ゾロメ日記 NO.80 今年の締めは介護のはなし
◆12月某日 二ヶ月で三度
要介護3の夫の母は、現在ふたつの通所施設(デイサービスとデイケア)に通っている。施設への送迎は先方がしてくれるのだが、義母は、迎車をわずかな時間でも待たせることに極度の罪悪感を持つ。たまに、車が予定時刻より早く来ることがあるが、そのときのあわてっぷりったらない。
家族が「危ないから落ち着いて」と声を大にして言っても、施設の職員が「こっちが早過ぎたんですからゆっくりでいいですよ」となだめてくれても、ダメ。性格なのだ。よって、車到着予定時刻の、遅くても5分前には、靴を履き終え、玄関の上がり框のところに座ってスタンバっている。
その朝も、いつものルーティンで、義母が上がり框に腰を下ろしているのを見届けた私は、寒いのでいったん玄関の扉を閉め、家の前の掃き掃除を始めた。するとまもなく、玄関の中からドスンという音と義母の悲鳴が聞こえた。
うわあぁぁ((((;゚Д゚)))) イヤな予感しかしない(じじょくみさんのパクリ表現)
玄関前に戻ると、閉まったドアの半透明のガラス越しに、横たわる義母の姿が見えて血の気が引く。焦りつつも恐る恐る引き戸を開けると、義母が「手すりをつかみそこねて転んじゃった。なんだろうね」と言った、わりと元気な声で。
遡ること2~3分前、私がいったん扉を閉めた後、手袋を忘れたことに気づいた義母は部屋に取りに戻った。そして再び上がり框に座ろうとして手すりをつかみそこね、そのまま頭から落下したらしい。頭から!?…状況を知って再び血の気が引く。
義母の度重なる転倒の直接の原因はいつも「つかみそこない」だが、そもそも、自分の身体状況を正確に把握できていないことが大きいと思う。
義母は今のところ認知症の徴候はないものの、実際より自分は「動ける」「つかめる」と思ってしまいがちなのだ。自分の足の状態は知っているが、自分のイメージは元気な頃のまま。現実が上書き更新されていない。そして、頑張ればいずれ本来(下手すりゃ若い頃)の自分に戻れると思っている。
手すりをつかむことがおざなりだったり、手すりのないところに行ったり(家族が見ていないときに隣室に行って、小引き出し、座布団などを蹴りながら運んでくるとい暴挙に出た実績あり)、モノを持ったまま歩いてしまうのは、自分の脳内イメージの未更新ゆえなのだと思う。
ままならない自分の状況に甘んじず、現況を「一時的なもの」と認識するのはいい面もある。施設でのリハビリは誰より積極的らしいし、それによって本格的な寝たきりを何年も回避し続けているのは間違いない。が、退院二ヶ月で三度目の転倒である。正直、周囲は気が休まらない。
病院に急行して頭部のCTを撮ってもらった。結果は異常なし。首から下の部位にもさしあたって問題はなく、外傷はたんこぶだけで、本人はデイサービスを休んだことを非常に残念がっていた。驚異だ。
◆12月某日 はい、お腹の皮が痛いんです
高校時代を過ごした会津はけっこうな豪雪地帯だが、ここ十年ぐらいは雪は少なめと聞いていた。が、この冬は爆弾低気圧とやらのせいですごいらしい。
久しぶりに高校時代の友人KKに「雪、大丈夫?」メールした。すると「雪の量より、とにかく今年は寒い!」という返事。最高気温がマイナス3℃だとか。ひぇ~!
日本にはもっと寒い地方があるわけだが、自分もかつてそこで暮らしていたことを思うと感慨深い。自分の部屋にストーブなんてなかったなあと思うと背筋が凍るというものだ。
KKは、少し離れたところに一人暮らしの認知症気味のお母さんがいて、何年も頻繁に行き来し、大変な思いをしていた。お母さんについ声を荒げてしまうことが多く、どうしてこの人が自分の母親なんだろうと絶望感を抱くこともたびたびだったそうだ。
そのあたりのことは漏れ聞き及んでいたが、しばらく前にお母さんがグループホームに入所したことは今回初耳だった。
「最初は、入所したらどんなにスッキリするだろうと思っていたけれど、入所後に体調を崩して認知症が進んだこともあって、罪悪感でいっぱいになり落ち込んだ。周りの人のおかげでやっと復活してきたところ」だそうだ。
KKと私は、高校時代、バカな話をして、教室の端っこや帰り道、しょっちゅう笑いころげていた。休み時間、クラスの男子に「なにがそんなにおがしいんだ?」と真剣に聞かれたことがある。授業中はふたりとも極力存在を消していたので、ギャップが目立ったのかもしれない。
帰り道、笑い過ぎて路上にうずくまってしまい、通りすがりのおばあさんに「なんだべ?具合が悪いのがよ?」と声をかけられたこともある。はい、お腹の皮が痛いんです。
KKの結婚の際の友人代表のスピーチで、そのエピソードを披露したところ、KKが号泣し、それを見てもらい泣きした(因果応報?)。
なにができるわけじゃないけど、もっと連絡して、絶望感や罪悪感を聞いたり、高校時代のバカ大笑いの延長戦をやればよかったと思った。これからやろう。
追伸;昨日今日で義母にあらたな懸念が加わりました。血圧の不安定。上が、160のときもあれば、100に満たないときも。差が大きすぎるだろ!本人はいたって元気ですが。この記事が更新される頃は、また病院に行っているかもしれませぬ。
みなさん、よいお年を。私もだあ。
by月亭つまみ
【木曜日のこの枠のラインナップ】
第1木曜日 まゆぽさんの【あの頃アーカイブ】
第2木曜日 つまみの【帰って来たゾロメ女の逆襲 月刊 切実本屋】
第3木曜日 はらぷさんの【なんかすごい。】
第4、5木曜日 つまみの【帰って来たゾロメ女の逆襲 ゾロメ日記】
まゆぽさんとの掛け合いブログです。→→「チチカカ湖でひと泳ぎ」