ゆるふわゲストハウスへ、ようこそ!
みなさま、ごきげんよう。11月に入りまして、一気に寒さが増してまいりましたが、いかがお過ごしでいらっしゃいますか。暦の上ではディセンバー、もといノーベンバー、でもハートはサバイバー。忙しさもコロナも加速して、ぶじ新年を迎えられるのかドキドキが止まらない、じじょうくみこでございます。
さて、わが家ではハイパー棟梁によるリフォームがぶじ終了しました(苦節10ヶ月……)。なけなしの貯金をはたいて作ったピカピカの新居をザビママに明け渡し、築100年近い母屋に引っ越すという謎の展開を迎えております。この1年で何回引っ越したかしら。もはや知り合いに「今はどこにいるの?」と聞かれる始末でございますが、その話はまあおいおいと。
みなさまもせわしない時期かと存じますので、本日は肩のこらないライトな話題をお送りします。
わたしが暮らすシマ島は、きれいな海とのんびりした空気以外、特に何もない小さな離島です。なので、海で泳げる7〜9月が観光のトップシーズンで、夏になるとどわーっと人が押し寄せ、シルバーウイークが終わった瞬間ピタッと途絶えます。あれ幻だったかな?と目をゴシゴシしてしまうくらい、それはもう見事に人が消えるんです、ある日とつぜん、忽然と。
引っ越したころはこのオン・オフの落差に頭がついてこず、夕方6時に満天の星が見えるくらい真っ暗な集落を歩いていると、「ちょ、この島大丈夫??」と心細さでいっぱいになったものでございます。
そんなシマ島に新しい流れが生まれてきたのは、しばらくたってからのことです。集落のど真ん中に巨大な廃墟があったのですが、そこは昔は人気民宿として大変賑わっていたそうですが、ずいぶん前から空き家になっておりました。集落の目立つ場所にある大きな建物だったので、なんとなく気になっていたのですが、ある日を境にその建物に明かりが灯るようになったのです。
田舎に来てよーくわかりましたが、明かりって「希望」なんですね。真っ暗闇にひとつ明かりが灯るだけで、こんなにも嬉しくなるなんて。あまりにも嬉しすぎて、吸い寄せられるようにドアを開け
「ここで働かせてください!」
と千と千尋ばりの勢いで叫んでしまった、じじょうくみこ49歳の秋。そして、そんなわたしを「いいですよー」とすんなり受け入れてくれたのが、以前ちらっと書いた女社長・竹脇サキさんだったのであります。
サキさん登場回はこちら↓
サキさんは島で電気店を営む社長夫人でしたが、集落のど真ん中に大きな建物が放置されているのを見かねてここを買い、数年かけて自力でリノベーション。来春にゲストハウスとしてオープンするところだったのです。
たまたまイベントで館内に入るチャンスがあり、今までにない洗練されたインテリアと「島で初めてのゲストハウス誕生で変化が起きる予感」に突き動かされて、「掃除のおばちゃんでいいので、ここを手伝わせてもらえないだろうか」とサキさんにアタック。ちょうどオープニングスタッフを探していたそうで、「ぜひ運営スタッフとしてよろしくお願いします!」とあっさり話は決まりました。
とはいえ当時はスーパー勤務でカマド一族にまみれていた日々。仕事を辞めた後でもカマドスーパーで買い物をしないわけにはいかないし、島民みな親戚みたいな濃厚ムラ社会なので、いかに波風たてずに抜けられるかどうかが要となります。
そこで、婦人科疾患が悪化しているので体が冷え肉体労働もキツいスーパーの仕事を医者から控えるよう言われていること、ザビパパの体調が優れず仕事をセーブしたいこと、ついでに(ここ大事)サキさんが始める宿で事務が見つからず困っているので少しお手伝いしたい、と(あくまでさりげなく)説得を試みること1ヶ月。
岡本夏生似のカマドアケミは「サキにスタッフを盗られた」などとしばらく悪態をついていたものの、最終的にしぶしぶ承諾したのはどうやら竹脇家がシマ島で財閥と呼ばれる名家だったからのようでした。
そうはいっても相手はカマド一族、辞めますと言ってから半年間働かされました(その間ネチネチ攻撃も忘れないオエ)。宿オープンまであと1週間というところで、ようやくスーパーを辞めて宿1本に。さあはりきってお手伝いしますよ、何しましょうか!とサキさんにたずねると、
「よろしく、お願いしますねえ〜、まだ何も、決まっていなくてえ〜」
え
なんだって
1週間前に何も決まってない、だと?((((;゚Д゚)))))))
決まっているのは、ふたりの男子が泊まり込みで管理人をすること、わたしともうひとりの女性でフロントに入ること、お掃除スタッフが別にふたりいること。以上。
予約の取り方も運営方法も接客マニュアルも、そもそもスタッフのシフトすら一切合切なんにも決まってない、つまりはノープランという衝撃の事実が明らかになったのでありました。
そのゲストハウスは小さな島にしては規模が大きく、ベッド数がかなりありました。しかも男女混合の相部屋のみ。顧客管理をしっかりしないと、トラブルが起きそうなスタイルです。それでも安宿ならまだいいかもしれませんが、サキさんの宿はゲストハウスとしてはかなりのお高めプライス。内装のおしゃれさも相まって、予約した人が期待値MAXで宿にやってくることは目に見えています。
ここでわかったのです。サキさんは、道なき道を切り開いてモノを作るのはものすごく得意なのだけど、作ったモノをどう使うか、誰をどう動かすかといったソフト面には一切興味がないのだということを。実際にサキさんは、まさに宿がオープンしようというのに別の空き家を買い、新しい宿を作ることで頭がいっぱいになっているようでした。
「ね、このまま宿の開けるのはマズいんじゃない?」
顔面蒼白になって、管理人の男子たちに相談を持ちかけました。ひとりは、20代の島男子ケント。本土の有名観光地で働いた後、最近島に戻ってきたケントは経験もあり英語も堪能。島の未来を担う若手として期待を一心に集めていただけに、
「いやー、大丈夫じゃないですかね? アドリブで」
と言われたときは腰が抜けるかと思いました。いやいやいやいや、シフト勤務でみんながアドリブで対応していたら現場はカオスだよ? お金も扱うわけだしダブルブッキングなんかしたら大ごとだよ? と話すと「そうですね…」と急に目を合わせてくれなくなりました。
…これはもしや……ゆとりというやつですか?
そしてもうひとりの男子は、ヒビキ。高校を卒業したばかりの18歳。もはや、おばちゃん何から話したらいいのかわかりません。さらに困ったことに、ヒビキは坂口健太郎似のシュッとした男子。ひとことで言えば
美少年♡
というやつだったのです。
それでなくても若い男子がいないシマ島に、坂口健太郎が来たらどうなりますか。おわかりですね。
入れ食い やり放題 開放的
な交流が始まってしまい、ゲストハウスはあれよあれよという間に若い男女のたまり場になってしまったのであります。
そんなふたりの管理人に対して不満をあらわにしていたのが、フロントスタッフのトモエさんでした。
「まったくさあ、サキさんがちゃんと指導しないからダメなんだよ。適当なことされて困るのは、シフトで入る私たちなのにさ。こないだだって危うくダブルブッキングになるところだったんだから。私は働くからにはちゃんとやりたいの! ちゃんと稼ぎたいの! たくさんお客さんに来てもらって、きちんとおもてなししたいの! 公私混同はやめてほしいわよねっ」
おっしゃることはごもっともですが、友人をゲストハウスに連れてきては話しこみ、その時間をちゃっかり勤務時間としてタイムカードに記録する、誰よりも公私混同な女子トモエ。きれいな海を求めて外国人のダンナさんと移住し、天然酵母でパンを焼いたりする意識高い系ライフスタイルを送る一方、夜な夜な自宅に人を集めて大騒ぎするパーリーピーポー。当然ながら、島の中でもなかなか浮いた存在の女性でありました。
そんなわけでシマ島暮らし第2シーズンは、クセしかないスタッフたちとゆるふわなゲストハウスで、これまたクセしかない旅人たちを迎え打つことになったのでありました。
長くなってまいりましたので、今日はこのへんで。では12月もまたお会いしましょう。それまで崖のところでお待ちしております。じじょうくみこでした。
text by じじょうくみこ
illustrated by カピバラ舎
*「崖のところで待ってます。」は毎月第1土曜日更新です。
じじょくみnote始めましたが滞ってます→★
お昼寝猫
じじょくみさん、お久しぶりです。
相変わらずシマ島は濃いですねぇ。
で、私も転職したり、職探し中の暇潰しでネット婚活したら、お相手が見つかって来年入籍の運びとなりそうです。
人生わからんもんですね。
kokomo
ムッちゃん事件の顛末がわかったと思ったら、今度は坂口健太郎ですか。
シマ島は人口が多くないはずなのに、キャラが豊富ですね。
またまた続きが気になる―。
じじょうくみこ Post author
>>お昼寝猫様
コメントありがとうございます!大変遅くなり申し訳ありません(;’∀’)
そしておめでとうございます!
いやーすばらしいですね。心からお祝い申し上げます!
わからないのが人生、どうかお幸せに♪
そしてまた新婚生活など教えてくださいませ~。
>>kokomo様
遅くなりましてすみません!コメントありがとうございました(*´ω`)
本当に、なんでこんな濃いキャラばかりなんだと不思議でなりません。
次から次へとポケモンが現れるので大変です。
カプセルに入れてもすぐ出てきます。