珍獣オフィスの、ザワつく給湯室。
W杯がらみで町のあちこちから「崖っぷち、崖っぷち」と聞こえるたび、うっかり振り向いてしまう今日このごろですが、皆様いかがお過ごしですか。
わたくし梅雨の低気圧のせいか、はたまた先週調子に乗って書きすぎたせいか、テニス肘が一進一退をくり返しております。梅雨って気分がさえないし、集中力なくていけませんね。ぼんやりするには最高なんですけど。皆様のなかにも体調を崩されている方が多いのではないかと思いますので、今回はサクッと小話など。
ところで梅雨といえば給湯室、ですよね。
会社のどこが好きですかと、もしも誰かに聞かれたら、まっすぐな目で給湯室ですと、答える私はじじょうくみこです。
給湯室。
それはオフィスの片隅に備え付けられた、シンクや湯沸かし器のある小スペース。密室のようで密室でなく、閉じているようで開いていて、社内のよしなし事が湯気と一緒に漂い消える、働く大人のヒミツの小部屋。
なんで給湯室が好きなんでしょう。わかりませんが、給湯室と聞くだけで胸がざわざわいたします。
けれど若かりし頃に働いていた会社は、どこも給湯室のない小さなオフィスばかりでした。会社を辞めた後は、給湯室とは無縁のフリーランス生活でありました。ですから四十路で20年ぶりに会社勤めを決心し、ちゃんとした企業のちゃんとしたオフィス(といっても珍獣パラダイス)で働くことになったとき、
フロアにこのマークを見つけて、ひとり小躍りしたものです。
※ 「珍獣パラダイスって?」という方はレッツクリック。→ ☆
そこは2畳ほどのスペースにシンクと給湯ポット、冷蔵庫があるだけのこざっぱりした小部屋でございました。ドアはありませんでしたが、通路から少し奥まった半個室のようなつくりで、存在感を消して決して主張せず、それでいて必要なときにはスムーズに使える、さながらベテラン執事のような配慮と距離感でそこにいたのでありました。
しかも、その給湯室はちょっとした休憩スペースとつながっていて、むこうから給湯室は死角になって見えないのに、会話は給湯室にしっかり聞こえるというナイスなレイアウト。
やる。
この給湯室は、きっとやる。
そんな予感がしたのをはっきりと覚えております。
キッチンじゃダメなの給湯室なの
フロアには100人近くが働いていたのですが、会社勤めはもちろんのこと、独身&フリーランスという他者との交流が極端に少ない生活を20年続けていたもので、こんな大勢の人間と1日中同じ場所にいるだけで目が回りそうでした。ましてや人間関係など、うまくこなせるはずもございません。
井戸端会議といえば女子トイレか給湯室というのが定番ですが、女子トイレの雑談ってなんであんなに長いんですかね? だいたいそこは「オスカルいる?」と聞いたら号泣する女が出てくるようなトイレでしたから、きな臭すぎてとても長居はできません。
そこいくと給湯室は滞在時間が短いのでサッと逃げられるし、お湯を注ぎながらこっそり話を聞くことも可能。おまけに21世紀のオフィスでは女子のお茶くみ業務も、お茶に雑巾のしぼり汁を入れられる上司も絶滅したかわりに、実に多くの社員が行き交う場所に変貌しておりました。弁当男子や弁当女子、コーヒー男子に紅茶女子、小腹がすいたらスープを入れよう、お土産のカステラ切り分けよう、と千客万来の様相。
そんなわけで、給湯室に行っては「あそことあそこの課長は部長の腰巾着」とか「営業のAさんと2階下にいるBさんは元夫婦」といった社内事情を仕入れたり、急に弁当箱を洗うようになった男子に(料理上手な彼女ができたのかい?)と後ろ姿にこっそりたずねてみたりなんかして。
時には休憩スペースからディープな会話を漏れ聞くこともありました。
あるときは、オバフォーとおぼしき派遣のオバサマ4〜5人が、熱く語り合っておりました。ちらりとのぞき見すると、会話の中心は白いブラウスのえりをパリッときめた女性。その人はいつ見てものりのきいたシャツに絶妙な膝下丈のスカートと、清楚な装いで素敵だなあ〜と思っていた方だったのですが、その人が別の女性に叫んでいたのです。
「あのね、奥さんがいつもいつもキレイにしていれば、ダンナはちゃんと帰ってくるのよ。それでダンナが帰ってこなければ、それはダンナが悪い。私は負けたくないの! だから、できることはちゃんとやるの!!」
え。
だからいつもそんなキレイキレイにしていたんですか? てか結婚しても、毎日そんなにちゃんとしてないとダメなんですか? ホントにおキレイな方だったんですが、よもやそんな理由があったとは…。軽く衝撃を受けていたら、今度は別の女性が
「最近ダンナが自分でクリーニングを取りにいったり、庭の草むしりをするようになったのよ。ヤバい、わたしの領域に入ってきた! って焦っちゃってさあ〜」
え!?
それ、ラッキー♪って喜ぶところじゃくて領域侵犯なんですか??
またあるときは、ふたりの女子が休憩スペースで楽しそうにしゃべっている声が聞こえてきました。ああ人がいるのね〜ぐらいに最初は思っていましたが
「普通、女だって浮気するっしょ?」
「するするー」
その言葉を聞いて、そっと休憩スペースの側に移動しました。
見ると、いかにもな感じのキレイめ・ゆるふわ20代女子ふたり。とてもそんなビッチな会話をするようには見えなかったのですが
「今までつきあったのは5人なんだけどさ、浮気を入れたら10人かな。だってそういう女なんだもん、しょうがないよねえ。わたしだって疲れるよ。身をすり減らすっていうかさ。なんせ相手が友達だからさあー」
おいおい彼氏の友達と浮気しているのか。彼氏を裏切っといて疲れるもクソもあるかい、とひとりギラギラしていたらもうひとりの女子が
「うちは、お母さんもそうなんだよ。『あんたの父さん、浮気相手だったんだよねー』つって言われたときは、あの人の娘でいるのがまじイヤになったよ。まあ、そんなわたしも浮気しちゃってるんだけどね(笑)」
いやあ〜〜〜
給湯室やっぱすごいわー心がザワついてたまらんわー。
最後に珍獣男子のひとり、やることはデカいがおそろしく気が小さいイケズ京男マツタケが給湯室に備え付けられた共有スポンジについて
「あれで弁当箱洗うやつ、信じられへん! 普通あれってコップ洗うやつでしょ? アブラものにつこたら汚れるやん!コップ汚れるやん! まじありえへん!!」
とプリプリ怒って女子からの評判を大層落としたことを、ここにご報告いたします。
給湯室に気をつけろ。
By じじょうくみこ
Illustrated by カピバラ舎
*「崖っぷちほどいい天気」は毎週土曜日更新です。
爽子
いや〜、今週も、楽しかった〜。
ええなあ、その給湯室。
行ってみたい。
少しずつ、目立たないように移動しながら、ディープな会話を盗み聞きした〜い。
私が、数年働いた職場には、給湯室はありませんでした。
食堂でした。
そのかわり、歯磨きができるお化粧室がありました。
絶妙な環境ですよね、給湯室。
憧れます^o^
okosama
おお、秘密トークが繰り広げられる休憩室横の給湯室!
かのブライちゃんが足しげく給湯室に通っていれば、取り囲み事件(でしたか?)を回避できたかもしれない…?
(ブライちゃんをご存知ない方は、昨年12月頃の崖天をお読み下さい。)
いまねえ
おお。我が職場にもございますよ、給湯室!
とはいえ利用するのは我が部署20数名のうちの半分くらいかな?
・・・・勤務先が工場なので現場作業の多くの人達には縁のない空間なのです。
ですから、ある意味公にはできない空間でもあります。。
(みなさん「給湯室」があるということはご存じではありますが、
そこで密かに繰り広げられる会話については・・・秘密の花園状態です・・)
とはいえ、給湯室手前でその中にいる人達の気配によっては、そおおおっと足音消して
踵をかえすことも多々あります。。危うきに近寄らず・・・
なかなかにサバイバルな空間ですね~。
じじょうくみこ Post author
>>爽子さま
こんにちわ!いつもコメントありがとうございます~♪
食堂もいいですね~。いろんな人の隣に座って耳ダンボ(結局盗み聞き)
給湯室のひそひそ話って、なんか、そそりますよねえ~~~(はあと)
じじょうくみこ Post author
>>okosamaさま
こんにちわーいつもコメントありがとうございます(‘◇’)ゞ
給湯室でブライちゃんが出てくるとは、どんだけ珍獣バラダイス熟知してるんですか(笑)
ブライちゃんは正義感が強い女子なので、
きっと話聞いたら「そんなの違うと思いますっ」と言ってしまうかもしれません。。。
じじょうくみこ Post author
>>いまねえさま
こんにちわーコメントいつもありがとうございます!(^^)!
給湯室ございますかっ!
確かに場合によっては難しいところもありますよねー。
私もあぶないぞってメンバーがいたときは
とおりすがる感じで回避することもあります(-_-;)
そこんとこは大人の女のスキルでw
tsukimachi
じじょくみさま、こんにちは!
給湯室。
なんだか、会社の中のミニミーティングルームって感じですよね。
簡易キッチンがあるせいか?人は家庭感を感じリラックスするのでしょうかね~。
わたしがお勤めしていたオフィスにもありました。
同期とひそひそ話しをしていたものです。
先約の先輩方がいらっしゃると、行きにくかった記憶があります。笑
時代はめぐり、わたしもそうなっていたはず・・。
あ、いま思い出しました!
仲よしの先輩が「今日デートなの」と言って
洗いものついでに
ちいさなちいさなカミソリで指毛を剃っておいででした!
「そこまでします?!」と爆笑したのは給湯室です。
でもいま思うと「ここでします?!」が正しいツッコミだったような。笑
テニス肘はだいじょうぶですか?
万年テニス膝(そんなんあるのか?)なtsukimachiでした。
どうぞおだいじに。
じじょうくみこ Post author
>>tsukimachiさま
こんにちわー!!コメントありがとうございます♪
引っ越しを考えているので食器は…と思いつつ、
ふだん器を見るたび心が激しく揺さぶられております(-_-;)
指毛! 指毛そってる人を見るのは未経験です激レアですね!
歯磨きをする人とか、給湯室ではいろんな攻防があるようです。。。
言われてみれば確かに、若い頃なら給湯室には近づけなかったかもですね。
おばちゃんだから楽しめるんですね。ああ、中年でよかったと初めて思いました(笑)