見た目よりも純情だから、信じやすくできてるの。
というわけで前回のつづきです。
「いっしょに旅の話をしませんか」
婚活サイトを通じてそんな申し出があったのは、ある春の日のことでありました。
なにしろ過去の婚活は全戦全敗、希望のカケラすら見つからなかった惨状くみこでございます。いろんな方の婚活体験を聞きまくった今となっては、全くもってぬるい活動だったと反省しきりではありますが、婚活サイトには登録していたもののほぼ休眠状態。むしろ「生涯独身の可能性大! どうする人生!?」ってことで頭がいっぱいでした。
だからどうしてそのメッセージに反応したのか、いまだによくわからないのです。旅から帰った直後だったからかもしれませんし、大きな仕事が終わって時間の余裕があったせいかもしれません。ともあれ婚活サイトなんぞしょせん金儲けだろ、とやさぐれ気味だったわたしが「趣味の合う茶飲み友だちでもできれば♪」なんつって殊勝な気持ちで返事をしたのでありました。
お相手は、わたしより4つ年上の四十路男子。少し離れた場所に住む、お堅い仕事をされている方で、旅好きという以外まったく接点がなさそうな殿方でありました。
ここで問題になってくるのが「旅好き」という観点です。日常生活でもそうですが、趣味が同じだと初対面でも比較的短い時間でうち解けるものですよね。そんなわけで、わたしもプロフィールに「旅が好きです」と明記しておりました。会話の突破口になればという気持ちもありましたが、わたしにとって旅は人生に関わる重要事項。いっしょに旅しろとは言わないけれど、少なくとも外出が嫌いという人とつきあうのは難しいなと思っていたのです。
また、同じ旅好きでも「街が好き」という人と「田舎が好き」という人では行動範囲もお金の使い方も違いますし、「日本の山が好き」という人と「海外のビーチが好き」という人も趣向がかなり違います。「今まで大都市しか行ってなかったけど、これを機会に田舎も行ってみようかな♪」なんて歩み寄れる人ならOKですが、これがオバフォー男子となると
「ヨーロッパの美術館を巡るのが好きです。よく行くのはパリやミラノかな」
「世界のワインを飲み歩くのが楽しみです。どこどこの村にお気に入りのシャトーがあって」
「年に2回はイタリアにオペラを見に行くんですよ。今度の作品はあそこがこうで」
「自転車で世界中を走っています。こないだボーナスをつぎこんで新車を買って、スイスを走ってきたんですよ」
独身貴族、ザッツオール
さすが四十路まで趣味に没頭してきた人は、お金のかけかたが違うございます。おまけに自分の趣味には饒舌でも、こっちの趣味にはあまり関心を示さないことが多く、うわっつらな会話を何度か交わした末にフェードアウト、というパターンがほとんどでした。そういう彼らを見ていて「旅のこだわりを語りすぎると面倒くさいやつと思われるかも」と考えるようになり、それからは自分から旅好きアピールはしなくなりました。
で。
その方はのっけから「電車の旅が好きです」と言ってきました。
おお。ついに鉄分多めの人が現れた!
その方はわたしと同じ「乗り鉄(電車に乗って旅をするのが好き)」でありました。しかも男性の乗り鉄はJR全路線制覇!とか全国全駅踏破!とか、電車に乗って何かをすることが目的の人が多い気がしますが、その方は「電車にこだわりはなくて、ただ電車に乗っているのが好きなんです」と言ったのです。
乗り鉄の友だちは男女問わず何人かいましたが、「電車に乗っている時間そのものが好き」という感覚をわかってくれる人はあまりいませんでした。まさか、この気持ちを共有できる人が現れるとは思っていなかったので、「そうなの、そうなの、そこなの!!」と感激しきり。どうやらむこうも同じだったようで、あそこの路線は田園風景が美しかった、ここの路線は海っぺりで気持ちがいい、などと電車話が止まらない止まらない。
また、メッセージの最後に「ゲストハウスって泊まったことありますか?」「年間のお休みはどれくらいあるんですか?」と必ず具体的な質問が添えられていたのも好印象でした。そんなの普通でしょと思うかもしれませんが、会うのが前提の婚活サイトだからか、それともわたしに興味がないのか(号泣)、どうからんでいいのかわからないメッセージが多かったのです。会話のキャッチボールを楽しんだのは、本当に久しぶりのことでした。
そうして何度かやりとりしているうちに「なんだかきれいな文章を書く人だな」と感じるようになりました。文章を書くのがお好きなんですか、と聞いてみると
「昔、編集者をしていたんです」
ぬお!まさかの同業者!!
おまけに好きなものや見ているテレビがほとんど同じで、サブカル好きなこともわかってきました。
「ナンシー関を心の師と仰いでいます」
なんと!ナンシーファンに悪い人はいません!!
女友だちでも、ここまで共通点の多い人に出会ったことがありません。会話はとどまることを知らず、朝な夕なにメッセージを交換した結果、気づけば知り合って1週間もたたないうちにディープな話ができる間柄になっておりました。
楽しい。これは楽しすぎる。久しぶりに感じる胸の高鳴りにウキウキする一方で、
これはマズいぞ。
心の中で警報が鳴り出しました。
ダメよ、ダメダメ(ふる)
ネットの出会いで陥りやすい落とし穴に「妄想で恋愛してしまう」というものがあります。
*参照:AllAbout恋愛「妄想で恋してない?ネット恋愛で陥りやすい罠とは?」
メールでやりとりしているうちに妄想がふくれあがってしまい、相手の言動を自分の都合よく解釈しては恋いこがれ、実際に会ってみたらイメージとまったく違っていて「騙された!」と勝手に幻滅する…という現象です。
婚活サイトでも「実際に会ってみたら全然違っていた」という話をよく聞きますし(そういうこともあるから早めに会ったほうがいいんでしょうね)、メールの中の人と実物は違う、と十分わかっているオトナのつもりだったので、メールを交わしながらも必死に自分にブレーキをかけておりました。
よく考えろ、くみこ。相手は50のオッサンだぞ。こんなに相手の話をよく聞く、ステキなオッサンが世の中にいるはずがない(失敬)。百歩譲って本当にステキな殿方ならば、今まで独身のはずがあるまい。何かある。絶対何かある。いいオトナが何をうわついておる、悪いことは言わないから落ちつけどうどう!
シシ神よ、首をお返しする、鎮まりたまえ〜
呼んだ?
てな感じで必死に心を鎮めながらも、募る思いをおさえられずにメッセージを交換すること1ヶ月。
「今度、お会いできませんか?」
ついに、そのときがやってきました。
それまで写真の交換はしていたものの、電話もスカイプもしておりませんでした。よし、こうなったらどんな男か見てやろうといきがってはおりましたが、内心では「ホントにステキな人だったら、どうしよう」と揺れる乙女心。見た目よりも純情だから信じやすくできてるの (by 明菜)
でもひとつだけ、救いがありました。
改めて言うのもナンですが、わたくし、世に言う「カレセン」というやつでございます。
カレセン:50歳以上の枯れたオジサマを専門に愛する若い女性のこと
昔からオジサンはわりと好きでしたが、トシを取れば取るほどオジサマへの愛は募る一方でございます。「枯れたオヤジ」のイメージは人によって違う気がしますが、わたしの中の「枯れ」の定義は
- 適度にくたびれている
- あきらめることを知っている
- 不潔じゃないけど、ダンディがすぎない
- 白髪
特に大きなポイントは「白髪」。というかむしろ白髪しか興味がありません。美しい白髪を見かけると「そ、そ、その御髪さわらせてもらえませんかハアハア(痴女)」と萌えが止まりません。カレセンというよりグレセン(ロマンスグレー専門)かもしれません。
最近はあえて髪をグレーに染める戦略的カレセンがいるようですが、言語道断。いままで必死に若さを保ってきたけれど「こんなに白くなっちゃったし、オレももうトシだからさ…」なんつって寂しく笑うような、結果的カレセンでなくちゃダメなんですっ。
そんなわけで事前に送られてきた写真の中のその方は黒々とした御髪をしていて、ちょっと残念に思っていたのです。それに本人が
「最近ザビエル化が進んでいます。くみこさんは身長があるようですので、どうか後ろからじっくり見ないでください」
と言っていたので、ああそうか、そっちにいっちゃったのね、写真はその前に撮ったものなのね、と思っていたのです。なので、てっきり進化した頭部の方がいらっしゃると思いこんでいたら、待ち合わせに現れたのは
「こんにちは。くみこさんですか?」
ろ、
ろ、
ろ、
ロマンスグレー
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
四十路独女じじょうくみこ。恋に落ちた瞬間でございました。
***
そんなこんなでおつきあいが始まったわけなのであります。幸いにも実際の彼もとてもいい方で、こんな人が婚活サイトにいるんだと、新鮮な思いがいたしました。普段は聞き役に徹するわたしが話しても話しても話し足りないというくらい、とにかくいっしょにいて楽しい方だったのです。
ただ…。
ひとつだけ、その方には気がかりな点がありました。
それは彼が
離島の人
ということだったのです…。
(つづく)
text by じじょうくみこ
illustrated by カピバラ舎
*「崖っぷちほどいい天気」は毎週土曜日更新です(第4土曜日休/2月は来週28日にお休みをいただきます)
オトメのバイブル。
okosama
おぉー!
(久しぶりにコメントするのに後が続かない 笑)
tsukimachi
おぉー!
(キュン死&最大ニタニタ!)
パプリカ
Wao~♡♡♡
『土曜日の朝、午前11時』を、こんなに楽しみに
待っていたことはありませんでした。(笑)
いやぁ…『レベレーション』レベルですね。
来週までひっぱるなんてイケズ~
nao
うぅ~ん、もう!!
(ドキドキするーー)
きゃらめる
ぅをっ?!(ゴックン)
中島
オヒョイ♡(カレセン)
爽子
むほほー(^-^)
離島って、相当な範囲の離島なの?!!
akane
きゃーーー!って一緒にドキドキしてしまいました♪
つまみ
イエス!フォーリンラブ!!(この古さ、今が恥ずかしさの旬か!?)
いまねえ
私も気になります、・・・離島というと、どの程度、どの範囲??
沖縄離島か、北海道か、山陰山陽、瀬戸内海、東京都にも熱海の初島というものも。。
おおっ、私も忘却の彼方のときめきが蘇ります!
yumiko
うほっ❤
はしーば
縁は異なもの、ですなぁ。
離島が何さ〜四十路の恋は走り出したら❤️❤️❤️ 以下、自粛。
来週また、くみこさんの恋物語の進展を楽しみに。
マーキョン
きゃーどきどき。
その方となら、たとえ離島でも
宇宙の彼方でも
ソラ
じじょくみさんへの初コメです。いつも楽しく拝見しております。
きっとオチがあるんだと読み進めてたらまさかのトキメキ少女漫画展開!!(*≧∀≦*)
離島が何さ!!思い出してNO DANNNA NO LIFE!!
そんな話の合う人、むしろ離島くらいにしかいないんですよ!!
でもまずは恋を楽しんで下さい♪
花緒
きゃ~(#^.^#)
土曜日が待ち遠しいっ!
じじょうくみこ Post author
えーと、なんの祭りでしょうか(笑)
みなさま、改めましてたくさんコメントありがとうございましたm(_ _)m ありがたや〜。
ただ……大変申し上げにくいのでありますが……
来週は月に一度の定休日のため、更新がございません(^_^;)
休みの前に続きもの書くなよ!!って感じですが、諸般の事情で申し訳ございません(汗)
というわけで。
>>okosamaさま
うほい〜(*^_^*)
(お久しぶりですっ、驚かせちゃいましたかね?(^_^;))
>>tsukimachiさま
おはほ〜(^^)/
(いつも記事楽しんでおりますっ。いやはやなんとも、ねえ?(いみふ)
>>パプリカさま
HI–HA!!
(楽しみにしていただいたとは光栄の極みでございますっ!レベレーションてマンガのやつですかね?)
>>naoさま
いや〜ん★
(ドキドキさせてすみませぬ〜実はわたしが一番ドキドキですw)
>>きゃらめるさま
うほほっ♪
(バクバクバクバク←心臓の音 ってなんかみんなで楽しんでませんかw)
じじょうくみこ Post author
>>中島。さま
オヒョイLOVE(*^_^*)
(カレセンの頂点を極めたアイドルでございますっ キャー)
>>爽子さま
うひひー♪
(離島にもいろいろありますよねえ〜〜それはまた後日フフフフ)
>>akaneさま
キューン(*^_^*)
(四十路の胸キュンは動悸息切れと背中合わせです)
>>つまみさま
あったかいんだからあ〜〜♪
(既に古くなりつつあるing)
>>いまねえさま
「いまねえさまが男だったら…」と夢想したこともございました(笑)
わたしの中では彼といまねえさまだけと思っております、電車旅を共有できるのは!(迷惑(^_^;))
>>yumikoさま
きゃっ(^^)/
>>はしーばさま
本当に、縁ってどこに転がっているかわからないもんですねえ(しみじみ)
がんばりますう〜〜。
じじょうくみこ Post author
>>マーキョンさま
いやはやホントに(*^_^*)
でも宇宙の彼方はちょっと遠いなあ、里帰り大変だし(ってそういう話じゃなくて)
>>ソラさま
初コメンとありがとうございますm(_ _)m 嬉しいです♪
長年の独女殻を突き破って、精進してゆく所存でございますっ。
>>花緒さま
いやはやどうにも(*^_^*)
来週休みですみません。。。
というわけでみなさま、重ねてたくさんのコメントありがとうございましたm(_ _)m
次の更新は3月7日です〜ごめんなさい(^_^;)
花蓮
離島!まさかそっち方面から突っ込みが入るとは‼
あいや、話の合う人の%考えたら、凡庸な私だって離島にしかいないか?と考えたら、よりディープな拘り鉄成分&鉄精神の持ち主のじじょくみさんが、離島でひるんでよいわけがない(言いきっちゃってます)
行け!突き進め!と、乙女の暴走気分で応援してます
じじょうくみこ Post author
>>花蓮さま
コメントありがとうございます! ご連絡遅くなってすみません(^_^;)
いやはやそうなんですよねえ、まさかの離島ですねえ。。。
くじけず、が、が、がんばりまっす(^^)/