二人の少年が笑いながら行く、その背中。
目の前をね。小学校三年生くらいの男子が二人であるいているんです。くそ暑い夏の真っ昼間。風も吹かず、雲もない。日の光がほぼ真上から僕らをくっきりと照らしているような午後でした。
その二人の少年がね、楽しそうなんです。二人でゲラゲラ笑いながら、クソ暑いのに互いに腕を取ったり組んだりしながらあるくんです。片方が片方に、こそこそ内緒な話をすると、それをきっかけに両方が大笑い。後ろから見てると、なにがそんなに楽しいのか、と思うけれど、だんだんその二人と一緒に顔がほころび始める。
いやもう、この二人、この暑い中をどこへ行くんだろう。そう思うと、二人の目的地が気になってしかたがない。で、付いて行ったんです。こそこそじゃなく、どうどうと。というか、その道は田んぼの中の一本道だったので、付いて行かざるをえない。えないんだけど、気持ちはもう秘密探偵。こらこら、君たちはどこへ行くんだね。と二人のあとを歩いていく。
けっこう歩いたなあ。どのくらい歩いたんだろう。僕はバス停に向かっていたので、バス停を2つ3つ越える位歩いた記憶がある。こっちはヒマだったので、どれだけ時間がかかろうがかまわない。むしろ、暇つぶしにちょうどいい。そう思って、たぶん20分くらい歩いたんじゃなだろうか。
この二人の目的地どこだったと思いますか。答えはとってもシンプル。とても小さな公園でした。普通のブランコしかない町内の小さな公園。いや、このくらいの公園なら、こんなに歩かなくてもあっちにもあったんじゃないかなあ。そう思ったけれど、ここにくるにはそれなりの理由があったのかもしれない。ここのブランコの乗り心地がいい、とか。この公園が二人が初めて出会ったところだったとか。もしかしたら、向こうの公園はいじめっ子がたまに来るとか。
ま、いろいろあってこの公園なんでしょう。そして、いろいろあって二人はこのブランコに乗りたかったんでしょう。二人は誰もいない公園でそれぞれブランコに乗ってこぎはじめました。でも、あっという間に一人がブランコを降りる。
「あついよ!」
すると、もう一人も降りちゃう。
「あついねえ!」
「あついよ」
「あつい、あつい」
そういうと、そのあと、二人はブランコのまわりを走り回りながらずっと笑っている。Tシャツの背中が汗で貼りついちゃって、気持ち悪そうなんだけど、それでも二人はブランコのまわりを笑いながらクルクルまわってる。
いいなあ。こういう友だち。ばかだなあ。お前ら。うらやましいよ。
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植松眞人(うえまつまさと) 1962年生まれ。A型さそり座。 兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。現在はコピーライターと大阪ビジュアルアーツ専門学校の講師をしています。東京と大阪を行ったり来たりする生活を楽しんでいます。