Posted on by Comet
<いろんな言葉>「あんたみたいな年寄のほうがいいんだけどねぇ」
「まあどっちかってえと、
あんたみたいな年寄のほうがいいんだけどねえ」
映画『流れる』より
芸者置屋の女将・山田五十鈴が、
女中として雇ってもらおうとやってきた田中絹代に、
伏し目がちに、こう伝えます。
ちなみに田中絹代は45歳という設定。
「年寄だなんて」と思いますが、まあここは
30をすぎたら「ばばあ」と呼ばれる土地柄ですから。
幸田文の原作では、このあと女将が
「(年寄のほうが)ものを知ってるからね」と言いきります。
堂々と、きっぱりと。
一方、映画での山田五十鈴は、そうは言わない。
団扇を軽く使いながら、
「まあ、居てみたら? ねえ」。
若いというだけで、もてはやされる芸者の世界で
背筋を伸ばして生きている年増女。
その誇りを胸に秘めた、
静かな凄みを感じるのです。
by Comet