なぜ、走るのか、という質問。
大阪マラソンを走ったあと、「走るってすごいですね」とか「フルマラソン走るなんて、たいしたもんだ」とか言われる。
おそらく、走った僕を労ったり励ましたりすることが目的でそう言ってくれているのだと思う。で、そんなちょっと大げさな歓喜の声にたまに混ざるのが「なんで、走るんですか」という質問。
実は、こう思ってる人が多いだろうし、僕だって、ずっとそう思ってきた。だいたい、僕は走ることが大嫌いだった。高校のマラソン大会は、コースからそっと外れてさぼっていたくらいだ。
で、そんな僕が「なんで、走るんですか」と聞かれるととても困る。いやもう、理由なんて実はなんにもなくて、というか、説明ができなくて、それをまあ、なんとなく「自分のちょっとした限界を知りたくて」とか「たまたま、走り始めたら面白くて」とか言ってはいるけど、本当のところはわからない。
わからないけれど、走ってしまっている、というのが正直なところ。走っちゃうと、途中でやめるわけにはいかんのよ、という気持ちになってしまうから不思議である。
なかには、「走るのが楽しいのだよ」という人もいると思う。でもなあ、少なくとも僕の場合は、どっちでもいいなら、ごろごろしてたいタイプなので、マラソン大会が終わって、「おう、宿まで走って帰るか!?」なんて連れだって走って帰って行くおっさんたちの背中をみて「すげえ」とつぶやいたりしている。
でも、こないだ大阪マラソンを走ってるときに、ふと思ったのさ。生まれて初めての膝痛を経験しつつ、御堂筋を走り、大阪ドームを眺め、インテックス大阪へのバイパスを駆け上がっているときに、思ったのさ。
走るって、出不精の自分にとって、見ず知らずの人に会いに行く手段なのかもしれん、なんてね。放っておくと、一人で映画館にいって映画見て、本を読みながら寝っ転がって、できることなら一人でぼんやりしていたい、なんて思っているのに、マラソン大会にでると、見ず知らずの人とハイタッチしたりしながら、見知らぬ町を走っていたりする。もしかしたら、そんなこんなが楽しいのかもしれねえなあ、なんて江戸っ子みたいに思ったりするのだ。関西人なのに。
そう言えば、僕が知ってる市民ランナーみたいな人たちは不器用な人が多い気もする。そんな人がコツコツと走り、年に1回か2回かマラソン大会に出る。そこで、見ず知らずの人にパワーをもらうという経験を本当にする。
僕は自分が出た映画の学校で学生に教えたりしているけれど、決して学生に「元気をもらった」なんて思わない。先生という仕事は学生に何かを渡すことはあっても、元気もらってどうすんだ、と本気で思う。
だけど、マラソン大会のハイタッチは本当に力をもらえるから不思議だ。足が動かないくらいに疲れ切っているのに、見知らぬ子どもたちや応援のおっちゃんおばちゃんに声をかけられ、ハイタッチをした瞬間には本当にちょっと走れるようになったりする。足が一瞬軽くなったりするのだ。
ああ、だからだろうなあ。しんどいとか、もういやだとか言いながら、年に1度か2度はマラソン大会に応募しちゃうのか。そして、当選したら「あ〜あ、当選しちゃったよ」と言いながら、シューズを履いて、マラソン大会のために、少しずつ走り始めたりするのである。
そうか。なるほど。そうなのか。僕にとってのマラソンて、そういうことなのか。
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植松眞人(うえまつまさと) 1962年生まれ。A型さそり座。 兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。 現在、神楽坂にあるオフィス★イサナのクリエイティブディレクター、東京・大阪のビジュアルアーツ専門学校で非常勤講師。ヨメと娘と息子と猫のマロンと東京の千駄木で暮らしてます。
★これまでの植松さんの記事は、こちらからどうぞ。
さきこ
そういえば私も前は「なんで走ってるんですか」の質問してましたね。
いまは自分がその質問をされるほうになりましたが、植松さんのように明快な答えがまだ見つかってないかもです。
今週末、私もフルを走るので、走りながら考えてみます。
幸いなことに考える時間は人よりたっぷりあるので(笑)。
uematsu Post author
さきこさん
フルマラソン、頑張ってください!
僕も明確な答えがある訳ではなくて、
こうなのかな、と思ったら、
また別の答えが出てきたり、
なかなかもやもやしています。
でも、また走ろうと思えたりするんだから、
どこか惹かれるところ、
好きなところがあるんでしょうね。
どっちにしても、
しんどいしんどいと言いながら
出場するなんて、
不思議なスポーツです(笑)