蘇民将来子孫也
東京の住まいから歩いて10分ほどのところに、素盞雄神社(すさのおじんじゃ)がある。創建が795年、素盞雄大神(すさのおおおかみ)と飛鳥大神(あすかおおかみ)の二柱をお祀りしている。この神社は疫病除け、厄災除けとして知られていて、江戸時代にコレラが中興したときには参拝者が群れ集まったと記載されている。
ちょうどコロナ禍で最初の緊急事態宣言が出された頃、家人とぶらぶら散歩をしているときに、この神社を見つけお参りをした。ここしばらく気になることがあり、頻繁にお参りしてるのだが境内に大きな幟が何本かあり、そこに書いてある『蘇民将来子孫也(そみんしょうらいしそんなり)』という言葉が気になって調べてみた。
ある村で、すさのおの神が一夜の宿を求めたところ、弟の巨旦(こたん)将来は裕福な暮らしであるにも関わらず、旅の途中のすさのおの神の身なりをみて断った。貧しい暮らしをしていた弟の蘇民(そみん)将来はこれを受け入れ、貧しいながらも食事も出してもてなした。このとき、すさのおの神は蘇民将来に、これからは「蘇民将来の子孫」と唱えて茅の輪を身につければ疫病を逃れられると告げたそうだ。
その後、疫病が村を襲い、言われたとおりにした蘇民将来の娘だけが助かった。という疫病だけでなく再厄除けとしても信仰されているということで、ここしばらく僕も「蘇民将来子孫也」と唱え続けている。もちろん、こんな神様仏様的なにわか信者のいうことも聞いてくれるのかどうか僕はわからないし自信もない。けれど、それで少しは気持ちが楽になるのならと思う。
普段、実家の法事などは仏教徒として行い、クリスマスはなぜかクリスマスケーキを食べ、初詣は檀家の寺ではなく神社にいったりもする人間だけれど、子どものころの「神様はどこにでもいるんやで。八百万の神様がおるんやで」という大人から聞かされた話はいまだに身に染みついている。そして、小さな嘘はついても大きな嘘はつけずにやってきた僕にも、「蘇民将来の子孫です。だから守ってください」と唱えることは許してもらえる気がして、ここしばらく毎日気がつくとこの言葉を思い出している。
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植松眞人事務所
植松眞人(うえまつまさと): 1962年生まれ。A型さそり座。 兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。現在はコピーライターと大阪ビジュアルアーツ専門学校の講師をしています。東京と大阪を行ったり来たりする生活を楽しんでいます。