恋の天城峠、情念の世界を体感してみました。
みなさま、ごきげんよう。五月病より中二病、五月晴れよりミミズ腫れ、蟹江もいいけどカニエもね、あなたのカニエウェストくみこでございます。
蟹江さん。大好きだったー(T_T)
ご冥福をお祈りします。
最近もヨメと『VOGUE』の表紙になって物議を醸しておりましたね。
そんなカニエはおいといて。五月晴れとはよくいったもので、今年は本当に快晴続きの5月ですね。でも5月も後半になるとだんだん湿気が増してきて、したたる汗に梅雨の足音を感じたり、雨の訪れをヒザの痛みで感じたりな日々でございます。
雨と言えば湿気。湿気といえば
天城越え
ですよね。
GWに伊豆の温泉宿で貴重な体験をしたお話を前回いたしましたが、伊豆といえば踊り子。そして忘れちゃならない、天城越え。
『天城越え』といえば発売から30年近くたっても変わらず愛される、日本を代表する名曲中の名曲。みなさまの中にもカラオケのレパートリーという方、いらっしゃるんじゃないかと思いますが、「隠しきれない移り香が いつしかあなたにしみついた 誰かに盗られるくらいなら あなたを殺していいですか」っていいわけないですよねってツッコまずにはいられない、のっけから情念怨念のオンパレード。
20代半ばの頃、とあるスナックでこの曲を歌ったことがありますが、歌い終わって店のママさんに
「フッ……あなた、まだ本当の恋を知らないわ。天城、越えてないわね」
と鼻で笑われた記憶があります。
あれから20年。本当の恋を知ったかどうかは自信ありませんが、いろんな峠のキワキワでせめぎあってる四十路の今なら、天城越えもまた一段と味わい深いのではなかろうか。というわけで友人アヤメと私は宿を出た後、少し足を伸ばして天城をめざすことにしたのです。
天城といえば中伊豆観光のハイライト。天城行かずにどこ行くの? というくらいの超有名スポットですが、N温泉同様、中伊豆はどうにも未踏の地ばかり(まったく20年間何をしていたのだと言いたい)。本当の恋の味を知るべく、天城行きのバスが出ている修善寺駅へ。修善寺は川端康成が『伊豆の踊子』を執筆した常宿が残っていたりする由緒正しい温泉街ですが、せっかち四十路女は脇目もふらずに天城へレリゴー。
修善寺を出発したバスは、いきなり緑生い茂る新緑の山中へ。くねくねくねくねと山道を進み、30分かけて歌詞にも登場する浄蓮の滝へ到着いたしました。
寝みだ〜れて 隠れ〜宿
つづら〜折り 浄蓮のた〜き〜♪
このへんからエロスたっぷりの比喩表現がバンバン出てまいりますが、実際の浄蓮の滝はマイナスイオン出しまくりの清らかな滝でございました。(当たり前か)
逆に、滝周辺が土産店やら釣り堀やら喫茶店やらとコッテコテの観光地すぎて戸惑いますね。石川さゆり的天城はもっとこう湿気たっぷりに、じっとりしっとり楽しむものではないのか。情念がほとばしるような、大人の恋にふさわしい場所はないものか。
ありました。
ズバリ、天城峠。
『天城越え』は何を越えたんですかっていうと、この天城峠を越えたわけですね。バスを待つ間に調べてみたのですが、伊豆半島は高い山が海に迫る急峻な地形が多く、半島の南部は明治中頃まで陸の孤島状態だったとか。南伊豆から天城峠を越えて中伊豆へ抜けるルートは、難所に次ぐ難所の危険な峠道。南伊豆の人々の熱い思いによって1904年(明治37年)に天城トンネルが完成するまで、天城越えはまさに命がけの旅路だったんですねえ。
あとこれ私は知らなかったんですが、『天城越え』の歌詞って作詞家の吉岡治氏が同名小説をモデルに作ったらしいですね。小説『天城越え』は1959年に発表された、松本清張の短編小説。下田に暮らす主人公の少年は、父ではない男と情事にふける母の姿を目撃したショックから、単身天城越えの旅を決行。峠道で美しい女ハナと出会い、ぼっち同士の2人は次第に心を通わせるようになるのですが、実はハナは遊郭から逃げ出してきた遊女で……
という大正末期に起きた殺人事件を描いた、こちらもドロドロの愛憎劇。1983年には田中裕子主演で映画化もされています。
うわあ〜これ見たい!
まあ要するに、天城峠ってやたら痴情がもつれるとこですねってことですね。
アヤメ「天城トンネルは今は新しいトンネルが通っていて、旧天城トンネルは観光スポットになっているみたいだよ。観光ガイドによれば、旧天城トンネルは天城峠バス停から歩いて10分」
くみ「それくらいなら歩いていけそうだね。行っちゃう? 峠、攻めちゃう〜?」
とイケイケで天城峠バス停で下車したまではよかったのですが、ゲキコミ観光地・浄蓮の滝からすぐだというのに
何この山道!
落石ゴロゴロ、倒木ボコボコ、どう見ても人が歩いているとは思えません。とはいえバス停付近は何にもない山の中。バスは行ってしまったし、次のバスは1時間後。このままじっとしててもラチがあかないし、ひとまずトンネルをめざしてみるか、荒れているのは入口だけかもしれないしね、というわけで2人して旧天城トンネルに向けて歩き出したのですが…
岩転がりすぎっ
階段急すぎっ
以前遭難しかけたモーゼの墓をはるかにしのぐ荒々しさに、これはいかんとスカートからジーンズに着替えてのぞんだものの、スタート5分で早くも進退窮まる。まわりは鬱蒼とした深い森。行けども行けども終わらないケモノ道。もう一歩たりとも進めない。でも、バス停にも引き返せない。たれか、たれかある〜!!!
ハッ
これはまさに『天城越え』の心情じゃないですか!
恋。これが本当の恋の味なのね。ああ苦しい。胸がしめつけられるよう。心細くて倒れてしまいそう。
というわけで、ご一緒に。
舞い上がりぃ〜〜
揺れ堕ちるぅ〜〜
肩のむこうに、あなた
やーーまがあ〜もえるぅぅぅ〜〜♪
戻れなくても(ハアハア)もういいの(ゼエゼエ)
くらくら燃える(グオオゥゥ)地をはって(ドリャアァァ)
あなたと〜を〜こえたあ〜い(ヒィィィィ)
ぅわあまぎいぃぃぃぃ〜〜
ごぉぉぉぉええぇぇぇぇ〜〜
はい、といったわけでね
旧天城トンネル到着。
ゼイゼイゼイ、ほ、本気の恋ってマジ死にますわ…。
本気すぎて時間をくってしまい、気づけばバスの時間15分前。これを逃すと次のバスは1時間以上先。歴史浪漫に思いをはせるまもなく、ダッシュで今来た道を戻っていったのでした。そして翌日には生まれたての子羊状態で足腰たたなくなり、実は天城トンネルは反対側から車で来れたことが判明して失神。本気の恋にも裏道がある。
というわけで、20年後の結論。
天城、越えなくてよし。
By じじょうくみこ
Illustrated by カピバラ舎
*「崖っぷちほどいい天気」は毎週土曜日更新です。
爽子
天城越え、無事体験なさいましたか、おめでとうございます。
裏道がある…というのでは、わたくしが数年前、お参りした、京都醍醐の五大力さんと似てますね。
裏から、クルマで簡単に行けるということを聞いて、失神しそうでした。
なんの心の準備もせずに、行き当たりばったりで、石段登り始めたので、もうヘトヘト。
友人は、ちゃんとわかってたらしいですが。
石川さゆりの歌は、エロスたっぷりの歌詞が多いですね。
飢餓海峡なんかも、カラオケで、歌詞が流れて、仰け反りました。
出だしのちり紙(し )に、すでにやられました。
えーーー、ティッシュちゃうのん?ちり紙〜^o^。
恋しい男の足の爪で、ほっぺチクチクなんて、倒錯してますよね。
本当の恋、地獄を見る恋って、狂気を孕んでいるのかしら。ひー。
最近、もうええねん。が口癖です。
こんなことでは、いけませんね!
tsukimachi
はじめましてこんにちは!
ずっとファンです!
毎回読んで爆笑していましたが
今回もまた、カニエウェストでぐいっと掴まれニタニタしながら読みました。
もっぱらテーマソングは
アナ雪でしたが
読みながら天城越えになり
レリゴーでまたアナ雪に戻り
最終的には
天城越えにまた戻りました。
ああ、ほんと面白かった。
本気の恋にも裏道。
名言ですね~
これからもたのしみにしております♪
いまねえ
おおおっ、N温泉に続き天城まで踏破されましたかっ!天城と言えば有数の降雨量を誇る、
まさに西の屋久島か、東の天城かという。。(スンマセン。。私の勝手な解釈です)
N温泉は我が住まいから電車乗り継ぎ30分もしないで行けます、
このあたり地元の消防団の一泊忘年会の定番温泉ではなかったかなと。。
天城というと車が必須、車酔いのある私にはちょっと難易度の高い土地です。
・・で!ですね、私が訴えたいのは小説の「天城越え」を映像化したものには
NHKドラマで佐藤慶と大谷直子主演のものがあるのですが、私的にはこれが一番かと。
・・あ。映画観てないけど、です。今は亡き佐藤慶の男の色気がむんむんと。。。
つまり、私が佐藤慶のファンだってことなんですけども。。
・・・カラオケの「天城越え」は情念たっぷりに歌いこむ方が多いのですが
同席している身としては、どうにもこうにもむずむずとしますわ、
情念負けしてしまうというか、。。
聴いているだけで峠を越えている気分になってへばります。。
じじょうくみこ Post author
>>爽子さま
こんにちわー♪コメントありがとうございます(*^_^*)
五大力さん! わー知りませんでした。。。。
そういえば函館山でも長蛇の列を並んでロープウェーに乗ったのに、
着いたら頂上にタクシーで来てる人がいたのを見てのけぞりました。
ああいうの、やめてもらえませんかね。ぐやぢいから(笑)
それより飢餓海峡ですよ爽子さん!
youtubeで改めて歌詞を知ったんですが
http://youtu.be/zMF0LKOrII8
もうタイトルからしてヤバいニオイぷんぷんしてますが
(恐山が出てくるってことは、飢餓海峡は下北半島が舞台ですかね)
話題のちり紙(爆)に足の爪を包んで持ち歩き、
アンタに会いたくなったらほっぺにチクチクさしてみる・・・
ってヒャダどんだけドMなのこのコ!!!
ところでクライマックスの歌詞の
「ああ〜この船は木の葉舟 漕いでも漕いでもたどる気しない」
ってそりゃやる気も出ないよね飢餓だしね
と思ったら「たどる岸ない」でした。
耳まで情念ゼロ(^^;)
じじょうくみこ Post author
>>tsukimachiさま
うわーこんにちわ!こちらこそ、毎回楽しみにしております〜♪
コメントありがとうございますm(_ _)m
喜んでいただけて何よりでございます。足腰ガクブルになった甲斐がありました♪
レリゴー→天城越え→レリゴー→天城越え
と忙しかったですね、お疲れ様でした(笑)
熊本からは遠いですが、機会があったらぜひ天城越えにチャレンジください。
楽しいですよ(←どの口が言う)
じじょうくみこ Post author
>>いまねえさま
こんにちわ!コメントありがとうございます〜(^^)/
おお、いまねえさまの地元でしたか!
消防団の一泊忘年会・・・ああああ目に浮かぶ・・・・
天城ってそんなに雨が多いところなんですか。
確かにもーんのすっごい苔むしてました。晴れてたのに、空気もしっとり。
天城峠は今でも厳しい峠道ですよね。バスでもおっかなかったです。。。
ところでドラマ『天城越え』。チェックしました! 78年のこれですね。
https://www.nhk-ondemand.jp/program/P200900050600000/
いやあ〜
大谷直子と佐藤慶ってエロすぎる(笑)
98年には嵐のニノと田中美佐子の組み合わせでもドラマ化されたようですが
(わっ、こっちは蟹江さん!!)
うーん。どれも見たい。天城越えくらべしてみようかな。
きゃらめる
抱腹絶倒(≧▽≦)
エロい歌詞の歌、大好き♪
世間的には真面目な風貌、実は癒し系&イヤラシ系オバハンなもので(笑)
私も4月に徳島市の眉山で、タクシールートもロープウェイも、ゆったり歩いて登るルートもあるのに敢えて!最短距離かつ急勾配のルートを、スカートにブーツで四つん這いも交えながら40分かけて登りました。それもひとりで(笑)いやぁ、しんどかった~快感やった~♪
あ、眉山というのは、大沢たかおと松嶋菜々子の映画【眉山】のタイトルにもなった、スタイル美しい低山です。
じじょうくみこ Post author
>>きゃらめるさま
こんにちわー♪コメントありがとうございますm(_ _)m
いいですね、あなたの街の癒し系&イラヤシ系。それ、いただきます(ニヤ)
しかし、たまたま情念の森に迷い込んでしまった私と違って
きゃらめるさまは「あえて」「スカートで」「四つんばいで」登山され
おまけにそれを「快感」とおっしゃる!
そのブレない強さに感動いたしました。
私などまだまだひよっこ。
恋の道もイヤラシ道?も、まだまだ迷子でございます(^^;)
出口はどこだ。
okosama
じじょくみさん、こんばんは。
大谷直子さん、佐藤慶さんの「天城越え」には松本清張先生もご出演なさっています。先日「ザ・テレビっ子」と言う番組で清張先生のシーンだけ見ましたが、情念とはちょっと違った念を感じました。(笑)
じじょうくみこ Post author
>>okosamaさま
こんにちわ♫コメントありがとうございます( ´ ▽ ` )ノ
ほう、清張先生がドラマ出演されていると!
それはまたレアですなあー。
何役で出演されたのでしょうかね。
情夫役だったらのけぞります(笑)
ますます見たくなってきました。オンデマンドで見ちゃおうかなー。