特別編 2014年に見た映画ベスト10
松の内も過ぎてしまいましたが、やはり新しい年最初のごあいさつはこれで。
みなさま、あけましておめでとうございます。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。
などと書きながらも、実はわたし、子供のころからお正月が苦手…。
妙に改まり、そして若干はしゃいだ雰囲気が、テレビや町のあちこちから流れてくるのを感じると、とたんに落ち着かない気持ちに襲われます。
何かしらの区切り、節目は大事だと思いますので、お正月をやめよう! とは言いませんが、正直なところ、元日だけでおなか一杯なのであります…。
さて、そんなことはさておき。
年始1回目の更新は、ちょっとイレギュラーに「2014年に見た映画この10本」です。
昨年映画館で見た映画77本の中から、これはよかった…!というものを10本選びだしました。
すでにソフト化されているものもありますので、気になるものがありましたらぜひぜひご覧くださいませ。
「新しき世界」
韓国映画の潜入捜査モノ。予告を見て、「インファナル・アフェア」「ゴッド・ファーザー」「エレクション」を足した感じかな~と思っていたのですが、、出てくる人物たちが重厚感たっぷりに描かれているのと、話運びのスリリングさで、慣れ親しんだはずのストーリーにもまったく飽きず。
潜入捜査される側に身を置くやくざの兄貴分チョン・チョンのチャーミングさが魔法のように、この映画をよりすばらしくしてたと思います。
「ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅」
「当選した宝くじを換金しにいくのじゃ!」と言い張るぼけちゃったお父さんと、心優しいけれどだめな息子の、前編モノクロのロードムービー。出てくる人たちがみんなおばかさんという落語の世界みたいな映画です。音楽もいいし、俳優さんたちもいい。地味なお話なんだけど、2014年見た映画の中で特に印象深い一本でした。映画のラストで、お父さんがかぶるあの帽子の文句に、涙腺をぎゅーぎゅーやられました…。
泣ける映画っていうのはさー、こういうものを言うんじゃないのか!?
「LIFE!」
話はまあちょっと甘すぎな感もあるけれど、映像と音楽に気持ちをすっかり持っていかれます。最初に映画館で見たときは、映像で興奮したなあ。
主人公ウォルターはちょっとしたことですぐに空想しちゃうのですが、彼の空想シーンでくすくす笑う人たちが劇場に結構いましてね。完全に、自分も空想するいわばウォルター側の人間である私は全然笑う気になれなかったです。あ、わたしもそっち側だわ、という方はぜひ。
「あなたを抱きしめる日まで」
若かりし日に生き別れた息子の行方を探す女性、フィロミナの旅を描いた作品。子供を探す旅なのですが、フィロミナのいい意味でのおばちゃん感がたまりません(すぐ人に飴をあげたり、飛行機の無料ドリンクサービスを頼みまくったり、オチのない話を延々としたりする)。ああ、おばちゃんに東も西も関係ないのかもなあと思います。愛も許しも信仰も、実はとても似たものなのかもしれません。
「ウォルト・ディズニーの約束」
こちらのコラムでも紹介したこちらの映画。はるかに時間がたった場所で、ちいさかった自分とあの日のお父さんを、自分の作品が救うというのは、そりゃあもう泣くに決まってます。作品が遠く離れた場所で、思いもかけず誰かに届き、自分のことも救うというのは原恵一監督の「はじまりのみち」にも通じるなあと思ったり。こちらもおすすめですので、ぜひぜひ。
「そこのみにて光輝く」
函館を舞台に、社会の下層でぎりぎりに生きる男と女を描いた作品。抑えた演出、それでも伝わる登場人物たちの豊かな感情の動きに、すっかり打ちのめされました。日本映画って、こういうことを武器に戦っていくべきなんじゃないでしょうか……。池脇千鶴さん、菅田将暉さんはじめ、出てた役者さんたちがみーんなみーんなすばらしかったです。特に、特筆すべきは元男闘呼組の高橋和也さん! あんなすごい俳優さんになっておられたとは…。
「her 世界でひとつの彼女」
傷心の男が恋をしたのは、最新OSだった…と書くと、SF作品のようだけど、よい意味で「ただの恋の物語」なのです。恋の始まりのときめき、相手をひとつずつ知る喜びのフレッシュさが真空パックされてるみたいで、映画館で何度もそのみずみずしさに「う、うおお…」とのけぞりました。
個人的に大好きなのは、主人公セオドアが恋の相手であるOSサマンサに外の世界を見せてあげようと、シャツの胸ポケットにスマホをいれて歩くくだり。あれだけでセオドアを好きになってしまいました。
「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」(←過去記事でもご紹介しています)
「ウォルト・ディズニーの約束」と同じく、これもこちらで紹介した映画。ジェームズ・ガン監督が撮るというあたりで面白くないわけがないと思ってたけど、それ以上にすばらしい映画でした。オープニングからエンディングまで、きらいなところがひとつもない! 宇宙一かっこよくて優しい木(!)に泣かされ、ボンクラカセットテープに泣かされたです。あと、お母さんが用意したプレゼントの包み紙がしわくちゃなのとか、ホントすみずみまでガンちゃんの愛情を感じられました。
「アバウト・タイム」
出てくる人たちがみんなかわいく、みんな好きになってしまう。だからこそ、映画の終わりがくるのがほんとうにさみしかったし、それって避けられない別れとそれを何度も回避し続けてしまう切なさにも通じるなあ…と思い出しながら今も涙目になっています。
見終わった後、とりあえず身近な人にはせいいっぱい優しくしよう、今日で会えるのが最後だと思って時間を過ごそう…と思いました。えっと、ちゃんとできているかどうかは別なのですが…。
「フューリー」
カタルシスも、景気いいシーンとかも全然ない、ひたすら残酷で終わりが見えない戦場シーンにこちらまでどんより倦んできます。でも、戦場を描くってそれでいいんだと思うのです。見ながら思い出したのは、以前読んだ日航機事故の遺体回収ルポ。人の体って、すっごくもろいものなんだよなあ。
それと、吉本隆明さんがお父さんに「戦争ってのはそんな景気よく勇ましく戦死するようなもんじゃないぞ。腹が減ったとか寒いとかみじめな気持ちをだらだらひきずりながら力尽きていくようなもんだ」と言われたというエピソードを思い出しました。
10本にしぼるのは、なかなかつらい作業でしたが(だって、あれもあれも面白かった!)、今年もまたおもしろい、楽しい映画をたくさん見られますように。
よい一年をお過ごしくださいね。
<以下はDVDが発売されています>
つまみ
小関さん、こんにちは。
わー(*’▽’*)♪うれしい!
ベスト10、大好きです!
20代の頃は、年に50本ぐらい映画館で映画を見た年もあったのに、今では最後にいつ映画館に行ったのかすら思い出せないていたらくですが、小関さんのこの連載のおかげで、去年は久しぶりに「映画館に行きたい」気持ちがめらめらと再燃しました。
さしあたってはDVDになるやもしれませんが(^^;、今回のリストを早速手帳にメモさせていただきました。
まずは『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』ですね!
うんっ!これにします。
さきほど『その女アレックス』という小説を読み終わってやるせない気持ちになっているせいか、小関さんのこの映画の紹介文にとても惹かれました。
今年もいっぱい、その気にさせてください。
楽しみにしています。
いまねえ
観たいなと思っている映画も、この記事で初めて知った映画も、どれもこれも面白そうです!
「あなたを抱きしめる日まで」のみ私も観ています、私も主人公の振る舞いに思わず
「あるある!」と笑ってしまいました。。この映画を観た小さな映画館が来月閉館となります、
小さな、そして大々的な興行作品ではないものを上映してくれた映画館なのでとっても寂しいです。
・・DVDでも観られるけど映画館に入っていく、っていう鑑賞スタイルって捨てがたい。。
でも日中、上映中の観客が私ひとり、っていう状態ではやはり持ちこたえきれないかな。。
と、つい寄り道してしまいました、映画館が消える寂しさはやはり映画で癒そう!
DVDレンタル探しに行かねば・・!
「ガーディアンズ・・」、これからいこうかしら、「her」もいいな。
今年も楽しみにしています、宜しくお願いします!
小関祥子 Post author
>つまみさん
コメントありがとうございます! 映画館に行きたい気持ちが、このコラムで再燃してくださったのならば、うれしい限りです。(しかし映画の代金ってやっぱり高いですよね…レディースデーや各種会員割引など駆使してますが、1800円払う時はかなり「面白いんでしょうね!? アータ、これ間違いなく面白いんでしょうねえ!?」と詰め寄る気持ちになっています)
「その女、アレックス」評判になってますね。映画化の予定もありだとかで、気になってます。
「ネブラスカ」は滋味深いという言葉がぴったりきそうな作品なので、ぜひぜひごらんになってくださいませー。
小関祥子 Post author
>いまねえさん
コメント、ありがとうございます!
おお「あなたを抱きしめる日まで」ごらんになったのですね。
ジュディ・デンチの行動あれこれが、まるで自分の母を見るようで、そして未来の自分を見るようで、おかし切なかったです。
つまみさんへのコメントでも書いたのですが、映画館が閉館になっちゃうの、やはり映画の値段設定が大きいような気がします…だって1800円……ちょっと気になる程度のものに支払うには、ためらう金額ですもんね。
「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」も「her」も、ほんとに面白かったのでぜひぜひ。
uematsu
去年見た映画のなかでは『her』と『インターステラー』が面白かったなあ。
あ、あと、『ブルー・ジャスミン』。
ここへ来て、ウディ・アレンは第二の絶頂期を迎えている気がします。
小関祥子 Post author
>植松さん
コメントありがとうございますー。「インターステラー」評判よかったですねえ。
「ブルー・ジャスミン」も、ふだん映画をあまり見に行かない知人たちが足を運んでました。
おじいちゃん監督たちはいったいどこまでがんばるのでしょう…すごいなあ。
カリーナ
小関さん
今ごろ、すみません。
昨日の夜、ようやく「そこのみにて光り輝く」をDVDで見ました。
寝たきりのお父さんの場面は、
「そ、そこまでいる?その設定不可避?」という抵抗感が
どうしても少し出てしまうのですが
そのほかは、海で初めて抱擁するシーン、
海辺のラストシーンなどなど
どれも素晴らしかったです。
あの光を待ったのでしょうか。
キャストもみなさんすばらしかった。
そっか。あの方は、元男闘呼組の人なんですね!
高橋和也という名前を見つけて
「うん?あの人は亡くなったのでは?」と
高橋昌也さんを想像していました(笑)
そっか、あの人が高橋和也さんか。
すばらしい。年月や経験ってすばらしいなあ。
お母さんが伊佐山ひろ子さんでした。
これも、「あ、この人!」と思いました。
綾野剛って「骨の美しい」人ですね。骨格美だわあ。
小関祥子 Post author
>カリーナさん
うわー、ありがとうございます!
「そこのみにて光輝く」は、私にとって2014年のナンバーワン映画でしたので
うれしいです。
お父さんのあのシーンは、確かに衝撃的ですよね…
でも、ああいう性的なことだけが楽しみかつ気晴らしという人、いるんでしょうね……
俳優陣はほんとに全員すばらしかったですよね。
個人的には、今年の日本アカデミー賞は「そこのみにて」が総取りしていてもおかしくないくらいです。
あと、いちばん最後に映画のタイトルが出ますが、あの文字は原作を書いた作家・佐藤泰志さんの原稿からとった直筆なのだそうです。
監督の呉 美保さんは、今年「きみはいいこ」という新作の公開も控えていますし、楽しみです~。