下を向いて歩く。
坂本九の『上を向いて歩こう』という歌が大好きなのだけれど、この歌を聴くと、なぜか漫画『あしたのジョー』の主人公、矢吹ジョーが浮かんでくる。矢吹ジョーが泪橋のたもとから、ポケットに手を突っ込んで、この歌を歌いながら、うつむき加減に歩いてくる。そんな場面がいつも浮かんでくる。
そんな話をすると、周囲からは「ひねくれ者」だとよく言われるのだが、浮かんでくるのだから仕方がない。そう言えば、子どもの頃、クリスマスや誕生日など、家でケーキを囲んでお祝いをするよう機会があると、僕はいつも「ケーキを買えない家の子はどうするんだろう」と思っていた。
それはおそらく自分の家がそれほど裕福ではなく(というか、当時はどこの家も似たようなものだったと思うけれど)、吹けば飛ぶような暮らしをなんとか保っている、という風情がみんなにあったからだという気がする。
だからこそ、『上を向いて歩こう』という歌は大ヒットしたのだし、矢吹ジョーが下を向いてこの歌を歌うことにも違和感はなかったのだと思う。
むしろ、当時、1970年代から80年代にかけての世相の中には、下を向いて、「上を向いて歩こう」を歌うことがそれなりにカッコいいという感覚も確実にあった。
いまはどうなんだろう。下を向いて歩いている奴はいっぱいいるけれど、それはスマホの画面を見ながら歩いているだけの話だ。そうなると、歩きながら暗く落ち込んでいるとか、明るく気分が朗らかだとか、そういうことも考えない。
アニメや動画を見ながら街を歩いたり、地図アプリを見ながら街を歩くのは、映画監督ジム・ジャームッシュが言っていたように「ゾンビが街にあふれているようだ」という気分になってしまう。
ひとまず、上を向いても下を向いてもいいから、歌を口ずさみながら街を歩いてみるのはどうだろう。自分がいまどんな気分なのかくらいはわかるじゃないだろうか。
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植松眞人(うえまつまさと) 1962年生まれ。A型さそり座。 兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。 現在は、東京・大阪のビジュアルアーツ専門学校で非常勤講師も務める。ヨメと娘と息子と猫のマロンと東京の千駄木で暮らしてます。サイト:オフィス★イサナ
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