11月22日はカレー記念日

カレー記念日

落ちてゆく 枯葉のごとし 抜け毛かな

11月22日はカレー記念日

Jane

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カレー記念日とは?

加齢を実感したら、それはカレー記念日。
抗ったり笑い飛ばしたりしながら、毎日華麗に加齢していきましょう。

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50代、男のメガネは

カニ、好きなのである。

 

僕がまだ二十代の頃、谷川俊太郎さんが『日本語のカタログ』という詩集を出した。その中の一編に、いろんな職業の人たちになりきって詩を書く、という詩があったように記憶している。

 

確か、その一つに漁師が書いているというものがあり、「カニを捕るのは得意なんだけどさ、カニって言う字が書けないんだよな。ケニになったりしてしまう。だけど、カニっていう漢字は書けないけど、おいら母ちゃんのこと、好きだよ」みたいな詩だったように思う。思うのだが、いま手元に詩集がなく、本当にうろ覚えなので、まったく自信がない。もしかしたら、そんな詩すら存在しないかも知れないけれど、そんな詩があったように記憶している。

 

以来、僕はカニを目の前にしたときに、『蟹』という漢字を思い浮かべてしまうのである。もし、谷川俊太郎さんのその詩がなかったとしたら、幻の詩に翻弄されているだけなのだけれど。

 

それにしても、蟹という漢字はどうして、あんな字なのだろう。解る虫と書いて、蟹。確かに、あのややこしそうな形状は、何かを解っているのだ、と言われたら信じてしまいそうなくらいに奥深い形状である。

 

というわけで、今年もカニの季節が到来したのである。と言っても、僕はそんなにぜいたく者ではないので、カニすきをむしゃむしゃ食べたいというわけではない。あの「こうばこ」と呼ばれる松葉ガニのメスが大好きなのである。

 

産地によって、いろんな呼び名があるらしいけれど、僕が子どもの頃、僕が住んでいた地域では確か「セコガニ」と呼んでいたと思う。東のほうでは「こうばこ」と呼ぶらしい。

 

この「こうばこ」がうまい。身体全体はオスとは比べものにならないくらいに小さい。だから、脚を一本一本鍋にくぐらせてカニすきをする、という食べ方には向いていないと思う。何杯かをまとめて茹でて、ハラの卵を食べ、甲羅を開けてミソをすする。そして、脚なんぞはガシガシとしがんでエキスをむさぼるのである。しかも、一杯じゃ少ないので、それを何杯か繰り返す。腹がふくれるという感覚はあまりなく、濃厚なおやつを食べているといった案配なのである。

 

そんなカニを食べると、「もう、今年もわずかだなあ」と気持ちが引き締まる。年明けに、あんなにも決意していたあの仕事はちゃんとできただろうか。今年中にやり遂げると言っていた、あんなことやこんなことは成し遂げただろうか。カニの脚を二本ほどまとめてガシガシしがみつつ、ふとそんなことを思うのである。

 

そして、さらにふいに思い出すのが、これまでに知り合った人たちの中で、「カニが苦手なんです」と言っていたあんな顔やこんな顔だ。いま一緒に仕事をしているデザイナーのヤブウチくんは「カニは嫌いじゃないんですが、ミソは苦手です」ときたもんだ。「ミソこそカニだ!」と僕が豪語すると「カニ好きはみんなそう言いますね。でもなあ、あの濃い味がどうにもこうにも」と、うんざりしたように答えるのである。

 

カニが苦手だというほとんどの人が、「カニミソが苦手」という。こちとら、瓶詰めのカニミソなめながらご飯を食べられるのであるが、正直、あの混沌の味の良さをどう表現していいのかわからずに、「そうか、残念だなあ。カニの甲羅の中には小さな宇宙があって、その宇宙のなかにこそ、人の喜びや悲しみがあるのだ」などと、得体の知れない戯言を放ってみたりするのである。

 

そして、カニミソ苦手派はこうも言うのである。「ミソが苦手だというと、カニ好きの人が悲しそうな、哀れそうな顔をするのが嫌なんです」と。それはすまなかったと僕は思う。しかし、安心してくれ。少なくとも僕は、カニミソ苦手派とカニを食べることが嫌いではない。なんなら、端正な味を醸す脚など、カニミソ嫌い派にくれてやる。その代わり、カニミソをくれれば良い。うまいカニミソ一杯分なら、脚を丸ごとくれてやってもかまわない。

 

そこまで、僕のカニミソ愛は果てなく広がっていくのである。なぜ、そこまで僕はカニが、しかも、ミソ近辺が好きなのだろう。わからない。わからないけれど、カニは「解る虫」と書いて、そこに鎮座ましましているのである。谷川俊太郎さんの詩に出てきた漁師のように「蟹」という字が書けなくても、きっとカニのうまさはわかる。あ、そうか。それで、解る虫なのか! いや、う~ん、違う気がする。

 


 

植松さんとデザイナーのヤブウチさんがラインスタンプを作りました。
ネコのマロンとは?→

「ネコのマロン」販売サイト 
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植松眞人(うえまつまさと) 1962年生まれ。A型さそり座。 兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。 現在、神楽坂にあるオフィス★イサナのクリエイティブディレクター、東京・大阪のビジュアルアーツ専門学校で非常勤講師。ヨメと娘と息子と猫のマロンと東京の千駄木で暮らしてます。

★これまでの植松さんの記事は、こちらからどうぞ。

 


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コメント、ありがとー!

  • アバター画像

    カミュエラ

    こんにちは。
    この記事を読んで「蟹」という漢字が、自分にとっては読めても書けない字だということに気が付きました。恥ずかしー。これからは間違いなく書けそうです。ありがとうございます。(笑)

    私も、カニミソをくれるなら脚など全部くれてやる派です。

  • アバター画像

    uematsu Post author

    カミュエラさん
    かにみそ、おいしいですよね。
    昨日、鳥取に行った時、お土産に
    「蟹味噌バーニャカウダ」を買いました。
    まだ、食べてないんですが、
    見つけた瞬間に「おおっ!」と声を上げてしまいました(笑)。

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