四十路独女じじょうくみこの「崖っぷちほどいい天気」① 〜泣きじゃくる20代と、闊歩する70代の間で。
みなさま、お初にお目にかかります。「じじょうくみこ」と申します。
昼間は派遣OLとして働いたり、夜はフリーランスで文章を書いたりなんだりしている、哀愁あふれるアラフィフ独女でございます。以後、お見知りおきのほどを。
いきなりで恐縮ですが、先日会社のトイレに入ったときのことです。
私が働いている会社の女子トイレには、個室が3つあります。ランチタイムの混雑が過ぎ去った昼下がり、誰もいないトイレで私は手前の個室に入り、ひと息ついておりました。すると突然女子トイレの入口が開き、誰かがドスドスと入ってきてひと言、
「オスカルいる〜? ちょっとオスカル今すぐ出てきなさいよ〜」
「あ、はい」
と一瞬躍り出してしまいそうになりましたが、待てよ私いつからオスカルだっけか? とふと考え直し、もしや秘密裏にオスカルと呼ばれていたのかもしれない、前世でオスカルだったことはないか、と逡巡していると一番奥の個室のドアがカチャリと開く音がしました。
なんだ、いたのかオスカル。
ホッとしたのもつかの間、今度は「え、どしたどした?」と戸惑う女子の声と、誰かがむせび泣く声がするではありませんか。
ヒクッ エグエグ ハアハア ゲー ゲボゲホ エグッエグッググ〜ッ
「こいつ死ぬんじゃないか」と思うほど、それはそれは激しい泣きっぷりでありました。泣いているのはどうやらオスカルの模様。
「…何。どしたのよ。言ってみ?」
「わ、わたしもう無理です。こんな顔で会議に出られませんマジ勘弁してください!ワアッ」
「オスカーール!」
オスカル再びトイレに籠城。
オスカルと呼んだら号泣する女が出てくるトイレっていうのもどうかと思いますが、「出てきて」「いや出ない」と20代とおぼしきオスカルとアンドレの攻防は一向に終わる気配がありません。しょうがないのでえいやっとドアを開け、ギョッとする2人を尻目に(ええ、ええ、若いといろいろありますよね、新年度ですもんね、大丈夫だれにも言いませんから)というメッセージを込めてフェルゼンは軽く会釈をしてトイレを後にしました。
その一方。
いま東京で飲食店に行くと、年齢層の高さに驚かされます。特にファストフードの高年齢ぶりがハンパない。東京のファストフードはシルバー世代が支えているんじゃないかと思うほど、店内がおじいちゃんおばあちゃんだらけの時があります。もちろん揚げたてのフライドポテトも、ぶっといバンズのハンバーガーも普通にペロリ、であります。
先日は夜9時をまわった都心部のファストフードで、確実に70オーバーのおじいちゃん3人が熱く語り合っていました。
「なあ、長生きするコツってなんだか知ってるか?」
「なんだよ」
「それはな、満腹にならないことだ」
夜中にミルフィーユとアップルパイつつきながら言う話かよ、と思わずツッコミそうになりましたが、大人なのでそこはぐっと辛抱。結局じいさまたちは閉店までおしゃべりを楽しみ、
「じゃあ、生きていたらまた集まろう!」
とシャレにならないあいさつを交わして駅へ向かっていったのでした。
いやはや元気ですよ、ワカモノも、シルバーも。
で、我らが40代、50代はどうしておられるのでしょう?
世の中に「40の壁」というものがあるのだ、ということを恥ずかしながら最近知りました。
39から40になるのって、29から30になるより全然ラク〜なんて思って通り過ぎちゃいましたが、40になった途端に健康保険料がアップするわ、メタボ検診はあるわ、目はかすむわ、家族は老いるわ、急にいろんなものがドッと肩の上に乗っかる感じ。体力は落ちがち、心は揺れがち、いろんな意味で「30代までの財産じゃもう乗り切っていけないのだ」ということを感じるようになりました。
おまけにフリーランスの仕事も激減。出版界は新陳代謝が激しいですから、気づけば仕事をふってくれた同世代の編集者はみーんな管理職になり、同業者は仕事を失って次々と足洗ってしまいました。危機感を感じた私は、派遣の仕事にしがみついてなんとか難を逃れたものの、やはり派遣は派遣。仕事できる期間は限られています。
ヤダ誰か助けて? と思ったけどダンナがいなかったわ?
じゃ仕事するわ? と思ったけどもうすぐ契約切れだわ?
せめて家がほしいわ? と思ったけど貯金がなかったわ?
老後が心配すぎるわ? と思ったけど年金ほとんどもらえないわ?
でもいいの。40代はオトナの女。
どんな丸投げ案件にも笑顔で対応します。
どんなダメ社員にもイイコイイコします。
税金、年金、黙って支払います。
KNSG(更年期障害)もローガンズも静かに受け止めます。
原稿料1本300円? 書いてあげてもよくってよ。
増税ですって? アベちゃん呼んで?
そう、40代はオトナの女。
どんな事情だってくむのです。
事情くみすぎ、気づけばいつでも崖っぷち。
でも崖っぷちは風が強くて、案外いい天気です。
そんなわけで、金なし家なし家族なし子・じじょうくみこが、泣きじゃくる20代と闊歩する70代の間で悶絶する40代の生き方を見つめていきたいと、野望だけはでっかくがんばってまいります。どうぞよろしくお願いいたします。
次回のお題は「40代のコンカツ」です(そこかよ)
illustration:カピバラ舎
k
崖っぷち、案外清々しいですね。
一番谷間な年代なのかもしれません。
七十代の元気さに毎日参ってます。
しらす
別冊いつも楽しく拝見しております。待ってました!な年代と話題に感謝しつつ、小躍りしたいくらいです。もうすぐ40ですが、今までのようには行かない事が増え、あたふたしています。今後も楽しみにしています。
じじょうくみ子 Post author
>>kさま
はじめまして。コメントありがとうございます〜m(_ _)m
そうですね、清々しい景色ではありますが、
強風に吹き飛ばされそうなので、だいぶ足ふんばってます(笑)
70代パワー、すさまじいですね。
最近いろんなシーンでシルバー世代の元気っぷりに驚かされています。
ぜひぜひまたお話など聞かせてくださいませ。
>>しらすさま
コメントありがとうございます!じじょうくみこでございます。
ええわかりますわかります、私もあたふたしまくってます。
お互い支え合って!?がんばってまいりましょう。
またよろしければ遊びにきてやってくださいませ(*^_^*)
横浜レイコ
お!なんだか面白い文章を読ませてくれそうな予感~!
次回も楽しみにしております。
ドーリー
くすくす笑いながら読みました。
文章も内容も楽しいし、「崖っぷちほどいい天気」ってタイトルがもう最高にステキです(*゚▽゚)
>金なし家なし家族なし子
でも!ここで「ファンあり仲間あり味方あり、しかもたくさん!」になっちゃいそうですね♪
次回も楽しみです。
じじょうくみ子 Post author
>>横浜レイコさま
こんにちわ〜。コメントありがとうございます♪
お読みいただき、ありがとうございますm(_ _)m
また遊びにきてくださると、わたくし嬉しゅうございます〜。
じじょうくみ子 Post author
>>ドーリーさま
初めまして♪コメントありがとうございますm(_ _)m
普段は崖っぷちで寒風にむせる日々ですので、
そんなに優しくされたらワタクシ泣けてしまいます(*^_^*)
今後とも、ぜひごひいきに♪
小花
フリーライターさん!嬉しいです。同業界?(編集)です。出版社も仰る通り新陳代謝激しく、さらには不況で私は軌道修正中です。生き残るこつをぜひお願いします。ふてぶてしく、したたかになりたいものです。
りこ
共感しましたー!次回の婚活楽しみにしています!!!!
じじょうくみ子 Post author
>>小花さま
いらっしゃいませ。コメントありがとうございます♪
おお、同業ですね!ぜひとも情報交換させていただきたいです!
なんとか生き残ってまいりましょうぞ~。
>>りこさま
コメントありがとう存じます!
よろしければまた遊びに来てやってくださいまし♪
皆様に反応していただいて、うれしいですう~~。