◆◇やっかみかもしれませんが…◆◇ 第5回 断末魔の叫び!?
よんどころない事情で、生活の場所を移してもうすぐひと月になります。
とっとと避難は決めたものの、現実の展開が早すぎて仮想現実を追い越してしまったのか、実感が湧かず、なんだか民泊を延長し続けているような地に足が着かない日々でした。でもやっと、ようやっと、少し「しばらくはここで暮らすのだ」という、現実直視というか、諦観というか、腹を括った心持ちになっています。
とはいえ、家の車でさしあたっての家財道具を運搬しただけで、たんすや本棚や食器棚はまったく持ってきていない新生活なので「仮の宿」感は否めません。洋服は備えつけのポールにスペース分だけ吊るし、下着やTシャツはプラスチックケース、本はほとんど持って来ず(活字に対する全く飢餓感がない。これってどうなの?)、食器はシンクの棚とカラーボックスです。
長いこと、シンプルライフ、モノを持たない、こざっぱりした暮らしに憧れてきました。断捨離関係や、金子由紀子さんの本も読み、着ていない洋服や、とりあえずで調達したモノは処分し、ひとつ買ったらひとつ減らす覚悟で、床にモノを置かず、景品は極力受け取らず、百均に近寄らない生活を心がけよう、と思っていました。
でも、いっかなモノが減らない、なんでだろ、能力がないのか、いずれにしても無理みたい、と玉砕感すら覚えた矢先、図らずも、シンプルライフを実践する必要に迫られる生活を始めることになったのでした。
実際に始めてみると、シンプルライフは心地よいです。どこに何があるかわかり、掃除はラク。洋服が少なくても、こまめに洗濯していれば着るものに困らないし、悩むこともない。今まで、いかに、どうでもいい服からどうでもいいひとつをどうでもよくない時間をかけてチョイスしていたか思い知らされています。迷った挙句がこれかよ、もしばしばでした。
いい機会なのかもしれません。いや、間違いなくいい機会です。今まで数十年、やろうとしてもできなかったミニマムな生活をやらざるを得ないというこの状況は。
実は、自宅に戻る気持ちがもうほぼなくなっているので、この仮住まいにしても、どこかに新たな住まいを見つけるにしても、生活の縮小化は必須なのです。
とはいえ、自宅には、大ぶりと小ぶりの食器棚が各1、4つの本棚、箪笥3竿(義父母のも含む)、引き出し式整理箪笥2個、サイドボード…そして、押入れにみっちり入った寝具類、どうでもいい安物の大量の服、もらった景品、二度と読むことがないであろう無尽蔵の本やパンフレットが待機していて、戻るたびに「オラオラ、あたしらをどうしてくれるんだっつうんだよ!?」とプレッシャーをかけてきます。
大半は捨てるしかありません。そして今、そのことにけっこうな寂寥感を覚えています。
それは、単なるノスタルジーであり、モノの擬人化であり、なくすことを考えて初めて知る惜しさでもあるのですが、それだけではない気もするのです。
能率や効率を優先する生活には邪魔でしかないモノでも、いかにシンプルライフが一見心地よさげでも、生活に、可笑しみや滋味や慰めや安心感や堕落や開き直りや無駄や無法や無節操も必要だ、なんなら、しばしばそっちを優先したい、と考える人間(私)にとっては、やっぱり無駄なものも大切な品々なのです。
そういえば、木皿泉さんのドラマに出てくる家は雑然としていて居心地が良さそう。
…そう言いつつ、私はこれからは、モノを極力減らすという、身の丈に合わない、イバラの道を行くしかないんですけどね。わかっているからこその断末魔の叫びなのでした。今後の肝は、必要か不要かのジャッジではなく、不要とわかっているものの取捨選択の基準をどこに置くか、かなあ。
んなこと言ってたら、いつまでも減らせないんですけどね。
by月亭つまみ
◆木曜日のこの枠のラインナップ
第1木曜日 まゆぽさんの【あの頃アーカイブ】
第2木曜日 つまみの【帰って来たゾロメ女の逆襲 月刊 切実本屋】
第3木曜日 はらぷさんの【なんかすごい。】
第4木曜日 つまみの【帰って来たゾロメ女の逆襲 やっかみかもしれませんが…】
まゆぽさんとの掛け合いブログです。→→「チチカカ湖でひと泳ぎ」
凜
つまみさん、こんにちは。
落ち着かれたご様子、なによりです。
シンプルライフ、楽でいいんだけどなんか寂しい・・・というの、わかります~
私は親も夫も転勤族で引っ越し慣れしすぎて、他のお宅よりかなり家具も物も少ないほうなんですが、あんまりシンプルすぎても生活感なくて寒々しい感じになってしまうんですよね。
でも逆に、入居したばかりのなじみのない部屋でも長年使ってきた家具が収まるとすごくほっとする。自分になじんできたものが周りにあればあるほどくつろげるんですよね。
だからといってその量が多すぎると重い。あたらしいものが入るスペースもあったほうがいい。自宅って巣ですから、くつろぎ感と身軽さっていう相反するものをどういうバランスで配するかはほんと人それぞれで、だからよそのお宅拝見って楽しい(^^)。
処分て悩みますけど、やっぱりこれに慰められる!とか再確認できる楽しい作業でもあるかなあと思います。
なんかまとまりなくてすみません!
つまみ Post author
凛さん、こんばんは。
いつもうれしいコメント、ありがとうございます。
今回も、凛さんの優しさというか、心を添わせてくださろうという気持ちがビシビシ伝わってきて、まとまりがないどころか、丸ごと、ド直球で胸にストンと落ちて、温かい気持ちがじわじわと沁み入りました。
そうですそうです。
くつろぎ感と身軽さっていう相反するもののバランス、難しいですが、本当に大事ですよねえ。
取捨選択を楽しい作業と考えるってこと、自分には抜けていました。
教えてくださって、ありがとうございます!
なんだか少し、光が見えてきたような気がします。
不安定な光かもしれませんが、そこに向かって進もうと思います。
また進捗状況(撤退状況かも)をご報告させていただきます。