逃亡先で出会ったピンク、スーパー、ミスターG。
みなさま、GWはいかがお過ごしでしたでしょうか? 私は長年フリーランスで「よそさまが休んでいる時に働く」という生活スタイルがしみこんでしまい、GW=連休という感覚がてんでありません。特に今年は仕事先が前半に休む人、後半に休む人、連休明けてから休む人と見事に分散してしまい、なんとなく休むタイミングを逃してしまいました。
ひどい時には4日間家から一歩も出ず終日パソコンに向かっていたのですが、なんというかアレですね、四十路がひきこもるといろいろよろしくないことが起きますね。たとえば
しぼむ
4日もじっとしていたら、ビックリするほど筋肉が落ちました。今ならロングブーツもパッカパカだよってくらいのふくらはぎ。他にもパイオツ関係とか多方面がしょんぼりしました。
たれる
重力と戦い続けた肉体が「もう……ムリ」と叫ぶ断末魔が聞こえました。特に、誰とも話さないのでフェイスラインがわかりやすく崩れました。鏡の中の自分を見て、一夜にして白髪になったマリー・アントワネットの気分になりました。
かれる
現代社会では思っていた以上に喋らずに生きていけることを実感しました。仕事の連絡はメールでできちゃうし、買い物に行っても会話の必要なし。久しぶりに人に会ったら、徹夜明けのスナックのママみたいなしゃがれ声になってる自分にビックリ。
独居老人になったら毎日こうなのかしら、などと哀愁あふれる心情なのに、外は憎らしいほど五月晴れ。天気はいいのに遊びに行けない。仕事は終わらないし、しぼむ・たれる・かれるも止まらない。モンモンとする日が続いたGW終盤、ついにダム決壊。「腰痛が悪化したから! 後でちゃんと間に合わせるから! 頼むから休ませてえええ〜〜!!」と泣きながら家を飛び出したのでありました。
要は逃亡。
たまたま旅仲間のアヤメもブラブラしているというので、どこか近場の温泉宿が空いていれば行ってみるか、ということになりました。けれど家出したのは連休ど真ん中のドピーク。どこの宿も満室で、空いていても普段の倍近い高値です。やっぱり当日に手頃な値段で温泉はムリか…とあきらめかけていたら、
アヤ「夜朝部屋食、海の幸三昧の夕食・ズワイガニつき、富士山が見える展望露天風呂と貸切風呂あり、2間つづきの和室で1万ちょっとのプランがあるよ」
くみ「なに! めっちゃいいじゃん。それにしよう、そうしよう♪」
というわけで予約したのが、その日の昼。最近はスマホで宿の予約ができちゃうから、本当にいい時代になりましたねえ。いやラッキーラッキー私たちついてるね、なんてウキウキしながら一路温泉へ向かったのです。
GWピークの当日にそんな素敵プランの宿がなぜ空いていたのか。その理由にその時はまだ気づいていなかったのでした。
今回の旅先は伊豆のN温泉。関東ではそこそこ有名ですが、伊豆にはもっとアクセス便利な温泉地がたくさんあるので、意外にもふたりとも未踏の地でした。歴史古い温泉街のようだし、浴衣でカラコロそぞろ歩きとかしちゃう? 射的とかやっちゃう〜? なんつって盛り上がりつつ、駅からのアクセスを確認しようと宿のホームページを見ていると、
アヤ「……ねえ、このトップページの一番上にあるキャッチコピー」
くみ「ん? なになに、N温泉といえば温泉、宴会、コン…」
くみ「ちょ、なにこれ。メニューが「お風呂」より「お部屋」より「お料理」より「コンパニオン」が最初に来てますけど」
アヤ「見て、N温泉をウィキペディアで調べたんだけど」
宴会コンパニオン発祥地!
熱海を筆頭に、東京から近い温泉地の中には歓楽街として栄えていた、というのは知っていましたが、どうやらN温泉はそのテの方面で有名だった様子。それにしても、ここまであからさまにホームページでうたっている宿は初めて見たので、エロオヤジだらけの宿だったらどうしようとうっすら不安になりつつ、でも今さらキャンセルもできないし、せっかくの機会なので? どんな宿か見てやろうということになったのです。
詳細情報まで堂々と載ってた
コンパニオンページを熟読したところ、どうやら宴会コンパニオンには温泉コンパニオンとかピンクコンパニオンとかスーパーコンパニオンとかいろいろ種類があるらしい。Yahoo知恵袋で「スーパーコンパニオンって何ですか」という質問があったんですが、「そんな質問をする人は頼まないほうがいいと思います」と回答されていました。そんなにすごいのかスーパー。どれほどスーパーなんだ。ああ、今度「N温泉に行ってきました」というオジサンに会ったら嫌いになってしまいそう。
とか考えているうちに夕方5時。いよいよ問題の宿に到着。
外観は、いわゆる「昭和の大型温泉ホテル」という感じ。ビジネスホテルのようなさっぱりしたエントランスにはエロオヤジっぽい集団もソレっぽい女性もおらず、スーツを着た小柄な女性と、オバチャンというより老婆という感じの女性がフロントにいるのみ。
「いらっしゃいませ、ようこそいらっしゃいました。お荷物お運びいたします」
アラフォーのさとう珠緒という感じのその女性は、ニコニコと愛くるしい笑顔でフロントへ誘導し「今日はあいにくのお天気でねえ、いつもでしたらお風呂から富士山が見えるのですけれど」と申し訳なさそうに部屋まで案内してくれました。
部屋もいわゆる普通の和室。「普通に広い部屋だね」「うん普通にいい感じ」とふたりでフツーフツー言いながらあちこちチェックしましたが、古くさいという以外は特にあやしいところはなし。なんだよホントに普通じゃん、拍子抜けだよねえ〜と笑いながら襖を開けると
もう布団しかれてた((;゚Д゚)
くみ「ヒャダ! 夕食前なのに何このセッティングの早さ!?」
アヤ「これアレじゃない? オヤジがここでしっぽり…とかいうパターンじゃ」
いやいやいや、ここスタッフの人数少なそうだし、夕食の時間も早くしてもらいたそうだったから、効率よく仕事したいってことじゃないかな。そう思いながらも「お色気温泉・昭和臭漂う古い宿・早すぎる布団」に早くも妄想が暴走開始。
ダメだ、気分を変えよう。温泉だよ温泉。館内では展望露天風呂の他に家族風呂がいくつもあって、無料で使えるとのこと。貸切風呂はどこの宿にもけっこうありますが、タダで使えるところはそう多くありません。ずいぶんサービスいいわねってことで聞いてみると、既に予約で埋まって夕食の時間しか空いていないというので、夕食の時間をずらして先に貸切風呂に入ることにしたのです。
再びさとう珠緒が屋外にあるお風呂まで案内してくれ、ニコニコ笑いながら「洗い場が畳になっているので戸惑われるかもしれませんが、お湯じゃばじゃばかけてくださってかまいませんので♪」となんだか意味深な言葉をつぶやいたのです。風呂場に畳? 確かに見てみると、浴槽のまわりがすべて畳敷きになっています。
足下がすべらないし、ヒヤっとしないし、これはナイスアイデア!と大感動。「熱くなったら畳に寝ころべるよ、足も伸ばせるよ〜」と風呂から上がったアヤメは畳の上でゴロゴロ。
アヤ「……」
くみ「………まさか」
アヤ「…………この畳…」
ひひひひょっとして、エロ仕様!???
いかん、いったん落ち着こう。深呼吸、深呼吸。
風呂上がりだし夜風でもあたるかと近所へ散策に出たのですが、そぞろ歩きどころか周囲はとっぷり真っ暗闇。温泉宿が立ち並んでいるかと思いきや、隣の大型ホテルも向かいのこじんまりした宿も灯りはついておらず、どうも閉鎖して廃墟になっているようでした。見えるのはパチンコ屋の灯りと、ギラギラしたフィリピンパブの看板のみ。
散歩はあきらめて再び宿へ。フロントは人の気配もなく静まりかえっています。今頃オヤジたちはコンパニオン呼んじゃったりしてるのかしら…オイタなんかしちゃったりしているのかしら。館内のどこかからゲスなオヤジの笑い声が聞こえるんじゃないかと、静かな館内を息をひそめてブラリ途中下車の旅。
芸妓!
観光ポスターのようですが、「ほんとは女の人に来てほしい」と言われても「女子向けに見せかけて、つまりは男ばっか来てるんですよアピールですよね?」としか思えません!
G様!
他の部屋は全て「鈴木様」「山田様」と名前入りなのに、なぜここだけG様なのあやしすぎ!
あわびの踊り焼きっ!
サザエの壺焼きーっっ!!
もはや全てがエロにしか見えません…。
これ以上起きていると旅の目的を見失ってしまいそうなので、さくっとビールを飲んでちゃっちゃと食べて、さっさと寝ることにいたしました。
前日とはうって変わって快晴の朝。実際のところ宿はとても快適で、料理はどれもおいしくて、お風呂も気持ちよくて、ぐっすり眠れて最高だったのであります。カラダの疲れもすっかり取れて、なんだかんだいって満喫できたから結果オーライじゃん? と昨日のことはすっかり忘れて爽快な気持ちになっておりました。チェックアウトもすませ、駅までのバスを待つ間エントランスホールをうろうろしていたら、片隅になにやら小さな祠を発見。
「こちらは弁財天さんをおまつりしておりましてね、いろいろといわくつきみたいなんですよ」
ハッと気づくと、隣で珠緒がニコニコ笑っていました。こ、こやつ、いつのまに??
くみ「いわくつきって何なんですか」
珠「くわしいことはわからないんですけどね、魂が入っているそうなんですよ」
くみ「はあ」
珠「不思議なことがたくさん起きるそうで、ご覧の通り、お供えをされるお客様がとても多いんですよ。弁天さんは七福神で唯一の女性の神様ですから、女性はお肌がね、キレイになるというので御利益ありますよ♪ それから芸事の神様でもありますので、お稽古事をされている方や芸能の方などもこちらにお参りされる方が多くて」
ってさっきから熱心に説明してくださるのはいいんですけどね、
この神様エロすぎなんですけども
いやはや何とも不思議な旅でございました。おかげで仕事のことは頭からすっかりブッ飛びました。ありがとう、N温泉。ありがとう、G様。とりあえず次は宿をしっかり予約しようと心に決めた、GW明けのじじょうくみこであります。さわやかな週末にほんとすいません。
By じじょうくみこ
Illustrated by カピバラ舎
*「崖っぷちほどいい天気」は毎週土曜日更新です。
ハウザー
うちの夫とまだ付き合っていた時代、聞いたことあります!! コンパニオン付きの宴会。
新入社員で、エロオヤジ達に誘われて参加してたとか。
「にょたいもり」(敢えて漢字では書きません…)の話にワタシも度肝をぬかれました…。
「正直キモいだけだった」との感想を聞けて安心した記憶があります。
じじょうくみこ Post author
>>ハウザーさま
こんにちわ、さわやかな週末にゲスな話でホントすいません(^^;)
コメントありがとうございます♪
本当に「ニョタイモリ」(カタカナにしたら外国料理っぽいですね)を体験された方がいるとは!
バブル時代はそういう話もずいぶん聞きましたが、今でもやっているのでしょうか…?
いやはやキョーレツでした。
nao
新入社員時代に、温泉場での忘年会で社長がコンパニオンさんを2名ほど呼んでいました。
ミニスカートの若い女性がきておじさま方のお相手をしていた記憶があります。
他に年季の入った芸者さんも廊下で見かけました。
おかげで女性社員がお酌などしなくてすんだのでよかったなーと思ってました。
さほどえっちな出来事もなかったような気がします。
いや当時の私が鈍くてわからなかっただけかもしれませんが。。
何か懐かしい(^^)
爽子
気分転換にはもってこいの旅でしたね。よかったです!
コンパニオン、この名称からして昭和臭ぷんぷんですね。
同級生が何かの会合で、コンパニオン付きの宴会にいったときに、あまりに熟年コンパニオン揃いだったために、ネタで、写メを送ってきてくれたことがありました。
ずらーーーーーーっと、横一列に並んだ熟年コンパニオンが一斉にごあいさつ。
彼にスケベ心があったに違いないですが、しょげた顔でお姉様がたのお・も・て・な・しをうけるの図
おなか抱えて笑いました。
わたくしも、どこにも出かけず、お宅の人でした。
前半は、わたしのこと?・・・見られてた?
膨張の一途をたどってますので、しぼみはしませんが、たれてます。あーーーーーー
たたみ敷きのお風呂。。。。興味あるなあ。
ごろごろしてみたい♪
じじょうくみこ Post author
>>naoさま
こんにちわーホントにこんなネタにコメントしてくださってありがとうございますm(_ _)m
それはアレですね、ノーマルなコンパニオンですね(訳知り顔)
昔はこういうエロオヤジオプションがたくさんあったんでしょうねえ。
調べれば調べるほどドエロ方面にヤバくてオエーとなりました。
明るいエロなら大歓迎なんですけどw
じじょうくみこ Post author
>>爽子さま
こんにちわ!コメントありがとうございます〜♪
みなさん、なんやかんやとこの手の記憶をお持ちですねw
熟年コンパニオン話、なんともほほえましくていいですなあ〜(*^_^*)
それにしても、海外旅行も車も家も興味のない現代の草食系男子たちは
20年後30年後にこういうコンパニオンのお世話になったりするんでしょうかね。
あるような、ないような。ないかなあ〜。でもエロは不滅だしなあ。
とりあえず、この先のN温泉の行方が大変気になりますですハイ。