第35回 劇場版SHIROBAKO
巣ごもり、家ごもり、おこもりなど呼び方はいろいろありますが、緊急事態宣言下、皆さまはどのようにおうち時間を過ごされましたか。
聞かれてないけど私は、三月からWEB上でどっと無料公開された漫画やアニメで、おおいにデジタル・サブスク・エンタメの恩恵に浴したのでした。そのうえ、大量にお借りしたブルーレイディスクで、たいへん遅ればせながら韓流ドラマデビューを果たしました。その一方で、楽しみにしていた週一アニメや新作映画や美術展が次々と公開延期になり、この先どうなることやらと気がかりで。
そんな中、ぎりぎりのタイミングで見ることができたのが、こちらのお仕事映画です。臨時休校要請直後の2月29日(土)公開され、これは!と思い2回見ましたが、コロナ禍が広がる中、皆さん映画館に行きましょうとはプッシュできず、保留にしていました。
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劇場版『SHIROBAKO』は、P.A.WORKS制作のテレビシリーズの4年後を描いたもの。武蔵野アニメーション(通称ムサニ)の期待の新人だった、制作担当の宮森あおいは、高校時代のアニメーション同好会の仲間とともに、きっと自分たちのアニメを作っているはず♪
と、思いきや。
宮森は元気がないし、ムサニには人がいない。前作で関係者が悩みに悩んだ末に納得の最終回を迎えた劇中作『第三飛行少女隊』は、元うけの制作会社が代わり、第二部はお色気路線に変更されてしまっている。なんでこんなことに?
舌を刺すようなしょっぱい事情が明かされていく。これは、現実に起こり得ることなのだ。いや、業界で実際に起こったことがベースなのか?
そんなムサニに、劇場版アニメ制作の話が舞い込んきたのです。アニメーターも時間も足りないのに、本当にそんなことできるの?利権や雇用が複雑にからむ苦境にあって、それでも宮森がアニメーション映画をつくろうとするのは、なぜ?
宮森の心境を表すアニメーションが、スクリーンに広がる。盛りだくさんな出演者のパレードには、他のスタジオの協力を得て、たくさんの(たぶん宮森の好きな)アニメのオマージュが盛り込まれている。また後半には珍しいアクションシーンもある。それらが本編と同じ画調で切れ目なく描かれ、気づけばまた本編に戻っているのが面白い。
AさんがBさんに背中を押され、別のところではCさんがDさんを叱咤して、EさんがFさんに励まされ…と、かつての仕事仲間がお互いに悩みを聞いたり、共感したり、愚痴を言ったり、思いやったり。あるいは、一人で考えたり。折れた心を手当てする言葉がたくさん出てきます。
腹をくくって、繋いで、凌いで、完遂する、諦めない大人の物語。今こそ、この地味ポジティブで楽しい映画に勇気づけられるとき!
お近くの映画館が再開し、上映タイトルに『SHIROBAKO』があれば、ぜひどうぞ!ひきつづき公衆衛生にはお互い気を付けながら。
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