プレオープン:シリトリアって何モノ?!
記憶はほんとに不思議です。
「時間」という篩(ふるい)にかけられて、
残るもの、消えていってしまうもの。
どこにその差があるんだろう。
大きな事件やそれにまつわる記憶は残ります。
そうかと言って、「どうして覚えているんだろう」と
思うようなささいな出来事やふとした光景も
意外にしっかり残っていたりします。
せっかく残ったそういう小さな記憶を大事にしたい。
普通の人の普通の人生の中に起きたさまざまな出来事を
拾い上げて、ほこりを払って、ちょっときれいな箱に入れて
たくさんの人に見てもらいたい。
少し前からロゴのバナーを貼ってていただいていた
わたしたちの会社・シリトリアは
「キキノコ・プロジェクト」を立ち上げました。
文字通り「聞いて・残す」仕事です。
来月スタートする『あの頃アーカイブ』では、
シリトリアが仕事の中で出会った方々の
記憶のほんのひとかけらを
わたしたちの宝石箱から取り出して手のひらに乗せ、
「見て、見て、きれいでしょ?」と自慢しようと思っています。
…………………… ♪
さて、その前に、「有限会社シリトリア」のことを
聞いていただいてよろしいでしょうか。無名な会社の25年の歴史です。
シリトリアは、30代前半の、仕事で知り合った女子4人で
1991年に作りました(歴史だけはたっぷりある)。
歳の順でわたし、まゆぽが社長になりました。
当時、4人はそれぞれ別の仕事を持っていましたが、
何かを一緒にやってみたかったのです。
バブルの残り火がまだ燻っていた時代、
女性雑誌の付録の冊子を編集したり、
日用雑貨品のネーミングを提案したり、
数年間はなんとなく仕事が舞い込んできました。
その後、シリトリアは長い冬眠に入ります。
メンバーはそれぞれの結婚、出産、介護、仕事に忙しく、
会社を存続させるための法人都民税7万円を払うだけの年が続きました。
みんな50代になったある日、社長としてわたしは提案しました。
このまま毎年7万円を払い続けてももったいない
(議員の海外視察や度々行われる都知事選で使われるだけ!)。
解散しよう。
解散のためにも手続きと費用が必要です。それも調べての提案でした。
ところが、メンバー2人から反対の声が上がりました。
会社つくるときに、誰も雇ってくれないおばちゃんになったときのための
セーフティーネットにしようという話をしたじゃない。
今やみんなすっかりおばちゃんになり、これからの仕事はまじ心配でしょ。
このときのために、今まで7万円を払ってきたんじゃない。
今こそシリトリアだよ! ここで潰してどうすんのっ!!
ポリシーのない社長はすぐ意見を変えます。
そ、そーだよね、
札幌に嫁に行き、音信不通になっているMちゃんのためにも
シリトリアを立派に育てなくちゃね。
2011年のことでした。
それから、シリトリアは再び活動を始めました。
昨年度の決算で、ひっさしぶりの黒字を出しました。
黒字のときの決算書類の書き方がわからないわたしたち、
適当に書いて申告しました。
先日、税務署さまから電話をいただきました。どっき〜ん。
「失礼ですが、慣れない初黒字での納税で、
かなりとまどわれたようですね(つまりかなり間違っている)」と。
納め忘れの税金もあるけれど、還付する税金もあるので
一度税務署に来て、説明を受けて修正してくださいとのことでした。
もちろん「喜んでうかがいます!」と答えましたとも。
そんな吹けば(吹かなくても)飛ぶような小さな会社です。
でも、普通の人に普通の出来事を話していただき、
そのときは『徹子の部屋』のゲストになったような気分になってもらって、
聞いたお話は大事に大事に残して、伝えたい人に伝えます。
この仕事は「自分たちのやりたいこと」
「ちょっとは世の中のためになりそうなこと」
「シリトリアのメンバーで楽しみながらできること」
「ちょこっとくらいは儲かること」という
自分たちの企業理念(かしら?)の実践となっています。
長々とお付き合いいただき、ありがとうございました。
次回からは、集めてきたわたしたちのアーカイブから
普通の人のちょっとしたお話をご紹介してまいりますので、
どうかどうかよろしくお願いいたします。
- 写真/佐藤穂高(広島在住のプロカメラマンです)
- 有限会社シリトリアのHPはこちらから
★月亭つまみとまゆぽのブログ→「チチカカ湖でひと泳ぎ」
★ついでにまゆぽの参加している読書会のブログ→「おもしろ本棚」よりみち編
つまみ
「あの頃アーカイブ」のプレオープン、おめでとうございます!
まゆぽさんと知り合ってからもう20年近くになりますが、シリトリアの存在も経緯もほとんど知らなくて、とても興味深く読みました。
>会社つくるときに、誰も雇ってくれないおばちゃんになったときのための
>セーフティーネットにしようという話をしたじゃない。
いいわー、これ。ステキ。
津村記久子さん言うところの「明日の自分を接待する」ならぬ、「明日の自分を救済する」精神って、これからの起業の、ひとつのモデルケースになるんじゃないでしょうか。
っていうか、人出が必要になったら私のことも思い出してね(要するに就活コメント!?)。
まゆぽ Post author
つまみさん、コメントありがとーう。
こういうのやってみたいなあって最初に相談してから、
数ヶ月、いつもいつも親身に相談に乗っていただき、
本当にありがとうございました。
つまみさんはもちろん、オバフォーの皆さんには感謝感謝です。
それにしても、知り合って20年も経つの?!
どひゃ〜だけど、いろいろ一緒に楽しい事ができたよね。
これからもよろしく、です。
シリトリアは先を読んでたところ、手前みそだけど、すごいよね!
もっと人出(入?)が増えて、人手がいるようになったら、うれしいわあ。
その際は、ぜひぜひご一緒に!
はらぷ
まゆぽさん、こんにちは。
「あの頃アーカイブ」、わーい待ってました!
シリトリアの成り立ち、セーフティーネットじぶんたちで作っちゃえ!って、軽やかでたくましくていいなあ。
そして、「再起動しようよ」ってなったところがまたかっこいい。
私は、会社の存続に法人都民税が7万円かかるということも知りませんでした。
じぶんが会社を作るってことだって、そうだよ、あってぜんぜんおかしくない!と急に自由を手に入れた気分です。(作ってないのに笑)
会社だから、ちゃんと「ちょっと儲かる」が目標に入ってるとこもいいー。
そういえば、つまみさんのコメントを借りてしまうと、このov40だって、「明日の自分を救済する」に通じるような気がします。
「普通の人の普通の人生の中に起きたさまざまな出来事」の記録、楽しみにしてます。
「なんで俺こんな話しちゃったんだっけ?」っていうようなこともあるかも、とか!わくわく!
まゆぽ Post author
はらぷさ〜ん、こんにちは!
コメントうれしくて、すぐにお返事するのがもったいなくて
2日ほどあたためつつ、何回も読んでにんまりしてました(気持ち悪いヤツ)。
会社って、それほど高いハードルではないです。
専門家の手を借りなくても、なんとかなります。
はらぷさんも作って作って! 株式会社栄夫ブックスとかいかがでしょう?
みんなで好きなことして、「ちょっとずつ儲ける」って楽しいよ、絶対!
頃アーへの応援もありがとうございます。
そんなすごい話はないのですが、地味にこつことちまちまがんばりまーす。