法要は、何も考えないのが一番。季節が背中に沁みて「弔いの夏」は数を重ねるのだ。
こんにちは、カリーナです。
昨日は夫の三回忌でした。午前10時、霊園の人がお墓の前にパラソルを立てて準備をしてくれています。「お墓の前」といってもプレートが芝生にズラッと並んでいる式のお墓なので、「お墓の一番近くにある焼香台」のあたりにパラソルを立てるといったほうが正確です。
そこにお坊さんが来て、お経を上げてくださるのですが、暑い。パラソルと木々で陰ができているはずなのに暑いです。去年の一周忌より、明らかに暑い。
神妙な顔で頭のなかを空っぽにして、じっと前を見つめていると、いつもなら見えないものが見えてしまいます。プレートのあちこちを小さな黒いものが高速で移動しています。小さな黒いものに焦点が合った後、視野を全体に広げると、あのプレートのあたりにも、あちらのプレートのあたりにも高速に走る黒いものがいます。蟻です。大きな蟻。
蟻は速い。ものすごく速い。そしてたくさんいる、ということを知りました。
霊園の向こう側に広がる山には、モコモコと膨れ上がった濃淡の緑。蝉の絶叫。暑い中、何がそんなに忙しいのか縦横無尽に走り回る蟻。いい声の若いお坊さんの唱える伸びやかなお経。
お坊さんは、お経の後、「ほんの少しだけ」と鼻の頭に透明な汗の玉をたくさん乗せて言い、「人を思いやること、人をうれしくさせる言葉を言うこと、人のためになることをすることの3つが大切だ」というお話をしてくださいました。
お経だけでも十分なところを、お話もしてくださる真面目な方なのだと思いました。
法要が終わると無料送迎バスで最寄りの駅まで行き、ホテルのビュッフェに行きました。昨年の一周忌はもう少し人数が多かったので席を設けましたが、今年は、夫の身内も遠方のため来ず、わたしと娘と姪の3人。普通においしものを食べよう、暑いし、と思って予約していたのです。
おなかが空いていたのでたくさん食べて、冷たい飲み物もホットコーヒーも、スイーツも食べて満腹になって外に出たら灼熱で、電車に乗ったら吐きそうになって途中下車してトイレに行こうとエスカレーターに乗っているうちに落ち着きました。次の電車を待つ間にウィルキンソンのレモン炭酸を買い、「自動販売機でスマホ決済をする」を初めて体験しました。
いつもながら法要だからといって夫のことを特別考えようとするわけでなく、思い出話もしませんでした。娘が「パパ、なんでこんな暑いときに死んでん」と言ったぐらい。あとは、「おいしい」「おいしい」と言い合いました。法要は、何も考えないのが一番。ぼんやりと心をお経に委ねて、ぼんやりとこちら側で生きていることを感じながら、ぼんやりと神妙にして、おいしいものを食べて笑い合えば良し。そのうちに季節がじわじわと背中に沁みて「弔いの夏」は数を重ね、わたしと夫はともに年をとっていくのです。
「次は七回忌やけど、四回忌、五回忌と毎回やっておいしいもの食べようか」「そうやな、」どっちみちお墓には来るんやから」「そうしよう」と62歳と39歳と27歳の女三人は言いました。
家に帰ると、義妹からLINEが来て、なんとなくとんちんかんなやりとりをしていたら、彼女が送ってくれた現金書留が8月1日についていたのに、不在票に気づかず放置していたことが判明。再配達の手続きをして、すぐに電話して平謝りもしました。義姉や義母、友人にお礼の電話やLINEもしました。そしてゲリラ豪雨。
バタバタとした三回忌。春、秋、冬が命日の人は、どんな一日を過ごすのかな。季節と法要の関係は深いと思う。
オバフォーは暑さに負けず、今週も更新します。時間のあるときに遊びに来てください。待ってます。