世界がオレンジ色に包まれた、生涯忘れえぬ悪夢について語ろう。
夏休みが近づいてきましたね。この季節になると、やれ親子で行く鉄道旅だの、クルーズトレインで味わう九州だの、青春18きっぷ発売だのと胸躍るポスターが駅に並び、乗り鉄にとってはトキメキがとまらない夏なのであります。
見るだけでなんか泣きたくなるポスター。
青春も問答無用で値上がりってのも泣ける(T_T)
さて。ブルートレイン北斗星号に乗って北の大地をめざすはずが、まさかの運休でなんとなく西へ向かうことになった件について、前回お話しいたしました。
これまでのお話はこちら
めざすは、犬。犬といえば愛知・犬山にある国宝・犬山城でございます。
はい国宝ドーン
犬山城はコンパクトなつくりの、大層愛らしい天守閣でありました。なんでこんなに小さくて地味な(失礼)お城が国宝かというと「現存する最古の木造天守閣」だから、なんですよねえ。
国宝の城を旅して思ったんですけど、古いものを保存するのって、メンテナンスに労力も費用もかかるし大変ですよね。新しいものに取り替えたほうが、よっぽど便利で安上がり。事実そうして解体されたり倒壊したお城もたくさんあったようです。そんな中で「いんや! そのままのキミが好き!」つって世界の中心で愛を叫んだ人がいて、維持できる財力と環境がそろって初めて古いものが古いまま残される。
犬山城も、これだけ小さな天守閣だったからこそサバイブできたわけで。建った頃はごく普通の、むしろパッとしないわーとか言われたかもしれないお城が(スイマセン)、うっかり現代まで生き残って国宝になってるこの奇跡。わたしもこんな風にこっそり生きのびて、あることないこと言いふらして面白おかしく生きてるバアチャンになってみたいものだ、と思う犬山くみこでございます。
というわけで犬の話は以上。
事件が起きたのは、この後のことでありました。
念願の国宝4城コンプリートをはたした私と友人アヤメは、せっかくだからと足を伸ばして岐阜の下呂温泉で1泊。どうせここまで来たのならということで、翌日は飛騨の小京都・高山からバスで1時間ほどの場所にある世界遺産・白川郷をたずねることにしたのでありました。
ハイ合掌造りドーン
白川郷こそ、古いものが古いままサバイブできた典型的な例ですよね。かつて白川郷のような集落は他にもたくさんあったわけで、たまたまバブルにのっからなかったとか、たまたまダムの底に沈まなかったとか、たまたま「茅葺き屋根クールじゃね?」つって保存を呼びかける人がいたとか、そういう偶然が重なった結果いまここに生きのびているという奇跡。
ああ、オバフォーの旅って、いちいち味わい深くてたまらんです。
さて。
白川郷には無料で歩き回れる集落以外に、有料の見学施設があります。せっかくここまで来たなら見ておくべしということで、「合掌造り民家園」に入ることにいたしました。村内の貴重な民家を移築してまとめた野外博物館ですが、観光客でごった返した中心集落から離れていることもあって、週末だというのに人もまばら。「ここならゆっくり見られていいね、ラッキー♪」とアヤメとふたり、ニンマリ。
世界遺産を独り占め気分。
合掌造りの家を隅々までのぞいて、計算し尽くされた構造に感嘆したり。オバアチャン気分で縁側に座ってほっこりしてみたり。「まんが日本昔ばなし」に出てくるような民話の世界を体感しながら、夢とうつつを行ったり来たり。そんな風にふわふわと物思いにふけっていると、なにやら足下に小さなオレンジ色の何かが横たわっているのが目に入りました。
あらやだ毛虫。
長らく都会暮らしをしている身ですから、毛虫を見るなんていつぶりかしら、ずいぶんカラフルなボディだわねーなんて悠長に考えていたのです。ところが園内を進めば進むほど、
歩けば、毛虫。
座れば、毛虫。
野花がきれいだわーと近づけば、毛虫が鎮座。
小川の水きれいだわーとのぞけば、毛虫そよそよ。
園内のあちこちに、オレンジ色のニクいやつが点在しておるのです。あまりの出現率に見学どころの気分ではなくなったアヤメとわたしは「園内をさっさと一周して帰ろう」と、出口に向かうことにしたのです。
目の前に、新緑まぶしい木々の小道がありました。その林を抜ければ、出口はすぐそこ。爽やかな木漏れ日を受けながら歩いていると、前を歩いていたアヤメが「ちょっと、あれ!」と叫びながら1本の木を指さしました。見ると、
木の幹が見えなくなるほど毛虫がびっしり。
「うわあ、何あれ!」
「他の木も同じだよ、うー気持ち悪い!」
木を避けるようにして先を急ごうとすると、道の上にも毛虫が足の踏み場もないほどうようよいるのが見えました。さながらレッドカーペットならぬ、オレンジカーペット。
「ぎゃっ、何ここムリムリムリムリ!!」
「でもここまで来たら行くしかないよ!」
「ぐへえ踏んじゃう、踏んじゃうよ!!」
「くみ、前、頭!」
アヤメの声にハッと目を上げると、木々が風にそよぐたびに毛虫が上からぼた、ぼた、ぼたと降り注いできました。
け、
け、
け、
毛虫のシャワー!!!!!!!!!
理性崩壊。
正直、その後のことはよく覚えておりません。アヤメの証言によると、わたしは「うがぎやあぐがぶがあああああああ」とこの世のものとは思えない絶叫をあげながら、狂ったように手足をバタつかせて小道を爆走し、広場に出て見知らぬオバチャンにすがりついて「ない? ついてないっ!?」と確認したらしいです。
地獄を見た…(T_T)
意識を取り戻したところで「ものすごい量の毛虫がいたんですけどっ!」と係員に事情を説明すると「ああ、そうなんですよ、今年は多くてねえ」とあっさり。え、何これ白川郷ではデフォルト? と驚いたんですが、調べてみるとあれはマイマイガと呼ばれる蛾の幼虫で、飛騨地方で大量発生して問題になっているようです。
いま思い出してもゾゾゾゾゾーとする悪夢の記憶。帰還して1ヶ月たとうかというのに、いまだどこかに潜んでいる気がして時々バッグの中を確かめてしまうトラウマ状態です。いまの季節には成虫になって害はないかと思われますが、全国的に発生が確認されているようですので、みなさまご注意ください。
以上、田舎だからって平和とは限らないんだぜ、旅先の「せっかくだから」に気をつけろ、という話でした(そうなのか?)
By じじょうくみこ
Illustrated by カピバラ舎
*「崖っぷちほどいい天気」は毎週土曜日更新です。
匿名
ぎゃ~~~~~!!!!!
私も今までの人生で2度ほど肩に毛虫を乗せたことがあります!!!涙!
takeume
乗り鉄なのに、乗れず、毛虫のシャワーをわざわざ?浴びに行くなんて
体張って笑いととらねば!という芸人の根性を見せていただきました。
私なんか足元にも及びません。
さすがです、師匠!!!
いまねえ
うううっっ。。
あまりにも思いも寄らぬ展開に絶句悶絶爆死状態です。。
しかもつい先週、我が家の庭先で虫に刺されて大きな水ぶくれをこしらえた直後、
このようなタイムリーな毛虫ネタは全身毛穴がうずく気配に武者震い致します。。
まるで旅の峠越えで雨あられと降り落ちるヒルの大群に襲われた「高野聖」そのものではありませんか!
・・おお。その舞台もまさしく飛騨!飛騨の山中が舞台のお話でしたねっ。。。
のどかな田舎田園風景とはつまり鳥獣昆虫の類の楽園でもあるという・・・
田舎はサバイバルそのものです。。
nao
刺されるというかかぶれませんでしたか?
虫が嫌いな訳ではないけど
ビッシリは気持ち悪いなーー
それに以前お茶の木につく茶毒蛾の毛虫にかぶれて
お尻にじんましんがそれこそビッシリ出来て
以来やっぱり毛虫は苦手です。
木には寄りかかれません。
じじょうくみこ Post author
>>匿名さま
こんにちわーコメントありがとうございますっ(*^_^*)
私も実はシャワーを抜けた後「動かないで、見ないほうがいいよ」と言われて
バッグについているのを見ただけで半狂乱になりました(笑)
肩・・・肩むり・・・・(T_T)
この時期は虫たちがいっせいに活動しますよね。おおおおおお(←思い出し鳥肌)
じじょうくみこ Post author
>>takeumeさま
こんにちわ〜いつもコメントありがとうございます(^^)/
笑いを取ろうとかネタにしようとか思ってるわけじゃないんですよ、
普通に楽しく旅をしようと思って出かけてるんですよお〜〜〜〜!!!!
でも友人には「今度どっか行く時は場所教えて。反対方向に行くから」
と言われております・・・(悲)
爽子
すごい、えらい目にあいましたね。ぞぞぞ・・・。
毛虫には、ずっと悩まされております。
毛が触れただけで、ものすごいことになったこともあります。
庭仕事は好きなんだけど、毛虫はつらい!
怖くはないんです。
「ごめんな。」て、一応謝ってから、踏み殺すこともあります。
ゴム手袋してても、捕殺は無理。
白川郷、ずーーーっと行ってみたかったんです。
季節を選ばなくちゃいけませんね。
生きた情報ありがとうございました。^^
じじょうくみこ Post author
>>いまねえさま
いまねえさま、ああ、いまねえさま!
あのとき素直に北斗星に乗れていたらこんなことになっていなかったかと思うと
集中豪雨が憎い! 水が憎い! プールの栓を抜いてやりたい!
毛虫被害、この時期多いみたいですねえ。。。。あああゾクゾクする!
そして「高野聖」! 名前しか知らなかったのですが
いまねえさまのコメントを見て早速読んでみました(今は無料で読めるんですねー)
毛虫のシャワーもこわいけど、ヒルの雨のほうがおそろしすぎる・・・・ガクブル(T_T)
森の中で黒いうねうねしたものが降っては食らいついてくる様子を想像して
気絶しそうになりました・・・
しかも泉鏡花がうれしそうに書いてるっぽいのがもっとイヤ(笑)
じじょうくみこ Post author
>>naoさま
こんにちわーいつもコメントありがとうございますm(_ _)m
ご心配ありがとうございます〜。幸いにもカラダは無事でした♪
毛虫って油断すると身近に結構いるものですね。
勝手にもぞもぞ動いてきて、あのびっしりとはえた毛で
「なんならいつでも刺してやんよ」という攻撃的な態度が気にくわない〜!!
じんましん、きついですねえ。。。。ううううう想像しただけでつらい。。。
なんでしょうこの虫トーク、誰も幸せにしませんね(笑)
じじょうくみこ Post author
>>爽子さま
コメントありがとうございます〜朝からホントぞぞ毛たつ話ですいません(^^;)
毛虫ってちょっと触れただけでドえらい目にあうものですね。
あーこわいこわい。
うちの近所の大きな公園は桜の名所なんですが
そういえば5月6月は毛虫ぼとぼと落ちてくるので
木の下は歩かないようにしていたのでした。。。。
マイマイガは10年に一度の周期で大発生するらしいです。
で、その周期が去年から来ている模様。
白川郷だけじゃないみたいなので、ご注意くださいませね。
くるりん
こんにちは。いつも楽しく拝読しています。くるりんと申します。
…マイマイガの大量発生、ゾンビウィルスによりそろそろ終息の模様ですよ。
ムクドリも活躍しているようです☆(^-^)
自然の力ってすごいですね☆
あ。北斗星、鉄な息子にねだられて揺れてます…自分も結構鉄分多めです☆
きゃらめる
毛虫は嫌ですよね~
私の出た女子大には桜並木があり、花が咲くと一般のかたも通れるよう、開放されます。
が!
葉桜になると毛虫の五月雨(笑)
あっちでキャーキャーこっちでギャーギャー、それはもう賑やかです。
マイマイガの毛虫シャワーの経験はありませんが、成虫の嵐は経験あります。
モスラのミニチュアみたいなんが、やまほど!それはもううっとうしいったら!
じじょうくみこ Post author
>>くるりんさま
こんにちわ♪コメントありがとうございます!( ^^) _旦~~
コメントを拝見して、検索してみました。
http://hida.keizai.biz/headline/698/
ほおおおおお!!
マイマイガの終息期に発生するというゾンビウィルス!!
そして大活躍のムクドリ!!
すごいですねえ~~~自然ってよくできているものですねえ~~~
朗報をありがとうございました( *´艸`)
ところで北斗星。ぜひ息子ちゃんと乗ってくださいませ!
今年度末には廃止濃厚とのうわさですよ。乗るなら今年ですよ!
わたしもまだまだ年内狙います(‘◇’)ゞ
じじょうくみこ Post author
>>きゃらめるさま
こんにちわ~コメントいつもありがとうございます!(^^)!
花吹雪の4月、毛虫雨の5月(爆)
桜はやばいですよねえ~うちの近くの桜並木も5月はデンジャーゾーンです。。。
毛虫ってなんであんな姿態なのかなあ~
不思議でしょうがないですわ。
まだまだ油断できませんので、お互い気を付けましょうね!
爽子
たった今、ニュースで、マイマイガの大量発生みました!
高山のあの赤い橋は、ライトアップをしないで、真っ暗。
コンビニも、電気消して、何の店かよくわからない…状態でした。
そして、ウネウネとうねる毛虫。
お盆に白川郷…と、決めかけてたのですが、考え直します。
じじょうくみこ Post author
>>爽子さま
うげ! もうすっかり忘れかけていたのに悪夢再び(笑)
わたしも検索してみましたが、確かに飛騨地方はマイマイガ大発生で
虫が集まってこないように公共機関の夜間照明を夏の間中止しているとか……。
ゾンビウイルスはどうした? ムクドリはどこへ行った??
白川郷はどうなっているのでしょうねえ。
せっかくの旅行を邪魔しちゃったたみたいで、なんかすいません(^^;)