〈 晴れ 時々 やさぐれ日記 〉 「ああ、善意。ありがたさとメイワクのあいだ」
――— 46歳主婦 サヴァランがつづる 晴れ ときどき やさぐれ日記 ―――
い~や~だ~い~や~だ~。
小4の息子の学校で、「二分の一成人式」という学年行事が近々あります。10歳の節目を、これまでの感謝と将来の夢の発表をもって、保護者とともにお祝いしようという ここ数年続く行事のようです。その準備にあたり、小さい頃の写真と親からのお手紙が必要と、学校からお知らせがありました。
写真ねえ写真。「二分の一成人式」には、クラスのお子さんとその保護者が出席します。写真はプロジェクターか何かで大写しになるようなので、わたしが写りこんでいるものはパス。背景や写り具合に差しさわりがなく、笑いのひとつでもとれそうなものはっと……よこしまな観点で10年分の子どもの写真を見直しました。
ああ、いやなもの(?)を見つけてしまった。子どもの七五三の記念写真。主人の実家の近くの写真館で、5年前に写してもらった家族写真。
5歳のお祝いに、わたしの弟が着た袴を着せることになって、その袴は住まいの山口に実家から届けられ、11月にはそれを着せて神社へお参りに。お正月の帰省の折、主人とわたしのそれぞれの両親を交えてもう一度その袴姿を見てもらうことになり、写真もそのときに撮ることになりました。
主人もお世話になったという写真館は、主人の実家からは目と鼻の先。お正月二日にわたしの両親を主人の家に招き、その写真館で写真撮影、という段取りでしたので、「写真は子どもだけで。ワンカットかツーカットで十分ですから」とお義母さんにはなしをし、写真屋さんにも予約をかねてその旨伝えてもらうようお願いしていました。
さて当日。わたしは朝から掃除やらお台所の下準備やら子どもの着付けやらでてんてこまい。両親到着後、わたしが点てたお抹茶などみんなで飲んで、子どもが着くずれしないうちにと写真館へ徒歩移動。わたしはエプロンをはずしコートを羽織り、ご一行のあとに付いていきました。
お義母さんと写真館の奥さんは顔馴染み。大きくなった息子(主人)のことやら、わたしの紹介やら、袴姿で神妙にしている孫のことやらでお話が盛り上がるうちに、事態はわたしの予期せぬ方向へ。「お子さんだけの写真なんてもったいない!せっかくみなさんお揃いなんですから、みなさんで撮りましょう!」
お義母さんは大喜び。お義母さんと写真館の奥さん、盛り上がりは最高潮。「みんなで撮りましょう。そうしましょう!そうしましょう!」。お義父さん、お義母さん、実家の両親はそれなりにお正月仕様のよそいき姿。主役の子どもは自称サムライ。主人もまあ問題なし。モンダイはわたし。髪もお化粧も着ているものもエプロンを外しただけの日常仕様。
「え~。わたしはちょっと~。こんな恰好ですし~」。事態を切り抜ける言葉は情けないほど見つからず、案の定女性二人は、「そんなことないわ~。コートだけ脱げば、だいじょ~ぶ。だいじょ~ぶよね~」。お二人の温度はどんどん上がり、実母だけはわたしに向け、「しょ~がないわよ」光線。 むーん。
5年前のこのときの写真が、立派な表紙のついた2冊になって、分厚い封筒の中におさまっています。カリーナさんはブログでおっしゃいます。「撮った当座はガッカリだと思った写真でも、5年先10年先の目で見るようにすれば大丈夫。10歳上の目線から見ましょうよ♪」
そうだよな~。車の免許証やパスポートの証明写真、撮った当座は「これは係官以外には見せない写真ざます!」と、自分の記憶にシャッターを下ろしたような写真も、次の更新時なんかに久しぶりに見直すと、「あれ?そんなにワルくなじゃない♪」ということが多々あって。
分厚い表紙の写真館の写真を、5年ぶりに開いてみました。 「あれ?そんなにワルくないじゃない♪」そうつぶやく心づもりで。
い~や~だ~い~や~だ~。
5年たっても、髪はぼさぼさ 目にはクマ。あのとき、自分なりに精一杯の「いい顔」を作ったつもりでしたが、子どもと他の家族が「心からおめでたい」仕様なのに対し、子どもの横で写っているわたしだけが一人、胸中複雑仕様であることが歴然。 もうこればかりは自意識うんぬんのレベルではなく、今さっき外したエプロンが、写真の枠ぎりぎりのすぐそこにある感じ。
おまけに、お義母さんが送ってこられた出来上がりの表装は、〈子どもだけのカットと私たち3人〉〈子どもだけの別のカットと家族全員〉の2冊に仕上げられ、表紙を開けば必ずわたしがそこにいる仕様。きっと、写真屋さんが気をきかせてこの構成にしてくれたはず。この写真を受け取ったとき、またあのお店のカウンターで、お義母さんと奥さんが盛り上がっただろうなー。
むーん。
せめて、子どもだけの一冊があれば、わたしはこれからもその一冊を手に、思えば大きくなったもんだとしみじみ感懐にふけることもできようものを。
このご立派な表紙の中に、わたしのあのときが必ずくっついているなんて。体裁が立派すぎるせいで、子どもの写真だけべりべりっと保護回収することにもものすごい抵抗があり、これはもう10年経とうが20年経とうが、わたしにとって最高に「い~や~だ~」を喚起することは現時点でほぼ確定。
お義母さんにも、写真屋さんにも悪意は微塵もない。あるのは善意のみ。
「良かれと思って」というひとさまの善意ほど、取り扱いの難しいものはない。ありがたさと迷惑のあいだ。このさじ加減こそがまこと深淵なる大人加減。
「善意の発動」は、発動したものがわれ先に( 一方的に ) 満足と快感を得られる条理。←ちょ、ちょっとそこ、待ってくれぃ~。
いや、もしかしたら。もう10年後、20年後には、この写真を平らかな気持ちで眺める日がくるのかしらん。善意を善意として、100%の感謝で受け止められる日が、このワタシに巡ってくるかどうかは。。。時間が経ってみないとわかりません。
わに
あるあるネタ ワタシの場合。。。。。。。
消したい写真 残したくない写真あります
転勤族だった頃。。。。。引っ越しって 夜逃げじゃない限り その お見送りってありますよねぇ。。
ああ
あああ
「当日のゴミ出してあげるからね 心配しないでね」 と 頼もしいママ友
うんじゃ 甘えちゃいます
『片付けが終わったらゴミとして捨てる、夫のももけたスエット上下』で ばたばたばた
『いると邪魔になる』子どもと夫は 早目に よそ行きに着替えて。。。
ワタシ ひとり バタバタバタ
荷物を積んだトラックを送りだし さあて ワタシも着替えるか
・・・・・・・・・・・・・・・・
ない・・・・・・・・・・・・
ないない・・・・・・・・・・私のよそ行きがない
もしかして 引っ越し荷物の中に入れちゃった? 今はトラックの中? どこ走ってる?
こんな時に限って
子ども達のお友だちが大勢見送りに来てくれて
「さあ みんなで記念に写真とろうね あっ waniさんも一緒に」
なんて いう 善意のかたまりのひとことの ママ友さん
ああ
よそ行き姿の我が子と ももけたスエット上下のワタシ そしてお友だちの集合写真
きっと
善意のかたまりのママ友さんが
見送りに来てくれた友達の枚数だけ焼き増しして ばら撒いたんだろうな。。。
『○○君との思い出 お金はいりません』 なんていう付箋をつけて
ああ
新しい住所教えたのに ワタシの元には その写真届かなかった
って事は。。。。。。。
よっぽど ひどかったに 違いないっ!! 引っ越し疲れのももけたスエット姿のワタシ。。。
あああ の あるあるネタでした。。。。。
ちなみに
新幹線で移動中 子どもが ワタシのスエットに 吐いたので
泊まったホテルのブティックで 服を購入
新居には よそ行きに 入れましたとさ。。。ちゃんちゃん
サヴァラン Post author
わにさま。
ああ、いかん。。。泣ける。わかる。わかりすぎて泣ける。。。消したい写真。残したくない写真。ああ それなのに。。。
うちも転勤族なので (と言いながらなぜかこの地に10年)、遠距離の引っ越しのあの命をすり減らす感じ、そして「お見送り」のいろんな意味のかたじけなさ、思い出すと胃酸がジワジワと…。10年間隔があくと、あれをもう忘れちゃおうという強制的忘却回路が縦横に張り巡らされ、それでもこの季節、パンダやら黒いネコやらのトラックを見ると不意に襲われる胸の苦しさ。がんばって。がんばって乗り切って。見知らぬ奥さん。
いやまあそれにしても。引っ越しのときほど我がアタマのメモリ不足を痛感するときはございません。容量オーバー。思考のハンドルロック。主人、子ども、荷物、目に見える対象には注意が及ぶけれど、意識から抜け落ちるのは我が身のこと。昨年、「見送りはお互いのためにしないぜ」と送り出した転勤族仲間のママ友は、「着いたよ、聞いてよ」と新幹線につかっけで乗った悲哀を怒涛のごとく語りましたっけ。「今度こそ、今度こそ 白い手袋を振る女優になるってがんばったオチがこれよよよよ。。。」
わにさん。ももけたスエット。「ももけた」って知らなかったけど、「ももける」って目に浮かぶから泣ける。善意の記念写真、わたしはパスです!って言えない場面設定に泣ける。手も心も油分が抜けきってるのに笑わないといけない立場が泣ける。善意が増殖させた記念写真と善意で封印されたわにさん用の写真、泣ける。過去の取り返せない場所に確かに残っているのに、自分の未来には届くことがない写真って、自分の目で一度たりとも見ていないくせにその存在が記憶からなかなか消えない。泣ける。泣ける。まだ知る人のないまっさらな新居にまっさらなよそ行きでご到着のいきさつも泣ける。。。
引っ越しも 写真も 実は相当罪作りですね。わたしの小ネタなんかより よっぽどよいもの読ませていただきました。うれしいです。ありがとうございます。泣けるけど胃の腑があたたまるこの感覚。。。ああ それにしても、YUKKEさんのところに今すぐ修行に行きたいかも。