ゾロメ日記㊺ G.W終了記念「うっとうしい腰痛VS楽しい読書」対決劇場
◆5月某日
突如腰痛に見舞われ、ショボさ満載で終了した2016年の私のG.W。発症前日に、腰痛持ちの友人に会い、突然の激痛で全身が固まった話を聞いて恐れをなしたが、まさか「明日は我が身」を地で行くことになろうとは(私のは軽度だったけれども)。一寸先は闇だ。
中高年になるといろいろあるなあ。みんなもあるのだろうな。
そんなわけで、G.Wは、最低限の家事をする以外は動かず、読書三昧だった。でも、読んだ本はどれも面白く、その時間はシアワセであった。振り返ると、腰痛と読書が名勝負を演じた今年のG.W。腰痛のことはとっとと忘れたいが、読書のことは覚えていたいので、ここにまとめて記録を残させてもらうことにした。
★『誰がために鐘を鳴らす』
わが偏愛作家の山本幸久氏の最新作。どの作品も読みやすく非重厚だが、安直や安易ではない。これも。
廃校間近の高校で見つかったハンドベル一式。そこにたまたま居合わせた、キャラも環境も気質も全く違う5人の男子高校生が、それぞれの(ほぼ)よこしまな理由から、この楽器を一緒に奏でることになる。おバカで熱くて瑞々しい日々は麗しい。
面白かった。よかった。あの、ワタクシ絶賛の名作『床屋さんへちょっと』と双璧をなすかも。これもまた佳作である『店長がいっぱい』の舞台、他人丼専門外食チェーン店の「友々家(ゆうゆうや)」&この会社の美女・霧賀久仁子も登場し、お得な気持ちにもなった。
心身が風通しと青春の甘酸っぱさを欲しているときにオススメ。
★『スキン・コレクター』
四肢麻痺の科学捜査官リンカーン・ライム シリーズ第11作。「このミステリーがすごい!」2016の海外部門第1位。同じシリーズでは、2008年の『ウォッチメイカー』以来の1位で、しかも今回、序盤でこのウォッチメイカーが獄中死したという情報ももたらされ、長年の読者としてはしょっぱなから「むむむっ」なのであった。
しかしこのシリーズには、疑いまくっても、構えても、裏を読んだつもりになっても、まんまと騙されるわけである。1位になるだけあって、確かに今回はドンデン返しの手口やスピード感に往年のキレが戻っているかも。終盤は、相変わらず睡眠不足覚悟の一気読みだった。
日常を忘れて物語に身を委ねたいときにオススメ。
★『小泉今日子書評集』
世は空前の小泉今日子礼賛ブームなのではないか。「小泉今日子ブーム」というより「小泉今日子礼賛ブーム」。
小泉今日子は自分の出し方が絶妙だ。過剰でもないし、出し惜しみもしない感じ。計算高さも漂わない。そして、言動の基準が、戦略じゃなく羞恥心っぽい。まっとうな野心やまっとうな社会通念より、まっとうな羞恥心を感じさせる人の方が信用できる気がする。だから彼女は嫌われないのではないか。
「常に自分が位置する世代のオピニオンリーダー的ポジションにいる」彼女を快く思わない人もいるだろうけれど、この圧倒的ブームの下では不利だ。引っかかる方が狭量に思える。そこに、満を持して、自らの退路を断って真正面から挑んだような今回の書評集の発売である。なんて磐石なんだ。
書評は読売新聞連載中に読んでいた。彼女の文章で何冊も「読もう」と思い読んだ。たとえば『均ちゃんの失踪』 。たとえば『かもめの日』 。今回、後日談の振り返りの文章も含めて、まとめて読めてうれしい。
ちなみに今の礼賛ブーム、仕掛け人は、ネットやテレビではなく、紙媒体っぽい。もっと言えば、小泉今日子を実際に知っている編集者とか業界関係者が、衰退の一途と言われる出版物の活路を小泉今日子に委ねているようにも映る。・・邪推?
そんななか、話題の『MEKURU』[みんなのキョンキョン 誰も知らない小泉今日子]は、小泉ファンにはたまらないだろう・・けれど、製作者を含めて、関わる人全員が「キョンキョンはかっこいい」「小泉さんはすてき」一点(二点?)突破なのが落ち着かない。
雑誌の特集は概ねそういうものなのかもしれないが、2008年発売の[小泉今日子、気高く美しい40代の生き方]という特集タイトルの『Switch』は、特集タイトルこそ『MEKURU』よりトホホだったけれど、リリー・フランキーとの対談が、他の50ページの、みんながいっせいに同じ方を見ているという気色悪さをかなり払拭させていた気がする。
リリーの語る小泉今日子を引用。
【すごく周りに気を遣う人なんだけど、その気の遣い方とか、人に対する優しさみたいな部分が、ものすごく気が利く小学生を思わせるんですよね。オドオドしていて、「気を遣わなくちゃ」といつも思ってる人。で、最終的に限界点がきたら、ポキッと折れる小学生。(中略)「子供だ、この人」っていう。】
これを、本人を前にして言っているところにリリーの姑息さを感じたりするわけだが。
『小泉今日子書評集』は、雑音(私のこの文章も含む)をものともしないレベルで小泉今日子の佇まいや文章が好きで、純粋に「なにか面白い本がないかなあ」とお探しの方にオススメ。
by月亭つまみ
まゆぽさんとの掛け合いブログです。→→「チチカカ湖でひと泳ぎ」
★毎月第三木曜日は、はらぷさんの「なんかすごい。」です。
はしーば
腰痛お見舞い申し上げます。
酷くなりませんよう、早く快復されますよう、お祈りしております。
つまみ Post author
はしーばさん、おはようございます。
あたたかいお言葉、ありがとうございます。
元気が湧きます。