Posted on by つまみ
自己評価が低すぎるのって、高すぎるのと同じくらい鼻もちならないのかもって・・
山本文緒『なぎさ』(角川書店)より。
著者15年ぶりの長編小説は、恋愛小説の名手、と言われていた頃とはかなり違うような、でもやっぱり芯は変わらないような。
たぶん、両方なのだと思います。
印象的な描写は多々ありますが、久里浜で暮らす、諦めたようで自信なさげなヒロインである主婦、冬乃が発する以下のセリフは特に心にヒットしました。
私、ちょっと前まで自分は何にもできない人間だって思ってたんです。
今でも私なんかにできることはすごく少ないって思いますけど、でも今まで自己評価が低すぎたと思うんです。
何にもできない、働く自信がないってただ嘆いて、できないんだからしょうがないってどこかで開き直ってたところもあったと思います。
自己評価が低すぎるのって、高すぎるのと同じくらい鼻もちならないのかもって最近気が付いたんです。
妹をはじめとした周囲に翻弄され、夫との関係性が変化し、自分自身も少しずつ変わって行く・・その過程が集約された言葉で、ちょっとグッときました。
by月亭つまみ