温泉で若人に文句を言って、落ち込むのココロ。
ちょっとした用があって和歌山の白浜温泉へ。温泉目的ではないので、安い宿を選んだのだけれど、これがなかなかにひどい目にあった。別に宿自体が悪いわけじゃない。ただ、安い宿を選ぶと自然に元気のいい若人と同じ宿を選ぶことになるのだ。
温泉目的じゃないとは言っても、そりゃ温泉に入るときはゆっくり入りたい。なにのに、若人5,6人のグループが入ってきて、僕の浸かっている湯船にジャブジャブとね、入ってくるのさ。しかも、ギャーギャー騒ぎながらね。ワッハッハッと笑いながらね。こりゃゆっくり入れないよ、ということで、僕は逃げた。
逃げた先は露天風呂。ガラス戸を開けて、屋根のない露天のお風呂に逃げたのである。ああ、ここなら静かだと思ってね。で、ふとさっきまでいた屋内の風呂を見てみると、若人がお湯の掛け合いをして遊んでおる。いやまあ、それを見ただけでもなんとなく腹立たしい。腹立たしいけれど、僕は静かな露天風呂を手に入れたので、これはこれでまあいいやと溜飲を下げていた。
しかし、そこに現れたのが別の若人グループ3人組。こいつらが、いや、この若人たちが屋内の風呂ではしゃぐ若人たちを横目に、まっすぐに露天風呂エリアへとやってきのであります。で、僕が先客として入っているのを知ってか、静かにそろりそろりと露天風呂に浸かり始めました。まあ、かけ湯もしてない雰囲気はありましたが、そこは目をつぶってやりました。なにしろ、さっきの若人たちよりは静かだから。でもね、それもうたかたの夢だったのです。
新参の3人組の若人の声が次第次第に大きくなってきたのである。そして、次第次第に僕の存在を忘れ、大声で笑い、お湯を掛け合ったりし始めたのである。まあ、しょうがない。自分が若い頃を思い出しても、身に覚えがあったりするので、こうなったらまたまた逃げるが勝ちということで、僕はそそくさと風呂から上がったのである。
こういうとき、僕は割と「ちょっと静かにしてもらえますか?」とか言うのだが、言ったからといって聞いてくれる人ばかりじゃないので、最近はなるべく言わないようにしている。つまり、我慢しているわけだ。でも、我慢はよくない。我慢すると、そのひずみがどこかに出る。ということで、僕はその時、平気な顔をしつつ実はめちゃくちゃ我慢していたのである。
で、我慢しながらも密かに身体を拭き、浴衣を着て、さあ部屋へ引き上げよう、とした時にダメ押しの事件が起こったのである。風呂場ではしゃいでいる若人グループの仲間の一人が後から、遅れてやってきて、出て行こうとしている僕に「あれ?帰るの?いまどういう状況?」と話しかけてきたのだ。なんか、その時に我慢が限度を超えたのである。そして、僕は「君の仲間がうるせえから、温泉を諦めて部屋に帰るんだよ」と言ってしまったのである。
あーあ、ダメだなあ。ここまで我慢したのに。キョトンとする若人に「とりあえず、他に客がいたら静かにしろと、君が友だちにちゃんと伝えなさい!」と声高にさらに追い打ち。部屋に戻りつつ落ち込んでいく僕。次にこんなことがあったら、とりあえず逃げるように去ろうと思うのだが、うまくできるだろうか。なんか、これからの人生、うまく生きていく自信がまったくない。
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植松事務所
植松雅登(うえまつまさと): 1962年生。映画学校を卒業して映像業界で仕事をした後、なぜか広告業界へ。制作会社を経営しながら映画学校の講師などを経験。現在はフリーランスのコピーライター、クリエイティブディレクターとして、コピーライティング、ネーミングやブランディングの開発、映像制作などを行っています。