帰って来たゾロメ女の逆襲㉑ ~固ゆでどうでしょう、の巻~
先だって、車で福島市に行って来ました。
東北道を北上するとき(運転は夫ですが)よく思い出すのが、風間一輝の『男たちは北へ』という小説です。
主人公はアル中のグラフィックデザイナー、桐沢風太郎44才。
彼は自転車で青森に行くことを思い立ち、東京のアパートを出発します。
道中、自衛隊のクーデター計画に巻き込まれたり、ヒッチハイクの家出少年と知り合ったり、と、ミステリや少年の成長物語(もしかしたら中年の成長物語かも)の要素もある小説ですが、私にとってのこの小説の魅力はなんといっても東京~青森間、千キロを越える自転車旅の部分です。
著者が実際にこの区間を自転車で走破しただけあって、臨場感が半端じゃありません。
出発してすぐの「都内から埼玉に抜けるまでが意外とキツい」の説得力を筆頭に、リアルな描写が続きます。
自転車は高速を使えないので、桐沢はひたすら国道4号線を北上するわけですが、予想外の高低差と格闘することに。
まさに、山あり谷あり。
そしてクセモノはトンネルと橋。
読んでいると興奮&高揚してきますが、一緒に息切れもします。
今回の福島行きで高速を車で走っているときも(運転は夫ですが・・しつこい)小説のことを思い出し、一人息が上がりそうになりました。
そして、車が栃木県から福島県に入り、郡山も過ぎ、福島市手前の二本松I.Cの「岳(だけ)温泉」という表記を目にしたら
そういえばここに桐沢が泊まったんだよなー
雨が降ってタイヘンだったよなー
地元のお酒(福島出身の私にはおなじみの)「奥の松」を飲んだんだよなー
と、まるで過去に自分が体験したことを思い出すような気分になりました。
それにつけても、福島まででもかなりの距離、ハードな自然の中を走るのに、ここから先は広大で稀代の縦長県(?)である宮城、岩手というツワモノをクリアしなければ目的地である青森にはたどり着きません。
あらためて地図を見たら卒倒しそうになりました。
(画像をクリックするとちょっと拡大されます↓)
『男たちは北へ』は風間一輝のデビュー作ですが、彼は10編ほどの小説を残し1999年に50代なかばで亡くなりました。
自らがモデルであることが明らかな桐沢風太郎は他の小説にも登場し、まさに分身、著者は亡くなっても小説の中の桐沢(風間)は生き続けています。
私は前世紀末頃、彼をはじめ、大沢在昌、原尞、稲見一良、ロバート・B・パーカー、ディック・フランシス、ローレンス・ブロック、キース・ピータースンなど、洋の東西を問わず、いわゆるハードボイルドミステリを夢中になって読みました。
サラ・パレツキー、スー・グラフトン、高村薫、桐野夏生など、ある意味、男性より男前な作家の小説も好きでした。(←この文章、ジェンダー的に大丈夫ですよね)
上に挙げた人たちの中には、今でもバリバリ現役作家もいますが、もう亡くなってしまった人も何人かいます。
でも、ハードボイルドに限らず小説の大きな魅力は、時空も表現者の生死も飛び越え、読み手のさじ加減ひとつで、その世界が自由に脳内宇宙を生き続けることだと思います(大きく出たな、自分)。
風間一輝の、四半世紀前に書かれた決してベストセラーとは言えない小説も、ふとしたきっかけである日突然ひょっこり自分の中に顔を覗かせることが少しも奇異なことではありません。
それがスンバラシイなあと思います。
稲見一良(いなみ・いつら)もだいぶ前に亡くなってしまった作家ですが、私は犬、特に大型犬を見ると彼の小説を思い出します。
『セント・メリーのリボン』、犬を人生の伴侶と思う方にはオススメです。
・・とここまで書いてきましたが、読み直すとわれながら強引な展開に苦笑。
小説全般をハードボイルド仕様で「語って」ますが、完全にこじつけですね。
ただただ、風間一輝と稲見一良の小説を推したいだけの力技です。
でも、あえて最後の一推し。
今度のお正月休みあたりはハードボイルドどうでしょう。
by月亭つまみ
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Naomi
ども!リニューアル作業中のNaomiでございます、初めまして。
私もダンナ(彼は郡山出身です)も、ロードバイクには乗るのですが、
いやまぁ、もうお歳頃でございまして。峠を越える…なんて、空想の冒険。
数年前までは「自転車で帰省する!」と、頑張ってはいたのですが。
きっと、自転車の旅は、
この小説が書かれた頃よりも、現在のほうが不便かもしれませんね。
この「男たちは北へ」、
お正月の帰省のお伴にしてみます(*^-^*)
つまみ Post author
Naomiさん、はじめまして。
コメントありがとうございます。
わー!ロードバイクですか。
奇しくも今、前に録画したアメトーークのバイク芸人を見ていたところでした。
チュートリアルの福ちゃんの本気(マジ)っぷりがスゴイです。
ロードバイクとは無縁の人生のくせに、『男たちは北へ』を読んだ直後は自転車での旅にあこがれたりしました。
もうずいぶん前ですが・・(と遠い目をする)。
お読みになったらよかったら感想を聞かせて下さい。
リニューアルの作業をして下さって本当にありがとうございます!
よいお年を。