第14回 宇宙(そら)よりも遠い場所
『宇宙(そら)よりも遠い場所』、2018年1月TV放映・Amazon Primeビデオ他で配信、アニメーション制作はMADHOUSE、漫画や小説が原作ではないオリジナル作品です。私のオールタイムベスト・アニメに加わりました。
幼馴じみのめぐみに頼りっきりで、ここではない何処かへ行きたいと思うだけで、なんとなく日常を過ごすマリ。母、貴子を南極で亡くして、その南極に行くと公言し変人扱いされてきた報瀬(しらせ)。自分で決めた目標を持ち、高校に行かずにアルバイトに精を出す日向(ひなた)。子供の頃から仕事、仕事で友達のいない、しっかり者のアイドル結月(ゆづき)。そんな4人の女子高生が、貴子の元同僚たちと、南極でひと夏を一緒に過ごし、少し、強くなるお話です。マリの幼馴じみのめぐみもまた…。
その来し方から、ときとして彼女らは、溜めていた複雑な心情・激情を吐露します。齢50を過ぎた人間が、同じ経験があるわけでもないのに共感し、滂沱の涙、涙。4人のそれぞれの個性を丁寧に描写する脚本・構成がすばらしいのはもちろんですが、 なにより声優さんたちが、凄い!これは憑依!たしかに彼女たちがそこにいると感じさせます。
“友だちとは?”がテーマのひとつですが、彼女らはそれぞれ答えを見つけたような、見つけていないような。それは映像・ストーリーの中にある。主人公たちに強いセリフでこうだ!と言い切らせないところに、このアニメのリアリティがあります。一方で大人たち(貴子の元同僚たち)は、若者の胸中をのぞこうとはしない。彼女らの悩みは彼女らのもの。ただ距離を置いて、ものすごく踏ん張って、報瀬たちに南極の土、いや氷を踏ませ、ともに汗を流してプロジェクトを遂行しようとします。それは貴子の娘、報瀬のためでもあり、自分たちのためでもある。そこには若干のファンタジーを感じます。けれども私は、この若者と大人たちの在り様や関係に、本作の創り手の良心を見るのです。
画のクオリティーは、もちろん最高です。リアルな観測船、シンガポールの夜景や南極を背景に、アニメらしい2Dキャラクターが、白い縁で軽やかに映える。こういう色使いがあるんですね。ありがとう、CG。なろうとしても嫌いになれない外見と個性を持つキャラクターデザインのおかげで、まじめな話ですが、珍道中もまじえ明るい話になっています。見た後に立ち上がって、何だか分からないけれど「さあ、始めよう!」と思える作品です。
精神的成熟度はまちまちだけれど、大人が心配するほど子供ではない。自分の頭で考えて、決める女子高生。水着やミニスカートや男性に媚びるシーンも、アホアホなシーンもない。高校生の女子たちがこんな風にしっかりと描かれるようになったのだなあ。女性監督も増えたし、朝ドラも応援しくれているし、いい感じで令和に移れそう。
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もう1本。同じくMADHOUSEの良心(と私が勝手に呼んでいる)『学園戦記ムリョウ』 再びの配信を待つ!
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もうじきゴールデンウイーク。お仕事の方も、お休みの方も「ご安全に!」
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*アイキャッチ画像と動画は、当該作品の公式HPより