人が集まると汗をかく。
このコラムを書かせていただいているサイトは、原則、年齢がover40な方々が集まってくる。
その書き手も読者もほとんどが女性である。ごくたまに女性読者のご主人が、このコラムを読んでいるというお話は聞くのだが、男性読者が少数だということに違いはないだろう。
そんな女性だらけのサイトのオフ会、というのか年に1度の総会というのか、そんなものにお誘いを受ける。一応、毎年お誘いいただいていて、いけるときには調整して出かけている。
ところがである。去年の集まりで僕は失態をおかしてしまったのである。去年のこのくらいの時期に開催されたover40の集まりを僕は忘れていたのである。行けなかったのではなく、すっかり失念していたのである。わざとではない。スケジュールにしっかりと入れていたのにもかかわらず、まったくもって忘れていたのである。
気がついたときには夜になっていて、「あ!忘れていた」ということでかなり焦った記憶がある。と、同時に、「おお、行かなくて済んだ」という安堵感も味わったのである。
いやほら、考えてもごらんください。
数十人のover40が集まるんですよ。女ばっかりですよ。女学校の先生が同窓会に呼ばれたのでもない限り、そこへ、喜び勇んで顔を出す男がいたとしたら、わたしゃその男とは友だちになれないね。いや、そんな知り合い、自分以外にいないのでわからないのだけれど。
第一、over40の女性が集まって、静かに話せるわけがない。今回だって、帰ってきたら、喉が枯れていたほどだ。一つの話題で話していたはずなのに、別の話題が別の方向から飛び込んできて、どっちに答えたらいいのかがわからなくなるのである。
さらに、今回はなぜか不倫についての話題で盛り上がっていて、あ、違う。不倫の話ではない。over40の皆様方が盛り上がっていたのは、「最後の恋」の話であった。不倫などと言う下世話なお話ではなく、「最後の恋」をするチャンスが目の前に巡ってきたら、どうするのか、という話題などで盛り上がっている。
男としては正直、そんなチャンスがあって、なんの後腐れもないのなら、あわよくばという気持ちもムクムクとしてくるのではあるが、そうは言ってもその対象は20代30代のイメージなのである。以前そんなことをover40のコラムにちょろっと書いたときには「そんな男の馬鹿さ加減で、どれだけの女が傷ついていると思っているのか!」という叱責を受けたりもしたので、「いやまあ、そういうチャンスがあっても、邪魔くさいのであたしゃもういいです」などと答えたりするのであった。
いやいや、それだって本心なのである。よほどのことがない限り、ややこしいことにはなりたくないのである。失うものが多いとか少ないとかの話ではなく、邪魔くさいというのはまごう事なき本心なのであります。
別に枯れてるわけでもなく、疲れ切っているわけでもないのだが、本心が一つとは限らないというのは誰の中にもある真実だと思うのだけれども、とりあえず、僕の中の真実の一つをそっと、over40の皆様方に差し出して見たのである。
差し出してみて、over40のみなさまから「またまたあ~」なんて言われると、「これだけが本心ではないけれども」と告白しそうになり、したらしたでややこしかろうと、苦笑いをして、アルコールの飲めない私はウーロン茶などちびちびすすりつつ、目の前のチャプチェをつるつるするのである。
と、こんなことを書いているのは、over40のオフ会で追い詰められて困ったぞ、ということではなく、どんな会であっても、人が集まるとそこには得体の知れない熱気のようなものがわいてくるのだな、ということなのであった。
人が集まって、話をして、笑って、食べて、飲んでいると、そこここからじわじわと熱が生じる。その熱がまた人を刺激して、新しい話題が登場し、また笑って、また食べて、また飲んで新たな熱が生じるのである。
そこが面白い。個人的には人が三人以上集まるところが本当に苦手で、何もないなら、一人でじっとしていたいタイプなのだが、たまに、人が集まるところに顔を出すのは嫌いではないのだ。そこで、いろんな人がいろんな話題で盛り上がっているのを見ているのが面白い。そして、時に、自分もグイッと割り込んで、ちょっと汗をかいて、また引っ込む。そんな時間が面白いのである。
ああ、人間だなあと思う。そして、人と人とが顔をつきあわせて、その場の空気を振るわせることこそが、人の幸せへと続く道なのかなあと思う。
植松さんとデザイナーのヤブウチさんがラインスタンプを作りました。
ネコのマロンとは?→★
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クリエイターズスタンプのところで、検索した方がはやいかも。
そして、こちらが「ネコのマロン、参院選に立つ。」のサイト
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植松眞人(うえまつまさと) 1962年生まれ。A型さそり座。 兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。 現在、神楽坂にあるオフィス★イサナのクリエイティブディレクター、東京・大阪のビジュアルアーツ専門学校で非常勤講師。ヨメと娘と息子と猫のマロンと東京の千駄木で暮らしてます。
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