偶然と縁とリーインカーネイション?
以前、昼日中のひかり号で東京から大阪に移動したことがある。僕の真ん前の席にフランス語を話す、フランス人とおぼしき年輩のカップルが横浜から乗ってきた。
海外旅行をしている人たちがよく持っている馬鹿でかいスーツケースが通路のあちらこちらに引っかかって、ひかり号が横浜駅を出てだいぶ経ってからこのカップルは僕の真ん前の席にたどり着いた。
そして、男性のほう、たぶん年は60歳にかかろうかという頃合い。さらに、女性、たぶん奥さんも同じくらいの年頃だろうか。二人は力をあわせて、この馬鹿でかいスーツケースを頭上の荷物置きに置こうとするのである。
それほど込み合ってもいないので、そのまま隣の座席の間にでもつっこんでおけばいいようなものだが、このカップル、おそらく夫婦、う~ん、確認はしていないが夫婦ということにしておこう。このフランス人夫婦は、必死で馬鹿でかいスーツケースを頭上に掲げて、にっちもさっちもいかなくなっている。
しかたがない。真後ろに座っている日本男児が黙っているわけにはいかない。僕は立ち上がると、二人を手助けして、この馬鹿でかいスーツケースを頭上の荷物置きに置くことに成功したのである。何度も馬鹿でかいと書くが、この馬鹿でかいスーツケースは、置いた後もえらくはみ出していて、正直落ちてくるのではないかとこわかったくらいだ。
さて、その日、僕とフランス人夫婦夫婦の関わりはそれだけだった。なんだかよくわからないお菓子を奥さんらしき人がお礼だと、くれた以外は。なにしろ、僕はフランス語はおろか英語も話せないし、なんなら日本語もおぼつかないくらいだ。僕たちは彼らが降りていった京都で手を振り合って、別れた。
問題は三日後。なんと、新大阪からまた昼日中のひかり号で東京に戻ろうとしていた僕の目の前に、京都からあのフランス人夫婦が乗り込んできたのだ。彼らはあの日と同じジャケットを着て、あの日と同じ馬鹿でかいスーツケースを押しながらあらわれた。
ま、ま、まさか!そう、そのまさかなのである。彼らの席は僕の真ん前だったのである。僕はもう条件反射のように立ち上がり、当たり前のようにフランス人夫婦の荷物を持ち上げる用意をした。その瞬間、僕に気付いた夫婦は「お~!」と叫び、僕たちは固く握手をしたのだった。
この偶然を縁と呼ばずなんと呼ぶのだろう。「生まれ変わり」とかそういうことまで信じてしまいそうな勢いの偶然だ。
しかし、この約2年前の出来事から、僕と彼らの間に、特になにも起こらない。もう、あの夫婦のことを思い出さずに新幹線に乗ることのほうが多くなっている。もしかしたら、また会うのだろうか。なんなら、数年後、僕がパリに遊びに行ったときに、逆に彼らが僕の荷物を持ってくれたりなんかして、「うちで食事でもどうだい」なんて言われたりするのだろうか。
いやもう、そんなことをふと考え出すと、人生ってなんだんだろう、ととても帰ってこれなさそうな迷路に入り込むんでしまうので、今日はこのへんで。
植松さんとデザイナーのヤブウチさんがラインスタンプを作りました。
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植松眞人(うえまつまさと) 1962年生まれ。A型さそり座。 兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。 現在、神楽坂にあるオフィス★イサナのクリエイティブディレクター、東京・大阪のビジュアルアーツ専門学校で非常勤講師。ヨメと娘と息子と猫のマロンと東京の千駄木で暮らしてます。
★これまでの植松さんの記事は、こちらからどうぞ。
okosama
uematsuさん、こんばんは
そりゃ再会の握手に力がこもりますわぁ。
uematsuさんのお話やCometさんの同級生のお話を読んで、私も誰かと偶然再会したくなってきました(笑)。
uematsu Post author
okosamaさん
本当に世の中には不思議なことがありますよねえ。
偶然じゃなくて、全てが必然なのかなと思います。
くるりん
こんにちは☆(^-^)
拝読して、高校生の頃の体験を思い出しました。
兄の結婚式で上京した際、家族と原宿を歩いていたら…人ごみの中、向こうから歩いてくる知人を発見!
当時憧れていた他校の先輩でした。お互いに目が(@-@;)状態で手を振り、すれ違いました…。
ちなみに地元は北陸某県。偶然ってあるんだなぁ、て思ったり、先輩とは運命の糸が???てちょっと嬉しくなったり。
…ま、運命の糸はかなり長めなようですので…今生で結ばれることはなさそうですけどね(笑)。
その後も気が付いてないだけでかのフランス人御夫妻とすれ違ってるかもしれませんね♪
uematsu Post author
くるりんさん
そういえば、僕の友人というか知人というか、何年かに一度、必ず偶然に会う奴がいます。
大阪と東京で離れて暮らしているのに、東京の表参道で電車を降りたらバッタリ出くわしたり。大阪の車を運転していて、信号待ちをしていたら、目の前を彼が歩いていて目があったり。
そういうことがこの20年くらいの間に4〜5回ありました。
くるりんさんのおっしゃる通り、運命の糸は長めなのかもしれませんね。
サヴァラン
偶然ともご縁とも関係のないことで恐縮ですが。
昨年の「おしゃべり会」の帰途のことを思い出しました。
わたしは住まいの山口へ帰るのに新大阪で「こだま」に乗り換えたのですが
大阪以西のがらがらのこだまで、わたしの前には20代の男性、
そしてその彼の通路を挟んだ隣の席に
でっかいソフトスーツケースを3っつ持った外国人夫婦が乗車してきました。
このご夫婦は3歳くらいのお子さん連れで、スーツケースのほかに
これまたでっかいベビーカー持参。
タイヤ幅が10センチもありそうなでかくてごついベビーカーを
車内通路であれよあれよと分解し、タイヤと本体を荷物置きに。
そして、ひとつがゆうに20キロはありそうなでかすぎるスーツケースを
さらにまた頭上の荷物置きに。
その作業は見ているこちらも体力を消耗しそうななかなかの力仕事で、
お父さん、お疲れさん
しかし、これ、急停車したらやばいな、と
わが身の安全なども憂うるようなちょっと疲弊感ある場面だったのですが
通路隣の日本男児はぴくりとも動かずずーっとスマホをいじっているようでした。
そしてこだまは走り出し
小さいお子さん連れのご夫婦はときどき大荷物を降ろしては
おもちゃ、本、枕、、、と
さまざまなものを取り出してはしまい、取り出してはしまい。。
その間も隣の日本男児はピクリとも動かず。
しかし、しばらくしてわたしの席には
なんともいや~な匂いが漂い始めました。
あ。スマホ男児、靴脱いだ!靴脱いだ!靴脱いだ~~~!!
臭気の中でつくづくと考えました。
このバッファローのごときでかい体躯のご夫婦がどちらのお国に方かは知らんが、
こういうとんでもない体力のひとたちと戦争なんかしたらぜったいにあかん。
気の利かんスマホ男児はぜったい使い物にならん。
かくいうおばはん(わたし)もなんの役にも立たん。
平和、だいじ。平和、だいじ。平和、だいじ~~~!!!
かなり不穏当すぎる思考を抱え
足のくっさいスマホ男児に軽い殺意の目線を送りながら
広島で降車していったでかいご夫婦のお子さんに手を振って
「日本よい国。観光楽しんで。
そして、どうかどうかこの平和を続けて参りませうね」と
新幹線の中で妙に殊勝な気持ちでおりました。
サヴァラン
あら。なんでしょ。この長さ↑
長すぎるコメントですびばぜん。
uematsu Post author
サヴァランさん
いえいえ、コメントありがとうございます。
もしかしたら、そのクッサイ若者がやがて多くの人を救うことがあるかもしれません!(あんまり、自信ないけど)。
しかし、新幹線で靴脱いで、さらに靴下脱いで、しかも足を組んで、足の裏をこっちの顔の方に向けるおっさんには、明確な殺意を覚えます、はい。
アメちゃん
こんにちわ!
すごい偶然ですねー。
ただ遭うだけならともかく、座席まで同じシチュエーションって!
私も昔、会社勤めをしてたときに
朝の通勤電車で、立ってた私の前に座ってたおじさんが
帰りの電車(帰り時間はまちまちなのに)でも、私が立ったその前に座ってた時は
ちょっとビックリしました。
わりと「そーだ!あの人に聞きたいことがあるんだよな〜」とか思ったとたん
その人が現れる、なんてコトよくありますね。
テレパシーですね。
でも。遭いたくないなーと思う人も
まさかココで!!って感じで引き寄せるので、注意が必要です~~;。
uematsu Post author
アメちゃんさん
人を引き寄せる人というのは、
良いパターンと悪いパターンを選べない、という人が多いですね。
僕も同じです。
僕の知り合いのなかには、ヨメとの新婚旅行の旅先で、元ヨメとばったり、という話があります。
まあ、こいつの場合は新婚旅行が2回とも同じ場所だったというミスがあるのですが、
その同じ場所に、同じ日に、元ヨメが仕事で来ていた、と言うある意味が奇跡が起きたようです。
ちーこ
数年前、私はアジアのある国に暮らしており、その日は所用で帰っていた日本の実家からアジアの自宅に戻るのに、とある地方都市の空港にいました。
売店で横にいた若い女性があるものを探していて、店員に「ないんですよ」と言われていたのを聞き、私は「それなら下の階のコンビニにありますよ」と彼女に教えてあげました。
すると、彼女は”Thank you”と言ったので、「あら、日本人じゃなかったのね」と思いながら別れました。
アジアの空港に着き、バスで自宅に戻るのに空港のバス停で待っていたら、あれまー、日本の空港で会ったあの彼女がやって来たではないですか!
なんと彼女は私が暮らす街に住んでいて、さらに驚いたのは、彼女のお祖母様が私のアパートの一階に住んでいらっしゃったのです。
実家のある地方都市の空港は地方とは言え、数カ国に飛行機が出ていて、彼女が同じ路線だったこと、そして、アジアのその空港は世界でも有数のハブ空港なのに、帰る街が同じだったこと、そして、その街に何万とあるアパートなのに、お祖母様と私のアパートが同じ!
私のアパートの一階には専用庭からフェンスいっぱいにバラを這わせているお宅があり、季節になるとそれはそれは見事なバラが咲き乱れ、毎日そこを通るたびに「この家にはどんな人が住んでるのかしら」と思っていた、まさにその家がお祖母様のお宅でした。
この出会いから間もなくして日本に帰国したので、何度かしか行き来できなかったのが残念ですが、偶然の出会いといえば思い出す出来事です。
その国に暮らしている間じゅう、私や家族の健康面でよくないことの連続でしたが、この偶然の出会い以外にも、現地の人との巡り会いだけは恵まれ、不思議な数年間でした。
uematsu Post author
ちーこさん
それはとても素敵な巡り合わせですね。
でも、本当になんなんでしょうね、世界には山ほど人がいて、
星の数ほどの国があって、
そのなかのピンポイントの人と再会して、
しかも、再会しているとわかる状態で再会できるなんて。
本当は、再会していることも知らないままにすれ違っていることもあるわけだから。