夜、寝る前に氷を食う。絶対。
うちには長女と長男、二人の子どもがいる。長男も今年の春に就職して、子育ては一段落したところだ。この長男は、子どもの頃からいろいろ笑わせてくれた。男の子らしく、アホでわかりやすくて、ツッコミ所が満載だったのだけれど、特に小学校の真ん中あたりまでは見ているだけで面白かった。
もう時効だと思うのだけれど、彼は小学校の真ん中あたりまで、おねしょをしていたのである。毎日ではないのだが、週に二回ほど、きちんとなさる。なさった後、「なんでや！」と自分で叫んで、こちらの気をそぐという手段に出たりする。こちらも、おねしょは叱っても治らないと思っていたので、叱ったりはしないのだが、本人も悔しかったのだろう。日々、どうすればおねしょをしないのか、研究を続けていたようだ。
そんなある日、僕はこの貼り紙を見つけたのだ。『夜、寝る前に氷を食う。絶対。』と書かれた貼り紙である。これが長男が寝ている二段ベッドの下の段の天井、つまり、長女が寝ているベッドの裏側に貼り付けられていたのだ。長男としては寝ようとしたときに、決して見逃さないように貼り付けたのだろう。
どうやら、氷を食べて寝た日にはおねしょをしなかった、という成功体験があるらしい。しかし、氷を食べて寝るだけでおねしょが治るわけではない。しばらくして、貼り紙を見ると，『夜、寝る前に牛乳をなめる。絶対。』とか『夜、寝る前にゲームをしない。絶対。』などに変わっているのである。
そんな貼り紙を見る度に、こいつも真剣なんだなあと思いつつ、その発想が面白くて笑ってしまうのだった。そして、いつの間にかおねしょもしなくなり、貼り紙もなくなった。でも、あの時の貼り紙を思い出すことはいつでもできるのだと思うと、なんとなく、ああ、子どもたちがいてくれて良かったなあ、と思うのである。
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植松眞人（うえまつまさと） １９６２年生まれ。A型さそり座。 兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。 現在は、東京・大阪のビジュアルアーツ専門学校で非常勤講師も務める。ヨメと娘と息子と猫のマロンと東京の千駄木で暮らしてます。
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kokomo
我が家も上が女の子、下が男の子。
下の子はまだアホアホ期真っただ中。
私が想像しない方向でいろいろやらかしてくれるので、叱りながらも実は笑いをこらえていることがしょっちゅうです。
シングル子育てということもあり、正直「子供がいてくれてよかった」とは素直に言えない毎日なのですが、巣立ったら植松さんのように山のようなアホエピソードを思い出しながら「いてくれてよかった」と思うのでしょうね。
uematsu Post author
kokomoさん
子育て真っ最中の間は、「いつ出て行くねん」とか「鬱陶しいなあ」と思うこともありました（笑）。
でも、いなくなると「あ、そうか。あいつらがいたから、あんなふうに過ごせたんだなあ」と思うことがたくさん。
でも、それは後になってから思うことですもんね。