夏の盛りのご卒業。
世間は夏休みである。
部屋にいただけでも、熱中症になるかというくらいの暑さなので、そりゃ休まねばなるまい。
僕は三年ほど前から母校である専門学校でいくつかの授業を担当させてもらっている。大阪と東京の両方で教えているので、行ったり来たりで、バタバタとした季節を過ごしていたのだけれど、夏休み、冬休み、春休みだけは、学生も休み、先生も休み、ということで、とても静かに暮らせるというパターンに慣れてきていたのだが……。
突然だけれど、大阪の学校での授業を夏休み前の前期授業でいったん終えることにした。というか、続けられなくなった。なんというか、この大阪の授業は本当にお世話になった学校に対する恩返しのつもりだったので、交通費も自腹で通っていたのであった。
恩師から「そんな、おまえ、交通費が払えないから、無理しなくていいよ」とは言われていたのだけれど、こちらもなんとなく乗りかかった舟的な気持ちで、「いやいや、大阪でも仕事がありますしね。それと引っかけてくれば、なんとかなるんじゃないですか」なんて、これまた、ちょいといい格好もしてみたんですな。
いい格好しつつ、大阪にいる後輩には「なあなあ、大阪で仕事あったらやるから、ちょっと仕事入れてくれや」と頼み込んだりして、「あんた、そんな無茶なことして収支あうの?」なんてヨメから言われているのをクリアしようとしたわけですな。
というわけで、約2年半。東京と大阪を行ったり来たりする生活がスタートしたわけですが、そう都合よくいくはずもない。毎週新幹線で行き来をするものの、日帰りは無理。伊丹に実家があるものの、いろんな事情があって、実家には戻らずビジネスホテルに宿泊。すると、もちろん、経費がさらにかかる。後輩に頼んでいる仕事だって、そう簡単には入らない。
だけども、だんだん学校の仕事にもそれなりに責任が出てくる。カリキュラム会議に出たり、学生の制作過程を見るために、授業とは別の日に大阪に行ったり、勝手に宿泊する日も出てくる。
なんだか、「途中で辞めるわけにはいかねえぞ」という気分になっていたのですが、なんとなくこの話をしたヨメからは「もう、やめて〜」と叫ばれて、「ああそうか。途中もくそも、どこまでいったらゴールなのかもわからんじゃないか」と。
それでも、今年度は最後までやろうと思っていたのですが、「ああそうか。抜けるなら今だなあ」という絶妙なタイミングが、ちょうどこの夏休みにやってきた、というわけだ。
尻切れトンボというほど、中途半端でもなく、やりきった!というほどの達成感もなく、ほんのりと良い感じで、僕の東京〜大阪出張暮らしは終焉。そして、我に返ってみると、東京は東京でやらねばならぬことが山積みになっていて、行ったり来たりの間に、見過ごしていたことがいっぱいあったのだなあ、とこれまた再確認する日々である。
なんだかいろんなことをうまいことこなしているように見えて、人間、それほどキャパがないってことかもしれない。しばらくは、東京になるべくじっとして、見過ごしていた「あれ」とか、見ぬふりしていた「それとか」をきちんとやっていきたいなあ、と。そう思う、夏の午後。とりあえず、大阪の学校の仕事からのご卒業おめでとう。はい、ありがとう。
植松眞人(うえまつまさと) 1962年生まれ。A型さそり座。 兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。 現在、オフィス★イサナのクリエイティブディレクター、東京・大阪のビジュアルアーツ専門学校で非常勤講師。ヨメと娘と息子と猫のマロンと東京神楽坂で暮らしてます。
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ぶんぶん8
卒業おめでとうございます。
社会人になるとずっと続けてきたことを辞めるって、なかなか難しいですよね。
いい卒業が出来てよかったです。
奥様の助言(?)もサイコーです(^◇^)
uematsu Post author
ぶんぶん8さん
そうなんですよね。
キリのいいところ、
のキリがわからないし(笑)。
でも、なんとなく、
いいタイミングのような気がしています。