50代、男のメガネは近視と乱視とお手元用 ~ 開き直ることの潔さと堕落
開き直ることの潔さと堕落
「女が開き直ると怖いんや」と、若い頃年上の上司に言われたことがある。その時は「いやあ、男だって開き直ったら怖いでしょう」と笑って返していたのだが、今になって、そういうことか、と思うような出来事に立て続けに出会うようになった。
中学校時代の恩師が「だいたい、女の子は0点はとらんもんや」と言っていたことを思い出した。「男でも女でもアホはおるんや。けどな、女の子は開き直るってことをあんまりせえへん。100点は無理でも50点、50点が無理でも30点はとろうとしよる。そやから、どんなアホな子でも、女の子の場合は0点とるっちゅうことはあんまりないねん」と恩師は笑うのだった。
しかし、「ところが、最近はな」と恩師は続けるのだ。「ところが、最近はな。女の子が開き直りよるねん。もう、どうせええ成績とられへんねやったら、勉強せんでもええわ、いう子が増えてきた。昔から、皆無ではなかったけど、男の子と同じくらいに増えてきたんや」と。
これを聞いて、すわっ!女が開き直ってきたのかっ!と僕はどきどきする。そして、若い頃に聞いた、上司の「女が開き直ると怖いんや」という声がこだまする。
女子学生が「もう、一生ニートでいいっす、わたし」と声高に言い、「どうせ、能力ないですからねっ!」と反切れ状態でいう。もう、それだけでも怖いのに、そこに開き直った男たちが乗っかってきて、「ほんまですわ、もうええですわ!」と開き直りに開き直りを重ねるというなんの発展も進展もない自己アピールを始める。
開き直りとか本音とかは、世の中がきちんと建前を通しているからこそおもしろいのであって、みんなが開き直ってどうする。と思うのだが、最近、学生たちを見ていると、その動向に歯止めがかけられることはなさそうだ。なにしろ、学生と接している先生たちも、開き直りと本音で行動しているようにもみえるから。
だとすると、自分はどうすればいいのか、と考える。まずは、と腕組みをする。そして、とりあえず、目の前にある仕事をコツコツとまじめにこなそう、と考えてしまう。こんな、いい加減に本音ばかりを言って生きてきた僕が、まじめに、と考えてしまう世の中がやってくるなんて、思わなかった。大変だ。たぶん、世の中の多くの人が思っている以上に、大変だ。
植松眞人(うえまつまさと) 1962年生まれ。A型さそり座。 兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。 現在、オフィス★イサナのクリエイティブディレクター、東京・大阪のビジュアルアーツ専門学校で非常勤講師。ヨメと娘と息子と猫のマロンと東京神楽坂で暮らしてます。
★これまでの植松さんの記事は、こちらからどうぞ。