夏泥棒が来てる頃、珍獣パラダイスに謎めく独女あらわる!
またもや3週間のご無沙汰でございます。テニス肘で休養したり夏風邪でぶっ倒れたりサイトがお休みだったりしている間に、気づけば8月後半。どういうことですか。どういうことですかって、どうもこうもって話ですけどね、後頭部殴られて気絶している間に夏が終わってた、みたいな浦島太郎感なんですよ今。
夏泥棒はだれ。私の青春はどこ。行かないで夏。何も言えなくて夏。いやいや言いますよ夏。言わせていただきますよ夏。暑すぎたし夏! 雨多すぎだし夏! 酷暑と豪雨のくり返しで飽きるんですけど夏! 最近アンタほんと感じ悪いよ夏っ!
せめて去り際くらいしみじみと夏の風情を味わいたい、こんにちは、あなたのミスターサマータイムくみこです。
個人的には仕事まみれのさみしい夏ではございましたが、そのぶん仕事先でいろいろな人に出会う夏となりました。今回はそのひとり、珍獣パラダイスに入ってきた新メンバーについてお話しいたしましょう。
派遣OLとして配属されて以来のおつきあい、通称「珍獣パラダイス」についてはこれまでしつこいほどに書いてまいりましたが、配属当初はむさくるしいことこの上ない男所帯だったこの職場も、今では男女半々のにぎやかな職場へと大変貌。男子のはじけっぷりもさることながら、女子も女子で個性派が集結し、「この部署ひょっとしてキャラで採ってるんじゃないか疑惑」が濃厚になりつつある今日この頃。
珍獣女子のメンバー紹介はこちら → ★
そんな珍獣パラダイスに新たな女子が入ってきたのは、先日のことでありました。
彼女の名は、エリコ。私と同じ編集職で採用された、40代の派遣さんです。アラサーメンバーが多い珍獣パラダイスにおいて、事務職以外でオバフォー世代の投入は大変珍しいこと。聞くところによると、エリコさんは編集はもちろんデザインやイラストなんかもできちゃう「スーパー派遣さん」らしい。これから始まる大型プロジェクトの専属として、期間限定で珍獣パラダイスに召還されたようでした。
「わからないことばかりなので、いろいろ教えてくださいね」
オバフォーとは思えないほどピチッとした肌。「中年太りってご存じですか」と胸ぐらつかみたくなる、スレンダーなお姿。セミロングの黒髪をさらさら揺らしながら、エリコさんは颯爽とわたしの前に現れたのでありました。
同じ職種、おまけに同じ四十路独女! 同世代の独女に会うのは本当に久しぶりのことで、共通点の多いわたしたちはすぐに会話を交わすようになったのです。仕事でも早速ご一緒することになりましたが、まあ〜仕事できるできる! 速くて正確、万事においてぬかりなし。おまけに、字の美しさたるや。息が止まるほど麗しい文字、というものを初めて目にしました。整っていて凛として、誰が読んでもわかる指示内容。ああ、なんというプロの仕事。あやかりたい。わたしもあんな風に働いてみたい〜!
そんな風に羨望のまなざしで見つめていたある日、ひょんなことからエリコさんと住んでいる場所の話題になりました。私がAという町に住んでいます、と言うと
「Aですか。なつかしい。わたし、昔よく行っていたんですよ」
「え、あんな住宅街になんでまた?」
「昔ね、お手伝いしていたんですよ。鬼○先生の。お宅があのあたりにあったもので」
え
…それって……
…あの今は亡き……
………フラワー&スネーク的な………
…………めくるめく大人の世界がくり広げられる……
………………………………官能小説の大家の………………………
D鬼○先生のことですかっ!?
官能小説の「お手伝い」ってそそそそそれは一体どんなお仕事なされるのですかくくくわしくお聞きしたいっっ、と前のめりになる私に
「別にね、普通ですよ。普通の、編集の、お仕事。フフ」
それ以来、エリコさんから目が離せなくなりました。
ある原稿について「この表現にルビをふるか、ふらないか」という話をしていたときのこと。急に思い出し笑いをしながら顔を寄せてきて、エリコさんは小さな声でこう言いました。
「鬼○先生のときも、ルビが結構大変だったんですよ。ほら、あの先生って独特の言葉を使われるでしょう。花唇のルビ……〈かしん〉、でいいんですよね? フフフ」
またある日は、腕に大きな絆創膏を貼っていました。どうしたんですか、と聞くと「ちょっと、ぶつけちゃって」とエリコさん。ずいぶん珍しい場所をぶつけるもんだなと不思議に思っていたのですが、しばらくすると今度は手首に包帯を巻いておりました。またしばらくすると、反対の腕に大きな絆創膏。
DV彼氏でもいるのかと心配になりましたが、どうやらそういうことではないらしく。「そそっかしいんですよ、わたし」と言いながら、エリコさんはなぜかケガをするたび、うれしそうにわたしに報告に来るのです。
「普段ケガしないところばかりケガしていると、そっち系の趣味の人だと思われるかもよお〜」なんて冗談まじりに言うと、
「ホントですねえ。ウフ、フフフフフ」
別の日には何かの拍子で本の話になり、どんな本を読みますか、と聞いてみると「だいたい小説ですかね。あとマンガもわりと読みます。今度おすすめを持ってきますよ」とエリコさん。
後日、出社した途端に紙袋を渡されました。早速開けてみようとする私の手を静かに止めて、
「人のいるところでは、開かないほうがいいと思いますよ、フフフ」
と、意味深な笑みを浮かべて去っていきました。そう言われると気になるのが人の常。人目がつかないように、机の下でコソコソと開いてみると、
うら若きイケメンふたりが、くんずほぐれつ
そんな感じで、やることなすことミステリアスなエリコさんなわけですが、どうやら彼女、オバフォーによくある生理不順にひどく悩まされていることがわかってきました。
「何ヶ月もないかと思ったら、何の前ぶれもなくドバーッと出ちゃって。もう子供も産まないんだし、いっそなくなってくれたらって思うんだけどね。ホントにイヤになっちゃう」
そんな風に愚痴っていたエリコさんは、あるときランチから帰ってくると、スリットが深く入った黒のロングタイトスカートをはいていたのです。あれ、確か午前中は白いチノパンを履いていたはず。
「実はお昼を食べている時に大量出血しちゃったの。もう血の海よ、血の海。焦ったわー。幸い財布にお金も入っていたし、デパートでランチしていて命拾いしたわ。それで、お店の人に見つからないようにイスをキレイにして、バッグでパンツを隠しながら服屋さんに行って、スカートを買って着替えてきたの。ホント、イヤになっちゃわよねえ。お色直しよ、お色直し。ウフフフ」
外出先でまさかの大量出血。わたしも経験あります。ちょっとランチのつもりで完全に油断していたので、不測の事態にパニック状態。心細いわ恥ずかしいわ悲しいわで、その時のわたしはありったけの小銭で似たようなパンツを買って、トイレでコソコソ着替え、何事もなかったのように職場に戻って平静を装うのが精一杯でした。
それをエリコさんは、あえて正反対な黒のタイトスカートに着替えて、堂々と人目を引いたのです。そして「女は年を取ると、こういうことが起きるのよ」と若い女子たちに暗に知らせたのでありました。
…おそろしい子!
いや〜すごい。この人いったい何者? 惚れるわマジで!
そんなわけで、エリコさんの一挙手一投足が気になってしかたがない今日この頃。やっぱり珍獣パラダイスはキャラで採っているに違いないと確信した、夏の日のじじょうくみこでありました。
By じじょうくみこ
Illustrated by カピバラ舎
*「崖っぷちほどいい天気」は毎週土曜日更新です。
爽子
なんとまあ。あのフラワー&スネークの●六先生とご一緒に仕事なさってたんですね。
クールなエリコさまに釘付けになりそうです。
人に歴史あり・・・ですね。
ミステリアスです、絆創膏の位置も含めて。
あ、絆創膏は、ケア・リーブがお勧めです。ちょっと高いけど。
それと、殺人事件かと思うような血の海。
わたくしも、飛行機の中で経験しました。
トイレに行きたいのに、おとなりの赤ちゃん連れのおかあさんのひざの上の赤ちゃんがすやすやネンネしていたために、我慢したために、えらいことになってしまいました。
シートまでもれてしまったんです。おおかたはわたしのチノパンが吸着下のですが・・・
降りる前にCAさんに、謝っておりたんですが・・・お掃除大変だったと思います。
機内持ち込み荷物の中に、奇跡的に黒いカーデガンが入ってたので、腰巻して帰宅しました。
そして・・・わたしも、まだ左ひじがいたーーーい。コレ、いつまでかかるんでしょうね。まったく。
引き続きご自愛くださいまし。
さり
復帰おめでとうございます。楽しみにしておりました。
刺激的なメンバーの職場なによりです。興味津々ですね、エリコさん。
ところで、あるんですね、血の海。私もまだうら若き頃、周りはすべて青年から盛年までのインテリメンバー5人と紅一点の私とで歓談し飲んでいるとき、ふと気づけば椅子(ビニール張りでよかった)にも染み出す大出血で、ベージュのミニスカート(化繊素材だったのがせめてもの救い)を洗面所で洗いました。泣きそうでした。飲み会終了後、雨降りでしたが(これも救い)送られるまでもないすぐ近くに宿泊していたホテルに付き添ってくださった紳士は気づいてたからこそ送ってくださったのかどうか未だに不明です。
先頃、その心配もなくなりましたわ。それではまたごきげんよう。
きゃらめる
うはぁ♡エリコさま♡
魅惑のお言葉の数々
ドキドキするワクワクする♪
たまりません( ´艸`)
じじょうくみこ Post author
>>爽子さま
こんにちわ!ご無沙汰しておりました〜(*^_^*)
D鬼六(あ、バレちゃった)先生とのこと、いつも微笑するのみなんですよねえ〜。
妄想が勝手にふくらんでしまいますわ。。。
そして爽子さまも血の海トラブルご経験でしたか。
そのシチュエーションはやむなしって感じがしますねえ。
飛行機は長時間になると、なかなか厳しいものがあります。
肘、大丈夫ですか? 私は既にこのまま冬越えをすることになりそうです(T_T)
じじょうくみこ Post author
>>さりさま
ごきげんよう、コメントありがとうございます〜♪
血の海トラブルですっかり盛り上がっておりますが(笑)
いやーーそのシチュエーションもなかなかハードなものがありますね(^^;)
自分ではどうにもならない分野ですので、本当に心細くなりますよね。
ジェントルマンがいてくださってよかったです。
わたしもそろそろ心配しなくてよくなるかしら。いつかしら。
じじょうくみこ Post author
>>きゃらめるさま
こんにちわーコメントありがとうございます♪
ねー、気になりますよねえ。
わたしもあんな風に堂々と四十路を生きていきたいものでございます。
また名言出たら報告しますm(_ _)m