「結婚できない男」にみる、偏屈男子の取り扱い方。
わりと影響されやすいたちなので、こちらの連載を読んでドラマ『最高の離婚』を全話観たんです。それで瑛太演じる光生の偏屈ぶりが、昔観た『結婚できない男』の阿部寛に似ているなあ〜と思っていたら、タイミングよくGyaO!で『結婚できない男』が始まったので、こちらも全話コンプリート。いつでもどこでも好きな時にドラマがタダで観られるなんて、ホントいい時代になりましたねえ。(GyaO!での無料放送は4月11日まででした、ごめんなさいm(_ _)m)
『結婚できない男』、覚えておられるでしょうか。2006年放送ですから、今から8年前のドラマです。阿部ちゃん演じる主人公・桑野信介は、40歳の人気建築家。仕事の評価は上々でルックスもいい、なのにどうしようもないひねくれ者で皮肉屋。まわりの人とはいつも衝突してばかりだけど、オレはこれでOKですよとばかりに好きなものを食べ、好きな音楽に酔いしれ、豪華マンションをピッカピカに磨いて、誰にも邪魔されない自分だけの世界に生きている。まあ、典型的な独身貴族というやつですね。
そんな桑野サンはグルメがすぎて (!)体調を崩し、救急車で搬送された病院で夏川結衣扮する36歳の内科医・早坂夏美と出会うわけですが…
そこからの展開が単純なラブストーリーにならないのがアラフォー男女の手強いところで。
たとえば「何か召し上がりますか? このスパゲッティおいしいですよ」と言われて、
「スパゲッティというのは直径約1.9mmのものを言うんですよ。これはちょっと細いから厳密にはスパゲッティーニ。つまりあなたは本当はスパゲッティーニおいしいよ、と僕に言うべきなんです」
鉄板焼き屋に入って、いざお好み焼きを焼こうとする相手に、
「それはどういう趣旨でかき混ぜていますか? お好み焼きの具をかき混ぜるのは、適度に空気を含ませるのが目的なんです。それを意識して混ぜてください。常識です。混ぜすぎるとキャベツから水分が出てしまいますから、その辺十分注意して。関西風は鉄板の上に厚さ3cmぐらいに伸ばすのが標準なんです。まず山盛りにして、そこから伸ばしていく方がいいでしょう」
隣人のOLが金に困っていると知ると、ポケットマネーを差し出して、
「スナックでバイトしてんだろ? お客にベタベタ触られて…やめた方がいいな、ああいうのは。客も我慢してんだろ、もっと若くて女子大生みたいなのがいいのにさ。その金を受け取れば、お客も君も我慢しなくて済むんだろ。それが世のため人のためって言うか、こっちも良いことして気持ちいいしね。実に有効な金の使い道だ。遠慮は無用だから、どうせ何に使ったっていい金だし」
あああああ
こいつ面倒くせえ
これはまだマシなほうで、物語の中で桑野サンはそれ言っちゃおしまいよというNGワードをバンバン口走って、相手を激しく傷つけてしまうわけです。そりゃ嫌われるわなあ〜と思うのですが、面白いのがこの偏屈男を夏美センセイがバッサバッサとブッた斬っていくんです。愛と怒りをもって、すかさず容赦なく。そういう2人の丁々発止のやりとりがドラマの見どころでもあるんですが、この夏美センセイの偏屈男子読解力がすごい。
たとえば桑野さんの隣人であるOLのみちるちゃんがストーカーにつきまとわれてしまい、夏美センセイが桑野サンに「帰り道、みちるちゃんと一緒に帰ってくれないか」と頼むシーンがあります。「送るくらいいいでしょう? どうせお隣なんだから」と夏美センセイが言うと、桑野サンはイヤそうに
「それをやって僕に何かメリットでもあるんですか?」
それを受けて夏美センセイはニッコリ笑って
「少しは人間らしくなるチャンスですよ♪」
桑野サンは皮肉な笑いを浮かべながら家に入ってしまい、みちるは「タクシーで帰るから大丈夫ですよ」とあきらめるのですが、夏美センセイはキョトンとした顔で
「え。今の、オッケーだと思うけど?」
ええええ! あれでえ!? と誰もが驚くわけなのですが(その後、桑野サンは本当に夜道を送ってくれるようになった)、こうした夏美センセイの桑野サンに対する言動を見ているうちに、
ヤダ、わたしも四十路男子に耐性ついてる!
という大発見をしたのでありました。
たとえば先日、知り合いが知り合いを連れてくるという異業種交流的な飲み会をやったのです。メンバーの大半が初対面同士だったので、挨拶がわりにまずは名刺交換しましょうか、という流れになりました。その時、メンバーのひとりだったフリーのグラフィックデザイナーという四十路男子がひとこと。
「僕の名刺ほしいですか? どうせ使わないだろうし、捨てるだけならいらないんじゃない?」
私はニッコリ笑って「そうですか? じゃあ、やめときましょうか♪」とスッと名刺をひっこめました。デザイナー氏のひと言でなんとなくタイミングを逸してしまい、結局誰も名刺交換をしないまま宴に突入したのですが、
会の終盤、ふと気がつくとデザイナー氏は自分から名刺を配っておりました。(オイ)
別の日には美容院へ髪を切りに行ったのですが、担当の美容師さんもこれまた四十路男子。気さくな男性なので毎回よくおしゃべりするのですが、その日はジャズフルートを習っているという奥さんの話になりました。
「今度の週末にライブがあるっていうんですよ。素人ですけどね、今回はチャージを取るっていうんです。趣味でやるならどんなにやってもいいんですよ。でもね、今回はお金を取るというのに何かにつけて練習をサボって、直前になってどうしようどうしようってオロオロしているわけ。だから僕は言ってやったんですよ。お金を取るなら恥ずかしくない演奏をしろって。僕はプロだから、初めてのお客様でもそれなりの髪型にして満足させないといけない。客はあなたのプロセスなんて興味ない。プロは結果が全てなんだからってね」
と嬉しそうに言うので「ダンナやるのも大変ですねえ〜」と心ない返事をしてやりすごしましたが、
精算時に予約表をのぞくと、奥さんのライブ時間にしっかり予約NGのバッテンマークがついていました。(行くんかい)
…あれ。面倒くさい男子を例に出そうと思ったけど、たいしたことないな(笑)
何はともあれオバフォー世代になると、やたらと正論をふりかざして自分の考えを曲げない男の人、けっこういますよね。そして自分が悪くても謝らなかったりする。そういう中年男が昔はイヤでイヤでしょうがなかったんですが、彼がたとえゴメンと言わなくても「ゴメンに相当する行動」をとっていることに気づいてからは、だーいぶ楽につきあえるようになった気がするなあ。
年も取ってみるものだなあ、なんてことを『結婚できない男』を観ながら思ったのでした。
なんてエラそうなこと言ってますけど、あくまで自分に気持ちの余裕がある時だけの話で、実際こんな男が目の前にいたらイラッ!キイーッ!!となるほうが多いんですけどね。みなさまのまわりの偏屈男子はいかがでしょうか。なんかうまくつきあうコツ、ありませんかね。世界の平和を守るため、よき方法ありましたらぜひ教えてくださいませ(わりと切実)。
四十路の目で見れば、偏屈男もまた愛おし。
By じじょうくみこ
Illustrated by カピバラ舎
*「崖っぷちほどいい天気」は毎週土曜日更新です。
爽子
結婚できない男、最近、夕方地上波で再放送始まりました。
何度となく再放送してるので、見たりみなかったりですが、彼には、闘志すら湧いて来るのは、すっかり、番組にヤられちゃってますね、わたくし。
めんどくさい男は、常に、私のそばにおります。
夫です。
三十年、工夫に工夫を重ねて、過ごしております。
うまく付き合うコツは、どうせ話は通じないので、こちらから話をしないことです。
向こうの話は、一生懸命聞くふりをします。
しっかり顔を見て、頷いたり、時々オウム返ししたりして。
聞いたふりがバレないために、時々、質問を挟んだりしても、時間を置いて、違うシチュエーションのときに、全く関係無い話題に、引用だけして、攻撃の対象になることがあるので、最近は、質問もやめようと思ってるところです。
あーめんどくさ!
じじょうくみこ Post author
>>爽子さま
こんにちわ!いいお天気ですね〜(*^_^*)
地上波で再放送やってるんですか!? 知らなかったー。
いいなあ、もう一回観てもいいなあ。何度観ても楽しいですね、このドラマ。
偏屈だけどすきだらけの偏屈男子ってほほえましい(あくまでも外から見ればですが)
そして、爽子さんのめんどくさ男の扱い方がハイレベルすぎて泣ける(笑)
そこまでしてつきあっている爽子さんの忍耐強さに敬服します。
ちょっとは気づけ、ダンナちゃん!
結婚している方は多かれ少なかれ、そんな風に
めんどくさいダンナにつきあっているのでしょうか。
結婚って大変ー(ってあ、いけない方向に心が傾いたぞ!)
nao
こんばんは!
このドラマ懐かしい。当時好きで観てました。
しかし、身近にこんな男性がいたらやっぱり面倒くさいのでスルーしちゃうと思います。
ただこの手の男性の面白いところは、すごい物知りなんですよね。
本当にどうでもいいようなことまで何でも知っていたりするので
おだてて色んな話を聞くのは好きかもです(笑
じじょうくみこ Post author
>>naoさま
こんにちわ♪コメントありがとうございますー(*^_^*)
うんうん、確かにそれはありますね。ウンチク力ハンパないです。
納豆を食べていて「魯山人式では300回かきまぜると云々」
革の財布を使っていると「革にもブランドがあって栃木と岡山が云々」
焼き魚を食べていると「焼き魚に大根おろしをつける科学的根拠は云々」
どうでもいい(笑)
でもウンウンへえ〜よく知ってるねえ〜などと適度に相づち打ってると
大変気持ちよくお過ごしくださって時にはおごってくださったりもするので
ありがたく拝聴させていただいております(^_^)v
あずみ
「結婚できない男」、私のフェイバリットドラマです!(横文字使ってみた)
阿部ちゃんのあの面倒くさいヤツっぷりに惚れ込んでしまった私です。実際にあんな男がいたら、早坂先生のライバルになっていたかもしれないです。
じじょうくみこ Post author
>>あずみさま
こんにちわ♪ コメントありがとうございます(*^_^*)
私もベリーフェイバリット化しました(なんやそれ)
桑野サンの面倒くさっぷりはなんかラブリーですよねえ。
パグのケンちゃんとの交流が愛らしいのなんのって(好きって言えばいいのに・・・)
それにしても、桑野サンのいいとこも悪いとこもわかっている高島礼子が
あっさり身をひいたのだけが解せませんでしたわ〜。
ふぇんふぇん
「結婚できない男」私もかなり好きです(笑)
実は私の同い年の外国人元同僚がまさにコレです!超内部複雑骨折系。
結構いろいろイケてるスペックにも拘らず、歴代彼女に細かいダメだしまくり未だ独り身です。
その昔、オレンジ色のオフタートル半袖ニットを着ていた日に、たまたま私の乗っていたエレベータに彼が後から乗り込んで着たのですが、私を見た瞬間言った言葉が、「暑いか寒いかはっきりしろ!」でした(笑)
どうやら「オフタートルニット」なのに「半袖」というのに引っかかった模様~。
「ファッションだよ!」って思いましたが、「あら。そんなに私に注目してるのね~」って返してやりました!
頭の回転の良い彼女が欲しいけど、自分より頭の回転の良い女は許せない…という感じらしく、同等の速度で罵り合う(罵り合える?)私は、ドラマでいうとまさに高島礼子な立ち位置でした~(爆)
じじょうくみこ Post author
>>ふぇんふぇんさま
こんにちわ〜♪コメントうれしいですっ(*^_^*)
それにしても内部複雑骨折系(笑)
その偏屈男子、だいぶこじらせてるみたいですねえ。。。
頭の回転がいい彼女がほしいけど自分より上はイヤって
ああもう面倒くささのきわみ。歴代彼女の心中お察ししますm(_ _)m
そういえば私のまわりにもいましたいました。「ニットなのに半袖」に反応する人。
そしてふぇんふぇんさん、返しがこなれてる! 結婚してあげればよかったのに(爆)
そして今思い出したんですが、会話で絶対自分が上にいこうとする女子もいました!
そこまでしてなぜ盛るかな?と思うんですが、「私のほうがもっと○○」とかぶせてました。
そう考えると男子だけじゃなくて四十路の問題か??
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頭を「そ」でそろえてみました(特に意味はない)