には、膨大な脇道と落とし穴が用意されていて、とんでもない世界へ足を踏み込む場合もあります。
わたしは、「せっかくだから」と人生のうちでほとんど言ったことのない女ですが(面倒くさがり屋なので)、一緒にいる人の「せっかくだから」の危険度を計る能力は磨いています。概ね、対応できますが、自分の危険センサーがはたらいたらバッサリ却下します(笑)ふりまわされるのが、嫌いなんでしょうね。
植松さん、一緒に旅行しませんか。せっかくだから、っていいませんよ♪
サヴァラン
植松さま こんにちは。
二度目のコメントですみません。
一度目、自分で上のようにコメントしながら、
何かちがうなーとひっかっておりましたら…はっ。
シュジンは「せっかくだから」ではなく
「どうせなら」と言うのでした。
「どうせなら」って
その投げやりな感じが気に食わん―。
えーっと。
お口直しに 山形のカフェ情報を。
馬見ヶ崎川という川のほとりに
「espresso」というお店があります。
http://www.geocities.jp/trolaurora/
次回の映画祭の折にでも、ぜひどうぞ。せっかくだから♪
uematsu Post author
はしーばさん、
僕も幕の内弁当は好きです(笑)。
でもまあ、男の「深く探求したいのだよ」という言葉の裏には、
「じゃまくさいなあ」という気持ちも大きく働いている気がします(笑)。
uematsu Post author
Cometさん
そう言えば、うちの親はどうだったのかなあ。
父がいろんところに旅行に行きたがって、
母がとても嫌がるというのをなんども見たような気がします。
たぶん、父が旅行に行きたがるくせに、
行ったら行ったで邪魔臭がる、というめんどくさい性格だったから、
という気がします。はい。
uematsu Post author
サヴァランさん
僕は同じ道を通りたい派ですが、
ご主人の言う「別の道を通りたい」という気持ちも分かります。
僕の場合は、嫁が隣に乗っていない時にだけ、
別の道を通ります。
時間がかかってしまったり、道に迷ってしまって、
文句を言われるのを避けるためです(笑)。
uematsu Post author
カリーナさん
はいはい、聞きますよ。
なるほど、せっかくだからに付き合ってると、遭難するって恐ろしい話です。
こういう恐ろしい予感がするから、男は本能的に逃げるのかもしれません(笑)。
ま、正直男にも「せっかくだから」と地方出張のときに、
すぐに夜の街に消えていく人もいるんですけどね。
旅行のお誘いありがとうございます。
いやもう、ほんと旅行に行きたい。
というか、温泉に浸かりたい。
もう、銭湯でもいい。
というか、大阪、東京の往復ばかりしている生活を何とかしたい。
う〜ん、いろいろ考えないといけないことが多い、今日この頃です。
uematsu Post author
サヴァランさん
「せっかくだから」と「どうせなら」は微妙にちがいますね(笑)。
その投げやり感のともなった感じは、
なかなか好感が持てます。
きっと、いい人だと思います。
山形のカフェ情報ありがとうございます。
本当に映画を見るだけに終始してしまいました。
次回、行ってみます。