香港に出来た巨大な美術館『M+』について。
香港にグランドオープンした美術館『M+』のことがNHKで紹介されていた。6万5000平方メートルの広大な建物で18階建て。展示室が33、劇場が3つある。その他にも、メディアテーク、ラーニングハブ、リサーチセンター、ミュージアムショップ、レストラン等などが設置された芸術文化の拠点のような美術館だ。
日本人女性がキュレーターの責任者として仕事をしていることでも話題になっている。しかし、僕はこの番組を見ていて複雑な気持ちになった。なにしろ場所は香港である。ついこの間まで雨傘革命が繰り広げられ、多くの学生たちが自由を叫びながら逮捕拘束され、表現の自由を訴え続けた新聞社が解体に追い込まれた。2019年に施行された条例で多くの活動家が逮捕収監されたままだ。
イギリス領だった香港が中国に返還され、香港の独自性を守るといっていた中国は、ここへ来て「中国はひとつだ」と言ってはばからない。
そんな自由が挫折した無念の地と言ってもいい香港に世界でも有数の規模を誇る美術館がオープンした。自由な表現の象徴である美術館が、血塗られた土地に立った。そこで展示される作品群は、警官隊の催涙ガスに雨傘を開いて抵抗した学生たちの無念を晴らすのか、覆い隠すのか。
紹介される『M+』の詳細を見に付け、「見てみたい」「行ってみたい」という素直な欲求はある。けれど、もし仮にそこまで行ったとしてどんな気分で作品を眺めればいいのだろう。作品と、そんな背景は別だという声が聞こえてきそうだが、研ぎ澄まされた感性の末に具現化されるアート作品が無縁だとは思えない。
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植松眞人(うえまつまさと) 1962年生まれ。A型さそり座。 兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。現在はコピーライターと大阪ビジュアルアーツ専門学校の講師をしています。東京と大阪を行ったり来たりする生活を楽しんでいます。
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