とある四十路女が民泊ってやつをやろうとしたら地獄が待ってた。
みなさま、こんにちは。先月は予想に反して(いや予想通りか?)更新をお休みしてしまい、大変申し訳ございませんでした。流行りのシルバーウィーク、流行りの夏バテ、流行りの台風もくらい倒し、ドタバタで過ぎっていったセプテンバー。
せっかくなのでタイトルも流行りのラノベっぽくしてみたのですが、四十路センスがかえって際立つ、昭和の女じじょうくみこでございます。
キャッチコピーじゃないんですね
セリフかと思いました
もはや内容が想像できません
ここまでくると、異次元すぎて逆に新鮮。とても真似できない感性だなあと思いながらも、やはり流行に敏感なトレンディ世代(え?)としては、流行りものにはのっかりたくなるのが世の常でございます。
というわけで、今回は流行りの 民泊 にトライしてみることにいたしました。
もちろん身近な、ニッポンで。
事の発端は、10月16日に東京で開催される「オバフォー祭り」への参加でありました。わたくし恐れ多くも「最近、映画見た?」でおなじみの小関さん、「おしゃれ会議室」メンバーの桜子さん、司会のカリーナさんとともに「いどばた。トーク」に出場することになったのですが、なにしろ人前に立つのは大の苦手。考え始めると緊張で禿げそうなので「そうだ、何か別の楽しいことを考えればいいんだ!」と思い立ったのです。
ちょうどそのころ「キモノの日」の由美子さんとやりとりしていて、「そういえば東京の宿どうする?」という話題になりました。ともに上京組なわけですが、東京になじみのない彼女が不安そうにしていたので「じゃあ一緒に泊まりますか? そのほうが安くなるし」ということに。すると由美子さんがひとこと、
「それなら民泊、してみたいですー(≧∇≦)」
おお、そうだったそうだった。彼女は、そういうひとだった。
由美子さんとは一度、彼女の地元・広島で会ったことがあります。そのとき彼女はわたしのためにゲストハウスを予約してくれたのですが、宿のひとは穏やかでやわらかく、館内はシンプルだけどあたたかく、なによりベッドがとても心地よくて、それはそれは快適な夜をプレゼントしてくれたのです。
そんな宿以上にホスピタリティがあふれていたのが、由美子さん自身でありました。宿のスタッフはもちろん、案内してくれた宮島で会う人会う人と仲良くなり、あふれんばかりの宮島愛(ときどき毒)を折に触れて披露し、知る人ぞ知るビールのうまい店へ案内してくれ、しとやかな着物姿からは想像もつかない人なつっこさと行動力を遺憾なく発揮して、わたしをこれでもかと楽しませてくれたのでした。
そんな由美子さんならきっとホテルで静かに過ごすより、人とのふれあいが多いゲストハウスや民泊のほうが似合うはず。わたしにとっても「日本人が国内で民泊ってどうなの」「おばちゃんが1人で泊まるのってどうなの」と元来の小心者が見え隠れして民泊は未体験でしたので、これは絶好のチャンス。ふたりの意見が合致して、「四十路女ふたり、東京で民泊してみよう」ということになったのでありました。
利用したのは世界192ヶ国80万件以上が登録されているという、民泊マッチングサイト。まずは「東京 10月16−17日 宿泊2名」で検索してみると、300件以上がヒットしました。そんなにあるのか民泊! と驚愕しつつ、さらに予算とエリアを絞りこんで再検索。それでもまだまだ物件がたくさんあって「こっちもいいけどあっちもよさそう、どうしたもんじゃろのう〜」と頭を抱えるばかり。途方にくれつつ1件1件しらみつぶしにあたっておりましたら、ある物件が目に飛び込んできました。
「女性オンリー/味のある古民家の2階をお貸しします」
詳細ページを見ると、古いながらも手入れが行き届いていそうな和室と、聡明そうな着物姿の女性オーナーの写真が現れました。
東京の下町にある、こぢんまりとした古い民家。
ぎしぎしと音がしそうな、黒光りする床。
ファブリックの手触りを感じる、ゆったりしたソファ。
そこにたたずむ着物姿のオーナーと、由美子さん…。
妄想しすぎは禁物だけど、妄想できない物件に興味はありません。いくつかの候補をみつくろって由美子さんに連絡したのですが、彼女もやはりこの古民家物件を見て「面白そうです。いろいろ勉強になりそう」とすぐに反応。では予約できるかどうか聞いてみようと、早速オーナーにメッセージすると、なんと30分後には「予約OK」の返事が返ってきたのです。
「喜んでお迎えいたします^ – ^。少々古い家ですが、おふたりなら狭いことはないと思いますよ。くつろいでいただけたら嬉しいです」
メッセージの文面から、ホスピタリティをビンビン感じます。ふたりして「ここだね!」と満場一致で決定。吸い寄せられるかのようにすべてがスムーズに進み、「なんだ民泊、こんなにカンタンだったのか」と拍子抜けするくらいでありました。
まさかこの後あんな目に遭うことになるとは、このときは想像もしていなかったのであります…。
こうなる運命
手続きを進めると、部屋を予約するには個人情報を登録する必要があるという表示が出てきました。指示通りに名前や電話番号、メールアドレスなどを登録し、クレジットカード番号を入力。長いながらも作業はさくさくと進み、「あと1ステップで完了です!」と出たところで
「ID認証を行ってください」
という表示が出てきました。
ん。ID認証?
どうやら予約するには、身分証明書の提示が義務付けられているようです。民泊の場合、泊まるほうも泊めるほうも一般人なわけで、お互いに「危険人物じゃありませんよ、安心してくださいねー」とアピールする必要があるわけですね。了解了解、見せろというなら見せましょう、と運転免許証を取り出しました。ところが、
なにこれ
説明文には「パスポートや運転免許証など」と書いているのに、選べるIDはパスポートのみ。パスポートといわれても、持っていないので見せようがありません。困ったなと思っていたら、画面の端に「困ったらご活用ください。あなたが知りたい情報がすべてそろっています」という文字を発見。クリックするとヘルプセンターへ飛んだのですが、どのQAを見ても免許証での認証方法はどこにも見当たらず。
らちがあかないのでエラー画面に戻り、リンクがあった問い合わせ先をクリック。そこには電話番号などは書いておらず、自動的にメールフォームが立ち上がるのみでした。急いでるんだけどなあとぼやきつつ、事情を書いてメールを送信。
速攻でエラーメール到着。
もやもやしながらも、メールの最後に「ここからコンタクトしてね」と書いてあるリンク先があったので反射的にクリック。最初に見たヘルプセンターに戻りました。
なにこの堂々めぐり地獄…(´Д` )
なにがなんやらさっぱりわからないので、ネットで「免許証でのID認証」について検索。すると多くの人がこのID手続きに苦戦して、予約を断念していることが判明したのです。免許証OKと書いていながら、実際はパスポート以外ほとんど受け付けていないのが実情のよう。結局このサイトは外国人旅行者向けで、国内向けのサポートが整っていないようでした。
さんざんデータ登録させといて、最後の最後にこれってひどい! と不親切すぎるシステムにキレる寸前でしたが、「手続きが面倒そうですね。私はゲストハウスでも全然かまいませんよー( ´ ▽ ` )ノ」という由美子さんの言葉を聞くと「いんや、くみこがんばる。意地でも認証させたる!」と奮起してしまうのが、じじょうくみこというアマノジャクなのでございました。
しつこくネットで調べてみました。すると「コールセンターに電話すれば個別に手続きしてくれるらしい」という情報を入手。どうにかコールセンターの番号を探し当て、藁をも掴む思いで電話してみることにしました。
「お電話ありがとうございます、まもなくおつなぎします…」
アナウンスを確認して、ああつながってよかったと安堵した次の瞬間、
「Thank you for calling! My name is Mathew,how can I help you?What 〇×▽‘&%▲◇$%”&…」
※電話のむこうイメージ図
え
ちょ、え(°_°)
英語ーーーーーっっ!!!
あまりのことでパニックになり、思わずガチャンと電話を切る(すいません)。な、何いまの。電話番号は確かに東京03なのに、外国人が出るってどういうこと? 気持ちを落ち着けて、もう一度ネットを調べてみると、どうやらここのコールセンターは英語オンリーであることが判明。まじですか…。
そうはいっても、ここしか頼るところがないのだから背に腹は代えられません。こういうときに英語でなんといえばいいのか、ネットで英会話フレーズをチェックしてメモる。逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、フーフー(鼻息)
「サンキューフォーコーリン、僕の名前はマシュー。今日はいったいどうしたんだい?」
「えーとえーと、わたしは日本人で日本からかけてイマース、英語よくわからないのでゆっくり話してくださいおねがいシマース」
「オケーイ」
「運転免許証でIDプロセスをクリアしたいのですが、何度やってもできません。画面にはパスポートのやり方しか出てきません。どうしたらいいですかヘルプミー」
「オケーイ、まずはきみのことが知りたいんだ。きみの名前と誕生日を僕におしえて♪」
「お、おう(照)。クミコ・ズジョウでーす」
「オケーイ、クミコ。たしかにパスポートしか登録できないね。運転免許証で登録するには別の手順が必要になるよ」
「イエース、テルミープリーズ」
「オケーイ。まずは、きみのプロフィールページにアクセスしてほしい。写真や動画を登録するところがあるので、一番下までスクロールしてみて。そうすると、動画を撮るコーナーがある。そこからビデオを送ってほしい」
「ビデオ? なんの?」
「もちろん、クミコの」
「わたしの? どうして?」
「きみのことが知りたいんだ。そうだね、住んでいる場所はどこで、どんな仕事をしていて、ホビーは何で、といったことをね、カメラに向かって話してほしいんだ」
「…それってもしかして…自己紹介をしろってこと?」
「オケーイ、クミコその通りだ! それをすれば免許で大丈夫だよ!」
「きさま正気か」
わたしはただ東京で、由美子さんと民家に1泊したいだけなのです。それなのになぜわたしはこうして遠い離島から、陽気なガイジンに英語で電話をかけ、「ビデオで自己紹介して僕に見せて♥」とか言われているのか意味がわかりません。
事態がスットコドッコイすぎて、だんだん面白くなってきました。こうなったら、やりますよ。やらせていただきますよ。要はわたしが実在の人物だってことを確認したいわけですよね? どんな人柄か、知りたいわけですよね? それがどう身分証明になるのかわかりませんが、英会話レッスンだと思ってやらせていただきますわよ。
ということで、再びネットで英会話フレーズを検索。幸いなことに「民泊で使える自己紹介フレーズ」みたいなページがあったので(インターネットってすばらしい)、じっくり読んで早速ビデオを収録。
「ハーイ、わたしはクミコ! シマ島っていう離島で暮らすクレイジーなジャパニーズよ♪ ここで何をしているのかって? そんなにわたしのことが知りたいの? いいわ教えてあげる、わたしはザビエルっていう最高にクールなガイと48歳でマリッジして、メトロポリストーキョーから引っ越してきたの。オーマイ、わたしったら本当クレイジー。でもね、旅は本当に大好き。これからもダーリンといろんな街を旅したいわ、承認よろしくねん♥」
うーいえい♪
と気持ちだけはガイジンになりきって、普通に自己紹介しました。
動画を登録しました。
ID認証にトライしました。
「このIDでは登録できません」
できないじゃないかああああ〜〜〜。・゜・(ノД`)・゜・。
再びコールセンターに連絡(フーフーフー)
「ビデオを撮るようにいわれて、やったんだけど免許証でクリアできません。どうすればいいの?」
「オケーイ、クミコ。マシューだよ( ´ ▽ ` )ノ 写真は規定の条件を満たしている? 免許証はカラーで内容がクリアに見えている状態で、四隅がはっきり写っていること。5MB以下でjpgかpng形式だよ。加工していないことがわかればいいから、今すぐに撮って送ってみて。僕が画面の前で待機しているから」
「わかった、クリアでグッドなピクチャーを撮って送ればいいのね?」
「オケーイ」
撮りました。
送りました。
「このIDでは登録できません」
ぶっ殺す 逝かせてさしあげてよ?
場所を変えたり角度を変えたり、いろいろ撮ってみるのですが、どうしてもクリアできません。予約取り消しまであと3時間。もうあとがない! やむなく3度目のコール(ブフー、ブフー)
「ビデオを撮っても認証されません。写真を撮り直してすぐに送ればチェックするといわれたんですが、やっぱりできません。どうすれば?」
「オケーイ、マシューだよ、クミコまた会ったね♪」
「マシュー…」
「いま確認したんだけど、セキュリティ担当者のチェックがまだみたいなんだ」
「急いでいるんです」
「オケーイ、ちょっと待っててくれる?」
「お、おう…」
……
………
…………
待たされること10分近く。もはや電話していることすら忘れそうになっていたとき、
「オケーイ、ぶじセキュリティを通過したよ! そして東京での予約も完了したよ! おめでとうクミコ( ´ ▽ ` )ノ」
ちゃららーらーらーららーららららー
えいどりあ〜〜〜〜ん!!
えー、そういったわけでですね、どうにか「四十路女のトーキョー民泊体験」が実現の運びとなりました。
だがしかし、手続きが白熱するあまり、仕事から帰ってきたザビ男にうっかり電話を聞かれてしまったのは一生の不覚でありました。
「はい、これ。鶏の炒め…あ、ごめん、チキンソテーのイタリアーンだよ、アーハ?」
「ゴーヤは加熱してもビタミ…あ、ごめん、ヴァイタミンが壊れないんだよね、アーハ?」
といちいち英語っぽく話されることにイライラしている、じじょうくみこでありました…。
実際の体験談は由美子さんが「キモノの日」にて披露されるのではないかと思います。お楽しみに〜。そして当連載の次回更新は10月29日(土)です。それまではまた、崖のところでお会いしましょう。
text by じじょうくみこ
illustrated by カピバラ舎
*「崖のところで待ってます。」は毎月第3・5土曜日更新です。
ちなみにわたくし未読です。読まれた方、ぜひ感想を教えてください。
Naomi
ひょぇぇぇ…そんなシステム縛りがあるとは…。
と…ところで、無事にトキオに到着したのでしょうか、アーハー?
明日お会いできることを楽しみにしておりますよ。
いまねえ
じじょくみさま
いまねえです、昨日(16日)は初対面にもかかわらず
ド暑く熱く語りかけてしまいまして、失礼をいたしました。。
ワハハ、私的にはじじょさんに逢えて
思うことを訴えることができ、さっぱりしました?!
先走って民泊がその日の夜ということを失念しておりまして
宿はどうだったか?等と聞いてしまいましたが、
後刻、由美子さんにも同様の質問を振ってしまいました。
学習能力皆無。。。
こちらの記事を読めば読むほど、
「人さらいの巣窟」ではないのかっ、
とドキドキしてしまうのでしたが、
我が娘がシェアハウスで暮らしていた4人部屋では
うち2人が海外からの留学生だったというのが数年前、
なるほど民泊の海外旅行者需要の下地はあるのですね。
テンション上がりっぱなし+ビール2本飲んで
うっかり、皆々様にご挨拶しきれず退店してしまったのが
ちょこっとばかり名残でございます。
無事に帰島されたことと思います、
次回の記事を楽しみにしています。
きゃらめる
こんにちは(^-^)
民泊に泊まってみたいけど、なにそれID認証がハードル高杉!晋作PR動画うp記事希ボンヌ(笑)
蛇足ですが、大学の後輩が大阪市内で民泊してます。梅田まで二駅、便利な立地です。
基本外国人を泊めてますが、大阪にお越しの際はご検討ください。
じじょうくみこ Post author
みなさま、大変大変遅くなりましてごめんなさい!
>>Naomiさま
もうオバフォー祭りで直接話してしまいましたが、ぶじつきましたよ、アーハ?
ザビ男はあれから1ヶ月たっても
「今朝はスクルゥランブルエッグ、食べる? アーハ?」
「今日は寒いからthあーもす使う? アーハ?」
といちいち英語感出してきてイラっとしております(笑)
>>いまねえさま
いまねえさま、ああいまねえさま!
あの日わたくしはいまねえさまと「シンゴジラにおける鉄子的考察」について
熱く熱く語り合えたことを、一生の宝とさせていただきたく存じます!
鮮やかだけどどこか上品な、赤いワンピース姿のいまねえさま、
本当に素敵でございました。。。
>>きゃらめるさま
民泊、本当にたくさんあるんですねえ〜〜〜新しい扉を開けた気分です。
パスポートがあれば問題なく登録できますので、
そこは誤解なきよう、どうぞご利用くださいませ。
梅田から2駅の好立地民泊、興味ありますーーー!