隣の妊婦が暴力的な場合。
おしゃれなカフェなのである。
一人でおしゃれなカフェには入りにくいのだけれども、私はほとほと疲れていたのである。疲れ過ぎて、今すぐにでも倒れ込みたいほどだったのである。
なので、あいにく、そこそこ混んでいるカフェにお一人様のおっさんご入店なのである。たまたま禁煙席で空いているのは一席のみ。おしゃれが苦手で狭いのが苦手な私ではあるけれども、仕方なくその席に座ったのである。
お隣は茶髪のお姉ちゃんだった。あちらこちらに裂け目のあるダメージジーンズをはいている。そして、電卓片手にカタカタやっている。なんの計算をしているのだろうと、テーブルの上を見ると、結婚式場の見積書であった。
あちらこちらの数字を電卓に移し、あれやこれやと逡巡して、もう一度ボールペンで、見積書に数字を書き込む。そうやって、茶髪の姉ちゃんは一心不乱に電卓を叩いているのであった。
結婚式までに、その茶髪は黒髪に戻すのかね、と聞きたいのを押さえつつ、興味津々でお姉ちゃんを眺めていると、腰のあたりにピンクの小さなマークが揺れている。「赤ちゃんがいます」と書いてある。なんと、妊婦さんであった。
妊婦なのに、そんな穴あきジーンズでいいのかね、とよくよく見ると、お姉さん、穴あきジーンズの下に割に派手な模様のタイツのようなものをはいている。さすがに冷えないように気をつかっている模様。しかし、それなのに、なんだかお姉さん、凶暴なのです。
店員さんが注文を間違えると、微妙に巻き舌で「こんなの頼んでねえし」と毒づくし、時々、「ちっ」と舌打ちもする。怖いなあ。この妊婦。野生の動物は妊娠すると気が立つというけれども、それとはどうも種類の違ういらだちのように思える。
やっぱりあれだろうか、見積もりの金額が気に入らなかったのだろうか。それ故の巻き舌でそれゆえの舌打ちなのだろうか。
ああ、できればおなかに赤ちゃんがいる間だけでも、心穏やかに過ごしてほしい。私は心から願うのだった。隣の席から念をとばすのだった。「茶髪の妊婦よ、穏やかに。幸せが逃げていくぜ」と念をとばすのだった。
その瞬間だった。茶髪妊婦が「いやん、うれしい!」と小さな声で叫んだのだ。私の念が通じたわけではない。お姉ちゃん、電卓を叩いてそこに現れた数字を見た瞬間に「うれしい」と叫んだのだ。
そうか、やっと納得のいく数字が出たのか。何人客を削ったのか。どの料理を減らしたのか知らないが、とにもかくにも、納得のいく数字が出た。
めでたい。これでおなかの赤ちゃんもしばらくは心穏やかに過ごすことができるはずだ。コングラッチュレーション!ハッピー・ウエディング!
植松さんとデザイナーのヤブウチさんがラインスタンプを作りました。
ネコのマロンとは?→★
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クリエイターズスタンプのところで、検索した方がはやいかも。
そして、こちらが「ネコのマロン、参院選に立つ。」のサイト
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植松眞人(うえまつまさと) 1962年生まれ。A型さそり座。 兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。 現在、神楽坂にあるオフィス★イサナのクリエイティブディレクター、東京・大阪のビジュアルアーツ専門学校で非常勤講師。ヨメと娘と息子と猫のマロンと東京の千駄木で暮らしてます。
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パプリカ
植松さん、こんにちは。
ワハハ…
涙流しながら笑いました。
最後のオチで、植松さんの
疲労はとれましたでしょうか?
🎵ここに幸あり コスパかな🎶
ハッピー披露宴
茶髪プレママに幸あれ💞
uematsu Post author
パプリカさん
いやもう、ぼくは彼女が幸せならばそれで(笑)。
ハッピーウェディング!
はしーば
植松さんてばなんて優しいんでしょう。
そういうママは、逞しく子どもと一緒に成長していくパターン、に期待しようではないですか。
子どもが産まれてからの生活に、コスト感覚は最重要科目❗️
uematsu Post author
はしーばさん
やっぱりコスト感は大切ですね。
でも、あのママさん、
かなりたくましい子供を育てそうな気がします