おみくじ引いて『凶』と出る。
世間はコロナコロナと大騒ぎだけれど、騒ぎの割りに自分の生活で何かしなければならないことがあるかと言えば、ないのである。もちろん、自分に熱が出たり、家族に体調不良を訴えるものがいれば別だと思うのだが、今のところそれがない。ないとなると、ただただ手洗いをして、人混みに出かける時にはマスクをして、というくらいしかない。逆にあの行事は中止だとか、あの仕事は先延ばしだとか、やれることが減っているくらいだ。
だからといって、騒いでいても何にも解決しない。ただ、いまできることを粛々とやるしかないのである。なのに、トイレットペーパーを買い占めたり、紙おむつを買い占めたりという、余計なことまでするのが人間。できる限り落ち着いて、冷静に自分の日々を送らなければと思う今日この頃である。
さて、うちの長女が鉄の彫刻をやっていて、アトリエを借りる必要が出てきた。上野にある大学の先生の紹介で紹介された不動産屋さんが荒川区の南千住あたりを仕切っていて、どうやらあのあたりにいわゆる藝大村のようなものができつつある、という話。何しろ荒川区は元々町工場が多くあったのだが、このご時世、跡継ぎもなく時代の変化に仕事もままならないという所も多いらしい。それを若き芸術家たちに貸し与えようという人たちがいるというのだ。
そんな話を聞いて、娘と一緒に元町工場であるアトリエ候補を見に行く。すると、広くて使い勝手が良さそうな場所を早速見つけ、そこのオーナーの奥さんとうちの娘もなんとなく意気投合した気配でトントン拍子に話が進んだのである。
そうなると、住むところも、ということで、僕が仕事の都合で週のほとんどを関西で過ごしていることもあり、長男が大学生活で京都に暮らしていることもあり、さらにヨメも大阪の仕事と母の様子見で関西暮らしが増えることもあるので、いっそ、長女主体でアトリエの近くに住まいも移して、しかもぐっとコンパクトにして家賃を大幅に減らそうと言う作戦を立てたのであった。
アトリエもトントン拍子で決まったので、ついでのように紹介してもらった借家もトントン拍子で決めた…。つもりだったのだがそうは問屋が卸さない。なんかいろいろあって、なんだかなあと思いながら、ヨメと二人、なんとなく浅草へ行ったのである。もう浅草は新型コロナの影響で観光客が激減。日曜なのに歩きやすい。そのまま浅草寺へ行き、おみくじを引いたのである。
『凶』が出た。しかも、引っ越しは悪いでしょう、と書いてある。これはいかん、と慌てふためいた僕はもう一度おみくじを引いてみた。なんと『凶』が出た。またまた、引っ越しは悪いでしょう、と書いてある。さすがに、ちょっと怖くなって、浅草寺のだだっ広いおみくじ売場のなかでも、日の光が当たっているところへ行き、泣きのもう一回。またまた『凶』だった。
凶が三つ並ぶのは2011年の震災の時以来。あの時は、震災の翌日、ムシャクシャするので家族そろってお参りに行き、おみくじを引いたら、家族揃って『凶』が出たのだった。でも、あのおかげで病院での検査を受け、結果的に僕は命拾いしたので、あの『凶』は僕の命の恩人なのである。ということは、この『凶』も無視するわけにはいかん。僕は契約していた住まいを解約することに決めたのである。
では、アトリエはどうしよう。なんとなくケチが付いてるけど、オーナーはいい人だったしな、と思っていたら、なんと帰り道に、荒川ではなく谷中の夕焼けだんだんの坂の上で、ばったり出会ったのである。オーナーの奥さんに。そして、娘のこと、娘の作品のことをいろいろ話しているうちに、この人は信用できると、アトリエだけは契約続行することに決めたのだった。
なんだか人生って面白いけど、ちょいと疲れるわ。
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植松眞人(うえまつまさと) 1962年生まれ。A型さそり座。 兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。 現在は、東京・大阪のビジュアルアーツ専門学校で非常勤講師も務める。ヨメと娘と息子と猫のマロンと東京の千駄木で暮らしてます。サイト:オフィス★イサナ
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Jane
さすが植松さんの人生映画風~!(偶然により話が進んでいくところが)。こんな御時勢に大吉が出たらなんかしっくりこないので、凶のおみくじが多く入れられてるのでは?まあそれは別として、植松さんもなにか納得できないところがあったのでおみくじを引きに行って、凶が出て「やっぱりね」と自分の勘を後押しされたのではないでしょうか?人生も長くなってくると、それまでの経験と自分の感覚の積み重ねから、勘が良くなってくると思いたいなあ。
uematsu Post author
Janeさん
「何か納得できないところがあったから」
という指摘はまさにその通り!
まあ、ここには書けないような、
たぶん日を置いてから書くんですが、
人間て面白くてこわいなあ、
という出来事もあったりして(笑)