アラフィフで結婚すると、人は結局「うの」になる。
結婚式を、挙げるつもりはなかったのです。
長らく独身生活を送ってきたシマ島のザビ男とわたくし、じじょうくみこでございますので、そんなふたりが結婚するというのは確かにエポック・メイキングというか革命というか事件というか、とにかく大変な出来事ではあります。
とはいえふたりとも、目立つことは大の苦手。喫茶店の隅っこでちんまりとコーヒーをすすっていればご機嫌ですし、なにしろいいトシのオッチャン(51)とオバチャン(48)ですので、願わくば「あら知らないうちにあそこに嫁さんいるわー」ぐらいの感じでひそーり、こそーり、静かーに結婚生活を始めてしまいたい。
ところが前回ザビ家に結婚のご挨拶に行った際、ザビパパに
「大げさなことはしなくていいから、何らかの祝宴を催してほしい」
と何度もお願いされ、ううむこれはどうしたものかと思っていたのです。これから家族として共に暮らすのですから、祝福してくれる気持ちはありがたく受け止めたい。それに島の方々と宴席で親睦を深めることができれば、島での生活がスムーズになるのかもしれないという計算が、わたしの中に芽生えたのでありました。
一方、わたしの母には「結婚して島に行くことにした。今度改めて挨拶に行くから」と電話で報告いたしました。すると母は一瞬絶句して
「……えー、くみちゃんってもっと面白い生き方するのかと思ってたー」
ようやく片付こうかという娘に対して、そのガッカリ感なに! とツッコもうかと思ったのですが、そんな隙も与えずに母は
「だったら大げさなことはしなくていいから、何かやってほしい。くみちゃんのドレス姿を見せてほしいなあ」
とまさかのキラーパスをぶっこんできて、こちらを絶句させたのでありました。
今までそんなことは一度も言ったことのない母でしたので、「ドレス姿が見たい」とくり返す母に戸惑うばかり。長年心配かけてきた娘としては、母の願いはできるだけかなえてやりたいと思うものの、さてどうしたものかとザビ男に相談すると、
「じゃあ身内だけで食事会すればいいんじゃない? 東京なら双方で集まれるでしょ。そのときにくみちゃんはドレスを着ればいいよ。ただし私はタキシードは着ないよ? 紋付袴ならいいけど、いい、タキシードなんて恥ずかしいものはぜったい着ないからねっ!」
袴とドレスの新郎新婦ってそのバラバラ感どうなのって疑問はありますが、とにかく親が喜ぶならば何らかの宴をやりましょうか、ということになったのです。
祝宴開催にあたって、ザビ男と考えたのは以下の条件。
・互いの親族と近しい友人を呼んで30人程度の食事会
・時期は暑さ寒さで体に負担がかからず、雨も少なさそうな5月頃
・地方からのゲストが多いので、場所は都内のターミナル駅からアクセスのいいエリア
・神社仏閣好きなので、挙式するなら迷わず神前式(でも高いなら挙げなくてもOK)
・衣装は和装、ドレスは最近流行ってるらしいフォトウェディング(貸衣装+スタジオ撮影)で写真だけ撮って手を打つ
母には申し訳ないのですが、どうしてもウエディングドレスを着て人前に立つ気にはなれませんでした。ワンピースですら大変な困難なのに、くびれ命のドレスなんて
ワアアアァァ( °∀°)ァァアアア
す、すいません、いま想像しただけでリバースしそうになりました…。
もともとザビ男は着物が似合うタイプですし、わたしもこの機会に着物デビューをはたしたいところ。とにかく堅苦しいことはナシにして、ごく親しい人と簡単な食事会をすれば万事OKでしょ! と話はサクサク進んでいったのです。
なんだろう、いやな予感しかしない
雲行きがあやしくなってきたのは、会場探しを始めてしばらくのことでありました。
それにしても、いまどきは高級ホテルでも10人単位の家族ウェディングなんてやっているんですねえ。しかも談合でもしてるんですかってくらい、どこも見事に料金横並び。少人数の食事会ができるところなんてそうないだろうと思っていましたが、予想外に選択肢が多くて途方に暮れるばかり。それでもザビ男と相談しながら、いくつかの会場が候補に上がってきたところで
「やっぱり東京には行けないわ」
といきなり母が言いだしたのでありました。
母は体が強くないので、長距離移動が負担になるのでは…と気にはなっておりました。それでも姉が付き添いで来てくれるし、なんとかなりそうだと思っていたところが母の中で何らかの変化があったのでしょう、急に態度を硬化させ、わたしが何を言ってもきかなくなりました。
おまけに母の弟である叔父さんが人工透析を始めるハメになり、気弱になった叔父さんからも「行けない、ごめん」との連絡。結局わたしの親族は姉と妹だけが参列することになったのです。それだけならまだいいのですが、
「東京には行けないけど、何かしらやってほしい」
と母が言ってきかず、結果的に
東京と新婦故郷の2ヶ所で祝宴開催
という、ちょっと面倒くさいことになってきたのでありました。
「ムリして体調を崩すよりはいいだろう、私たちが出向けばいいことだ」というザビ男の言葉にウンそうねそうねと気を取り直し、今度はザビ男側の親族が集まりやすい場所で会場を考えようということになりました。このところザビパパは、足の調子があまりよくない様子。そこで、車イスOKのバリアフリー&ウォシュレットのある会場を重点的に探すことにしたのです。
ところがウェディング慣れしている会場の多くは内装が凝った作りになっていて、段差が多かったり通路が狭かったりと、バリアフリーになっていないところが意外に多いことが発覚。いいなと思う会場が見つかっても「エレベーターさえついていれば…」「せめてウォシュレットだったら…」と泣く泣くあきらめることも一度や二度ではありませんでした。
もともと結婚式には積極的ではなかったわたくしです。苦戦する会場探しに「もうやらなくていいんじゃないかな」と根を上げそうになりました。ところがそういうときに限って
「あと少しだから、一緒にがんばろうよ!」
と、どういう風の吹き回しかザビ男が珍しくやる気を見せるのでありました。
いやね、やる気になるのはいいんですけどね、
一緒も何も、アンタ離島にいるんだから動くのはわたしなんですけど!?
という言葉を飲み込んだのは、ここだけの話であります…。
そんなこんなで探しに探しまくって、ようやく予算と希望に見合った会場を見つけられたのは3月に入ってからのこと。駅から少し離れた場所ではありましたが、こじんまりした路面店のレストランで、バリアフリー&ウォシュレット完備。1日1組限定の貸切で、控え室やウェイティングスペースが広く、ゲストにゆったり使ってもらえそうなところが好印象でした。
料理もあっさりめで、魚料理が得意なところも高ポイント。しかもここで契約すると、提携神社で挙式が格安でできるうえ、和装を式からパーティまで通しで使えると聞いて、「よし、ここだ!」と。ただし下見の時点で既におおかたの日程は予約が埋まっていて、おさえられるのは6月しかありませんでした。というわけで…
東京&新婦故郷で祝宴2ヶ所開催
しかも結果的にジューンブライド
ってヤダなんか結婚する気マンマンなカップルみたいで恥ずかしすぎるっ!!
と複雑な気分でしたが、もはや会場探しだけで精根尽き果てていたので、ようやく決まってひと安心。本契約も交わして、あとは粛々と準備を進めるだけ…というところで
「わたしは結婚式には行きません」
と突如としてザビパパが言いだしたのでありました。
ええええええええええ|゚Д゚)))
ザビ男によると、ザビパパは数日前に家の中で転倒したというのです。幸い骨折などもなく体は無事だったのですが、どうも心がポキッとなってしまったようで、ザビ男が何を言っても頑なに「東京なんてムリ、ぜったい行かない」の一点張り。そうなるとパパをひとりで留守番させるわけにもいかず、自動的にザビママも参列できないことになりました。
親のための祝宴だったはずが、両家そろって親が欠席するというまさかの事態!
これじゃあ何のためにやるのかとションボリしてしまい、「まだ全額払ってないし招待状も出してないから、やめちゃおうか…?」と切り出したのですが、ここでまたザビ男が再び
「オヤジは出席するようにちゃんと説得するから。本土に親戚もいるし、こうなったら友だちをもっと呼んでパーティやっちゃおうよ」
と妙なやる気を見せたので、結局そのまま決行することになったのでありました。
けれど、結局ザビパパの気持ちは変わりませんでした。わたしも島に行って説得したものの、もはや聞く耳もちませんという感じ。そのかわり、パパはこう言いました。
「私は東京には行きません。でも、何かしらやってくれないかね」
はいはいはい
といったわけでですね、
東京&新婦故郷&新郎故郷の3ヶ所にて
祝宴全国ツアー開催決定~~ヽ(;▽;)ノ
なんだ、この神田うの状態……
若いときの結婚もそれはそれで大変だと思いますが、オバフォーはオバフォーでまた別の大変さがあるのだと思い知った、春の日のじじょうくみこでありました…。
Text by じじょうくみこ
Illustrated by カピバラ舎
うのはUNO、くみはKUMI
*「崖っぷちほどいい天気」は毎週土曜日更新です(5月は休まず更新します)
爽子
いや〜。笑(^-^)
大変ですな。
でも、嬉しいことだから、いいよね。
おめでとうございます。
末長くお幸せに。
いまねえ
おおお。と改めて思うのは数年前我が息子が東京でこじんまりとした結婚の祝宴を開いた時のこと。
その時は大阪から新婦側家族、静岡から私たち、そして千葉から私の両親というのが
親戚関連の出席でしたが、実は静岡からは我が舅姑も同行したのです。
つまり新郎側は父方、母方双方の祖父母出席ということだったのですが、とにもかくにも
娘であり嫁である私は新郎の親という立場以上に、この二組の祖父母に気を配るのが最優先だったこと。。
つまり、若い二人の結婚ならばその親はまだ体力に余裕があり、おそらく新郎新婦の懸念には
親の体力健康面が占める割合はそれほど高くないのではないかしら。。
その主役が年を重ねるということは同時に親も年を取る。。
たぶん、じじょくみさん達のご両親はその当時の我が両親と同年齢とお察しします。
・・・体力は落ちても、欲求要望はひるみませんからねぇ・・・
ということは、一ヶ所ではドレス???
マーキョン
ガンバレ、ガンバレ、と唱えながら読みました(^_^)。
3箇所で祝宴は大変とは存じますが、お年を召したご両親を遠方から呼ぶのも大変です。
私はこの3月、次男の門出を見届けるために、主人の母と私の両親、84歳82歳79歳の老人三人を連れて、離島ではありませんが広島県に属する島に、東京から新幹線と船を乗り継いで行って参りました。結果的に全行程無事に乗り切ったのですが、私は旅の間ずっと両親たちの体調や疲れ具合が気になり、次男の(硫黄島で戦死した兵士の霊を連れ帰って来たと思われたアノコです)晴れの姿を目に焼き付ける余裕もない程疲れ果て、帰京してからは丸二日間寝込みました。新婚のくみこさんにそんな風になられてはいけないので、費用も体力も必要ですが、お年寄りに遠出されるよりはこちらから赴く方が何かと安心です。
それにせっかくですもの、3回楽しんで下さい!ザビ男さんもくみこさんの花嫁姿3度もご覧になれてラッキー!私も東京のお式の場に駆けつけたいくらいです!
6月の花嫁に多くの幸が訪れますように。
ももひめ
人は歳を重ねると、頑固になるのですね(笑)
半端ないくらい!!(実感)
お互いの親の希望を尊重されてて、素晴らしいと思います。
なかなか、うのちゃんにはなれませんよ。
パプリカ
プレMrs.ザビ男さま
こんにちは。
ジューンブライドの祝宴全国ツアーのお知らせは
お名前の旧姓じじょうではなく→三乗で
おめでたいかぎりです。
結婚式は感謝会
うのチャンも副題が感謝会だったような…
じじょくみさまの結婚宣言のコメントに
お歌の『ローズ』
を贈らせていただきましたが、
今日はお花のローズを
贈らせていただきます。
ちなみに、こちらの花の名前は
≪ピース≫です。
http://matome.naver.jp/odai/2136858456847049001/2136860289851886903
ピース&ハピネス
Mrs.になられたら
(ちっちゃなおばあちゃん)でなく
おっきなみせす でいてください。♡♡♡
濃紺のワンピース、膝下(悩殺!)とパンプス
麗しのフィアンセでした!
じじょうくみこ Post author
>>爽子さま
こんにちは!いつもありがとうございますう~~ヽ(´▽`)/
いやほんと、こんなに大変だとは思いませんでした。。。
まあ、おめでたいことだからいいか、と思うことにします(笑)
これ以外にも本1冊かけそうなくらい
いろいろいろいろいろいろいろいろいろいろ
ありましたが、長くなるので割愛します(爆)
じじょうくみこ Post author
>>いまねえさま
いまねえさま、ああいまねえさま! コメントありがとうございます!
北斗星、新婚旅行にと狙いましたが見事にチケット取れませんでしたよ(号泣)
息子さんの御成婚、おめでとうございました!
なるほど確かに、20代の結婚なら親世代が一番疲れるのかもしれないですねえ。
いまねえさまも大変でしたね!
まさにわたしたちが、いまねえさま的ポジションです。
そう考えると、この大変さにも納得がいきました。
めでたいからヨシ、とするには胆力が必要ですね。。。とほほ
じじょうくみこ Post author
>>マーキョンさま
こんにちは!いつもコメントありがとうございます~ヽ(´▽`)/
ご次男さまの御成婚おめでとうございます!
あの硫黄島の子が嫁を……と妙な感慨を覚えてしまいました(会ったことないけど同士感w)
それにしても、オバフォー世代は子供が結婚する時期ですよね。
わたしも友達の息子娘さんと結婚同期です(笑)
でもこうしてお話をうかがうと、結婚式は誰にとっても大変なんだなと思いますね。
新郎新婦は当然ながら、ほんとにいろんなことがありますし。
親御さんは親御さんでいろいろありますし。
参列者は参列者でいろいろありますし。
ああ、つくづく人間って、人間ですよね(なんだそれ)
とりあえず今はザビ男と
「たぶん廃人になるから、全部終わったらどっか温泉に行こう」
とそれを楽しみにがんばっておりますm(_ _)m
じじょうくみこ Post author
>>ももひめさま
こんにちは!いつもコメントうれしいです、ありがとうございます~♪
いやもう大変ですよ。
口は出すけど手は貸しませんよ(爆)
まあ今回はめでたい話だからまだいいですけど、
これがほかのことだったら・・・と思うと
なかなか香ばしい気持ちになりますねえ。。。
大変なぶん、おいしいもの食べて酒飲んでやりますわっ!!
じじょうくみこ Post author
>>パプリカさま
こんにちは!コメントいつもありがとうございますう~ヽ(´▽`)/
そしてなんとも美しいバラをありがとうございました!
いまのわたくしはピースのかけらもありませんが(笑)
立派なミセスザビ男(爆)になれるように精進いたしまする。
なお、「夢は具体的な数値にあわらすと現実化しやすい」と先日聞いたので
どうすれば「ちいさいおばあちゃん」になれるのか考えてみました。
まず、「ちいさい」とは何かと考えると、
あと30cmぐらい縮めば他人の目で見ても
「ちいさいおばあちゃん」認定を受けられるかと。
で、平均壽命まであと30年あまりと考えて
体に無理のない範囲で縮めるとしたらどうかと検討したところ
1年1cmならいけるんじゃないかと思うんですよね。
健診のときに測ると、年によって1cmくらい縮むことあるし。
(逆に伸びてる年もあるけどまあそれはなかったことにしましょう)
そうすると1年1cmずつ縮めば30年で目標達成で
寿命にギリギリ間に合うかなあ~と思うんですよね。
なにを言っているんでしょうかわたしは。(マリッジブルーです)
きゃらめる
こんにちは、ジューンブライド仲間です(笑)
大人同士の結婚は、親がさらに大人ゆえのご苦労がおありなんですね。
夢と慶び3乗の披露宴ツアーを♡
じじょうくみこ Post author
>>きゃらめるさま
こんにちは!いつもコメントありがとうございますヽ(´▽`)/
きゃらめるさまもJB(恥ずかしいので略してみた)仲間なのですねキャっ
めでたいことなので謹んで祝福を受けたい所存ですが
最近「おおおおう」と叫びながら夜な夜な目が覚めるのはなぜでしょう・・・・
(ドキドキドキ)
こりんご
阪急沿線では金銀入りの極彩色で京都の観光名所が描かれた列車が走っています。どうしたの京都?あたしたち派手好きの大阪に影響されちゃったの?
まあ…くみさん…肩をマッサージしたいわ!一ヶ所で集まりを持つのも大変なのに、四方八方に気を配りながらの三ヶ所開催!絶句しました。
でも、ザビ男さんの今までと少し違うやる気を拝見して嬉しいです!
じじょうくみこ Post author
>>こりんごさま
こんにちは! コメントいつもありがとうございます~!
阪急さん、どうされたんでしょうね。儲かってるんですか?(ゲス)
ご心配ありがとうございますううう
愛がしみますわあああヽ(;▽;)ノ
全国ツアーに向けて体力つけないと、と思って
日々肉を食べて結果デブるという悪循環を繰り広げております。。。。
小関祥子
今ごろはお式の準備真っ只中でしょうか。それとも、もうあとは当日を待つのみ!でしょうか。
いや~、なんだか今回の記事もしみいりました。
そうかあ、やっぱりお祝いの宴的なもの、やってほしいのかあ。
そうかあ、やっぱりドレス姿、見たいのかあ。
式は親のために挙げたよ、とかつての職場の先輩が言ったとき、よくわからなかったのですが
じじょくみさんの今回の記事を読んで、なんか急にはっきりとわかった気がしました。
お体に気をつけて、乗り切ってくださいませ~。
じじょうくみこ Post author
>>小関さま
わー!こんにちは!コメントうれしい、ありがとうございますヾ(*´∀`*)ノ
そして残念なことに、式と引越し準備で絶賛きりもみ状態です(爆)
いやー同時は無茶でしたね。いまかなりヤバイです。。。
親のために結婚式をやる、という話、わたしも友達から聞いたときは
あんまりピンとこなかったんですが、こういうことだったか!と。
でももう1つわかりました。親のために結婚式をやった人の多くは
親からの資金・手配援助をもらって挙式していたことを!
援助なしの自前アラフィフ挙式、かなりキツいですおすすめしません(ド汗)