アパホテルの折り鶴について。
アパホテルというホテルチェーンがある。世界的に有名なマーケティング企業に頼んで、名前を付け、世界戦略を練りに練ったという話がどこかに書いてあった。
ときどき、泊まるのだがそこで目に付くのは客室に置いてある小さな折り鶴である。この折り鶴は、部屋に備え付けてあるマンガ『アパホテル物語』(アパホテルがどのように成長してきたかを伝えるマンガ。やたらと社長夫婦が美化されている)によると、かつて奇抜な衣装で有名なアパの女社長がお客様をもてなす気持ちを表すために折り始めたものだと言う。
お客様へのもてなしの気持ちを表すために、女社長自らが一羽ずつ鶴を折り、客室に置いていく。そのうち、それを見ていた従業員たちが進んで一緒に折り始める。
そんな美しい話も、鶴があって当然という状況になるととたんに色あせてしまい、実際に置いてある折り鶴もどう見たって何度か使い回しをしているのが明白なくらいに薄っらと毛羽だっていたりする。
ただ、おもてなしの気持ちが形骸化しているからと言って、それを止めるべきだとは思わない。むしろ、できる限り続けてもらっていれば、何人かの客は素直に感動するかもしれないし、僕のようにひねくれた客でも、いつか心に深い傷を負ってアパホテルの狭い客室に倒れ込んだとき、ふと目に留まった折り鶴に涙することだってあるかもしれない。
気持ちをかたちにするのは本当に難しい。時には「これだったら、やらないほうがマシなんじゃないか」と思うことも正直あったりはするのだが、それでも、やっぱりかたちにしなければわからない。
どんなに誤解されても、どんなに勘違いされても、どんなに下世話でも、感謝をかたちや言葉にしないよりは、したほうがいいのだと思う。
そんなことを少し毛羽だったアパホテルの折り鶴を見ながら思うのだった。
植松さんとデザイナーのヤブウチさんがラインスタンプを作りました。
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植松眞人(うえまつまさと) 1962年生まれ。A型さそり座。 兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。 現在、神楽坂にあるオフィス★イサナのクリエイティブディレクター、東京・大阪のビジュアルアーツ専門学校で非常勤講師。ヨメと娘と息子と猫のマロンと東京の千駄木で暮らしてます。
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