停電の夜に考えた戦争のこと。
先日の台風で、兵庫県伊丹の実家が停電した。結局、二日と半日ほど停電していたことになる。ちょうど、大阪で仕事があったので、いつもなら実家で寝泊まりするのだが、事前に母から「停電でエアコンも効かないし、トイレもいけないので帰ってこないで」と連絡があった。僕は仕事先の近くのホテルを取り、宿泊することになった。
最近のホテルはベッドもいいし、寝泊まりだけするには快適だ。台風が過ぎ去った直後で、外国人観光客も少なく、とても静かに過ごすことができた。
しかし、とは言ってもその間、年老いた母は家から徒歩5分のイオンモールのトイレで用を足し、そこのスターバックスで携帯電話の充電をさせてもらいながら過ごしているのだと思うと、少し不安な気持ちになるのだった。
エアコンのない部屋の中で脱水症状などを起こさないかということ。さらに、トイレを我慢しすぎて変調を来したりしないかということ。さらにさらに、台風被害にかこつけて妙な物売りがやってきて騙されたりしないかどうかということ。
もう、考え出すとあれやこれやが頭をよぎってしまうのだった。
もちろん、僕が考える程度のことは、うちのヨメや親戚のおばさん連中がちゃんと考えていて、直接話に行ってくれたり、電話で説明してくれたりしているようだ。なので、僕自身は逆に自分がやらなければならないことを淡々とこなすだけでいい。
しかし、いつもこういうときに想像してしまうことがある。それはニュースなどで、取り上げられている被災地のど真ん中に自分がいたらどうしよう、ということだ。浸水してしまった家の中で、呆然と立ち尽くしながら、なにもできずにいる自分を想像しては、我ながら「ああ、頼りない」と思うのである。
高校生の頃、同級生たちと「戦争が起きたらどうする」という話をしていたことがあった。「絶対に逃げる」とか「いや、そうなったらなったで戦う」とかみんなが口々に言うのだが、僕自身は「きっと僕が行っても役に立たない」という思うのみだった。全力で戦争から逃げるといっても、うまく逃げる自信がない。きっとどこかで捕まるか、逃げる途中に足を滑らせて身動きできなくなってしまう。
さらに、戦場に行ったとしても、僕が投げた手榴弾が仲間に当たってしまったり、または自分で暴発させてしまい、なんの役にも立たないまま死んでいく姿を容易に想像できてしまうのだ。
戦争という、ちょっときな臭い、ややこしい話になってはしまったが、ようはここ一番という時に、役に立てる気がしない、という確固たる思い込みがあるのだ。災害や戦争や諸々の困りごとが起こったときに、たとえ役に立たなくても、役に立ちたいなあと思うくらいの人間ではありたいとは思うのだけれど。
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植松眞人(うえまつまさと) 1962年生まれ。A型さそり座。 兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。 現在、神楽坂にあるオフィス★イサナのクリエイティブディレクター、東京・大阪のビジュアルアーツ専門学校で非常勤講師。ヨメと娘と息子と猫のマロンと東京の千駄木で暮らしてます。
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