ちゃんとした生活感はインフラだ&応募してくださった方のご紹介③
大野更紗さんの著書「困ってるひと (ポプラ文庫)」には、大野さんが、9カ月間の入院治療を経て「ご重体エクストリーム在宅生活」をしようと決め手続きをしているとき、ケアマネージャーさんと、ケースワーカーさん、担当課の職員さんがやってくる場面があります。
「お三方とも優しそうな人たち」で、ベッドで横になったままの大野さんを囲み、「神妙な表情でちゃんと話を聞いてくれ」、杖や車いす、入浴補助用具、宅配のお弁当など細かいところまで
サービス申請の段取りを「新幹線並みのスピードで」決めていくんです。
大野さんはこの人たちについて、「自治体の直接の担当の人が『味方』であると心情的に思えるだけでも、生存ギリギリ女子にとっては心身の負担がものすごく違うことがわかった。担当の方々が、たまたまお子さんがいる働くママたちである、というのもラッキーだと思った。いろいろな浮世の苦労を把握する能力は、ママ層が圧倒的に高いと思う」と書いています。ああ、いい人たちが来てよかったなと読んでいるこっちも、ほんの少しホッとする場面です。
いろいろな浮世の苦労を把握する能力は、ママ層が圧倒的に高い。
ママ層のところは、若干のニュアンスの違いは生まれるけど、「主婦層」と言い換えてもいいかもしれません。あるいは、「おばちゃん層」とか。(ママ層のほうが若くて、さわやかな感じかな)ママや主婦でなくても、既婚・非婚を問わず親の介護を期待される「娘層」も含まれるかもしれません。
で、わたし自身、その「おばちゃん層」「主婦層」の構成員になって長いけれども、それでも、福祉的な相談業務には、浮世の苦労を把握している女性に担当してほしいと切に、切に願います。できれば、オシャレすぎず、ダイエットをがんばりすぎていない人がいい。笑顔の明るい人だったら、うれしい。聞き上手で、段取りがよくて、台所で茹でた青菜をギュッと絞る作業が似合いそうな手をしている人。つまり、その人のバックボーンに「家事の年輪」を感じたいのですね。それがないと、ダ、ダイジョーブかな、と不安になる。
もっと具体的にいうなら、介護や看病の向こうに洗濯やゴミ捨ての段取りが浮かぶこと。栄養の大切さと同時に食事の支度や後片付けの手間が浮かぶこと。入浴を語るときに、湯アカや黒カビの発生も同時に思い描ける人。この「同時に、手間や煩雑さの種類と量を数多く思い浮かべられる能力」が、「浮世の苦労を把握する能力」なんじゃないかとさえ思います。
「別冊」でも、ときには「おせっかい」と言われながらも、町のあちこちでホスピタリティを発揮している女性たちを紹介したいなあと思っています。「生活感がない」って表現がほめ言葉だったりする年代もありますが、ちゃんとした生活感は、社会のソフトインフラなんですよね。
おっと、毎度のことながら話が長くなっちまいました。
ではでは、今日も、先週、先々週に引きつづき、応募してくださった方の好物写真をご紹介します。トップ画面のかわいすぎる猫ちゃんの画像に心奪われた方もきっと多いですよねー。
この写真は、文章を読んだり、書いたりすることが大好きだとおっしゃるドーリーさんが送ってくださいました。
<ドーリーさんの一言>
マイブームは、愛猫です。
2匹一緒に写ってるのが、なかなかなくて、いい写真でもありません。
目つきの悪いおかっぱ頭が女の子のキキ(本当は美人さんです)、
七三分けみたいな頭が男の子でポポです。
3年前に捨て猫などを保護しているボランティアグループから
子猫のときに引き取った兄妹です。
この子たちのおかげで毎日笑顔で過ごせてます。とても大事ないとおしい家族です。
うぎゃあ。可愛すぎてたまりませんね。この透明感、どうしましょ。
いただいたメールには、「『50代、ご自由だい!ってことにしよう。自分らしく生きよう』とも思っているのです」というすばらしいダジャレ型スローガンも書いてくださいました。
わたしも落ち込みそうになったら、「50代、ご自由だいっ!」と言って乗り越えたいと思います。ドーリーさん、ありがとうございました。
byカリーナ
★これまでのカリーナの記事を読む方はこちらへどうぞ。
★大野更紗さんのブログはこちら。こちらでは、糸井重里氏との対談も読めます。
ドーリー
カリーナさん、こんにちは。ドーリーです。
下手な写真がこちらに載せてもらったら、それなりにいい写真に見えて嬉しいです♪
どうもありがとうございます。
『困ってる人』、私も読みました。
ガンバレガンバレと応援する思いで読んでたのに、結局いろいろなことを考えさせられ、私が勇気や元気をもらえた本でした。
カリーナさんがおっしゃることにも、とっても共感しました。
福祉の仕事に携わってはいない私ですが、誰かが困ってる時には、必要なだけ、ちょうど良く寄り添えるような人になりたいなぁと思います。
Cairna Post author
ドーリーさん
カリーナです。こちらこそ、素敵な写真と文章をありがとうございます!
これからもよろしくお願いしますね。
闘病記としてではなく
「困っている人」読みました。
闘病記というより 「恋している人」のパワーを感じました。
すごい ラブストーリーだと ドキドキしました。
現実は ホントに大変で
だからこそ、世界中をも抱きしめたくなっちゃう。
大丈夫だから と みんなを励ましたくなっちゃう大野さんの 恋する心のときめきが まぶしいくらい伝わってきました。
こんな風に感じているのは わたしだけなのかな?
恋する気持ちのまぶしさに あふれているから
ホスピタリティあふれるママ層のみなさんにも読んでほしいです。
Cairna Post author
闘病記としてではなくさん
・・・というお名前ではないと思いますが、お許しを。
ああ、確かに、あの先生たちのひそひそ話を聞いて落ち込んで
その後に心を満たす恋の感情と、そこから始まる再生のところ。
あの作品の白眉ですね!
コツコツと音を立てて退院していくシーンも
ものすごく心にしみました。