娘と海遊館デートした日のこと。
うちの娘は今年で24歳になったのだけれども、親から見ると子どもの頃とあんまり変わっていない。娘については、なんとなく悪いことをしたなあという気持ちがあって、ときどき複雑な気持ちになる。
娘が生まれた時、初めての子どもだったということもあり、また女の子だったということもあり、毎日帰るのが楽しみなくらいに嬉しかった。家に帰って起きていれば風呂に入れるし、寝ていれば寝顔をいつまで眺めていても飽きなかった。
そんな具合だったから、娘のほうも僕にえらく懐いて、誰からも「お父さんが大好きなんだねえ」と言われるくらいだった。しかし、娘が3歳になった時に長男が生まれてすぐに、仕事の都合で、僕は当時住んでいた兵庫県西宮から東京へ単身赴任することになった。
娘からすると、弟が生まれたことで母ちゃんを取られ、父ちゃんもいなくなった、という感覚になったような気がする。東京と西宮で電話で話をしても電話を切ろうとしなかったし、月に何度か帰省して、東京に戻ろうとすると大泣きした。
寂しい思いをさせているなあ、という気持ちもあって、東京から帰省した平日に、娘を連れて大阪の水族館・海遊館へ行くことにした。息子は嫁が見ていてくれる、というので、初めて二人だけのお出かけだった。
娘はあの時、何歳だったのだろう。4歳か、もう5歳になっていたのか。ちょっと覚えていないのだけれど、二人っきりでどこかに遊びに行くのが初めてだったので、僕は緊張していた。幼稚園に娘を迎えに行くと、先生が「今日はお父さんとデートなの?よかったねえ」と送り出してくれた。先生の言葉を聞いて、娘は嬉しそうに照れくさそうにしながら、僕に手を振って近づいてきた。
車で海遊館へ行き、まずはその近くにあった大きなIMAXの映画館で、ディズニーの『ファンタジア』を見た。セリフのないアニメによる交響楽のような映画なので、幼稚園児でも見れると思ったから。娘は大喜び、していたと思う。その後、軽くサンドイッチなどを食べ、海遊館に行き、いろんな魚を見て、クラゲをみて、イルカショーなんかを見て、夕方になるまで歩き回った。
さあ、次は何をしよう。ジュースを飲ませながら、「ゲームセンターに行く?」「なんかおやつ買いに行く?」と聞いていると、だんだんと娘が無口になってきた。「どうした?」「なんか他に行きたいところがあるのか?」「トイレか?」と聞くのだが、もう明らかに不機嫌に。
すると娘の口から「もう疲れた。お父さん、頑張りすぎ!」という言葉が。娘は娘なりに、僕が頑張っていることに気を遣って言わなかったのだが、一日中あちらこちらを連れ回したことで疲れていたのだった。「そうか、疲れたのか。なるほど、じゃ、帰るか」と僕たちは海遊館を後にした。
僕が単身赴任していた間の3年ほどの間には、なんだかいま思いだしても泣いてしまいそうな、娘とのやり取りがあった。でも、この海遊館に行った時の、頑張りすぎて娘を怒らせた一件は、いま思い出しても楽しいとか、嬉しいとか、すまないとか、そういう気持ちが全部混ざった気持ちを思い出させてくれる。
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植松眞人(うえまつまさと) 1962年生まれ。A型さそり座。 兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。 現在は、東京・大阪のビジュアルアーツ専門学校で非常勤講師も務める。ヨメと娘と息子と猫のマロンと東京の千駄木で暮らしてます。サイト:オフィス★イサナ
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はしーば
泣きました。
上手く言えませんが、娘さんの父親であることのどうしようもない切なさが胸を打ちます。
2年前に亡くなった父のことが思いだされ、ますます切なくなりました。
uematsu Post author
はしーばさん
コメントありがとうございます。
なんだか、成長してくれることが嬉しくて、
そして切なくて、なんだか複雑な思いだったことを
今でも思い出します。