宛名はふたり
気がつけば道端の梅や沈丁花のつぼみが少しふくらんで、寒さ真っただ中ですが春の足音は少しづつ近づいていました。
少し前にお年玉年賀はがきの当選番号の発表がありましたが、私に届いた年賀状は今年も残念ながら1枚も当たっていなくて、ちょっぴり残念^^;
私宛の年賀状も年々減ってきているので、当選の確率も当然下がりますよね。そんな中今年は年賀状を送ってくれる方がおひとり増えました。
増えたといっても今まで夫に40年以上も年賀状を送ってくれていた夫の高校時代の友人の方(以下「海彦氏」もちろん仮名)。私たちが結婚した半年後に海彦氏も結婚されて、その結婚式の写真の年賀状から毎年家族写真の年賀状を送って下さっていました。
家族写真の背景は海彦氏のお住い周辺の海辺や名勝地などで、はじめは優しそうな笑顔の奥様とご夫婦二人の写真でしたが、その後お子さんが生まれて家族が3人になり、お子さんが成長して学校に入学、お子さんのスポーツクラブでの様子の年もあり、ご家族で海外旅行に行かれた年は旅行先での写真が使われていました。
私と夫は毎年海彦氏の年賀状を見て、ここはあの辺り(観光地)かな?とか1年で(お子さんが)ずいぶん大きくなったねなどと話しながら、私はお会いしたことのない海彦氏の家族写真を見るのが楽しみでした。少し遠い親戚家族の幸せな成長を見ているような気持ちで。
そして数年前にお子さんの大学入学か成人式を迎えたらしい時に写真屋さんで撮ったであろう家族写真を最後に、年賀状の写真にご家族の写真は使われなくなりました。
最後の家族写真の翌年は海彦氏ご家族を取り巻く状況に変化があったらしく、簡単な干支の印刷された年賀状や印刷された文章だけの年が2年続きました。
その頃に夫が亡くなり夫の荷物を整理していたら、海彦氏の年賀状やハガキだけが全て取ってあったのです。よく見ると40年以上前の学生時代のものまでありました。
夫が亡くなって2年後に届いた年賀状は蓮の花の写真でした。家族写真は一区切りされたんだなぁと思いながらも、私は海彦氏に夫の訃報を知らせることが出来ませんでした。ずっと二人で見続けてきた海彦氏の年賀状が届かなくなったら、夫との思い出が一つ無くなってしまうような気がしたのです。
そしてまた年が明けて届いた、珠のような水滴をのせた蓮の葉の写真の海彦氏からの夫宛ての年賀状を見て、海彦氏に連絡することにしたのです。夫の訃報と可能だったら夫宛てにこれからも年賀状をいただけないかと伝えるために。
年賀状に記載されていたe-mailアドレスにメールをしたところ、翌朝すぐに返信がありました。暖かな友人としてのお悔やみの言葉と、年賀状を続けてくれるという嬉しいお返事でした。その後メールで夫の高校生時代の写真も送って下さり、それを見た義母や義妹がとても喜んでいました。
そして今年の海彦氏からの年賀状は2枚。2枚になったのは前の住所に送ってしまったからと、わざわざもう一枚今の住所に送って下さったから。今年の年賀状は夏にご家族でフランスに旅行された時の写真でした。
いま夫の写真のそばに飾っている海彦氏の年賀状ですが、私の名前と並んでいる夫の名前を海彦氏に感謝しながら何度も手に取って見ています。