叱らないとしんどいよ。
このあいだ、映画の学校の卒業制のことを書いた。今度は在校生のことを書きたいと思う。最近、学校という場所はなかなか不自由なところになってきている。それは学生にとっても先生にとっても。なんでも小中学校ではニックネームが禁止らしい。ニックネームで呼び合っているように見えて、実はいじめだったりするかららしい。そして、先生は先生で生徒を呼び捨てにするのはダメらしい。カツオくんに「おーい、磯野!これ頼むわ!」と声をかけ、「わかりました!」というやり取りは前時代的なのだそうだ。あ、ついでに、LGBT問題があるので「磯野くん」もいけなくて「磯野さん」が正解である。というわけで、僕の学校でも出席を取るときには全員、さん付けで名前を呼ぶ。
しかし、これはもう誰もが知っていることだけれど、いくらさん付けにしても、呼び捨てのように、ぞんざいに「磯野さんっ!!ちょっとこっちへ」なんて吐き捨てるように言えば、そりゃもう親しみを込めて、「磯野っ!こっちへおいでよ」と言うほうがまだ良いだろう。なかには「磯野さんなんて、気持ち悪いからやめてよ」という学生もいる。
個人的には最低限、世の中に即していきたいと思う。LGBT問題がここまで取り上げられている時代なんだから、やっぱりさん付けがいいかな、と思う。ニックネーム問題も、確かに生徒の気持ちも知らないで妙なニックネームを付けてしまう先生は、僕らの時代にもいたので気をつけようと思う。だけど、ようは言い方の問題だったり、言う方の気持ちの問題だったりする部分が大きいので、表面的な部分だけを気をつけたって仕方がない。もっとちゃんと学生のことを見てやらないといけないと思うのだけれど、意外に「ちゃんと挨拶をするように指導してください」とくどいくらいに言っているエラい先生が、学生や講師の僕らには適当な挨拶をしていたりする。
僕はそれよりももっと本能的におかしいな、と思う事に対して敏感になれば良いのに、と思う。例えば、僕は帽子を被ったまま授業を受ける学生が苦手だ。僕が子どもの頃は、室内で帽子を被るだけで叱られたものだ。でも、いま僕の学校では教室で帽子を被っていても叱られることはない。叱るのは僕くらいだ。
僕も世の中の流れには即していこうと思ってはいるけれど、まだ就活の面接で帽子を被っていてもOKというところまではきていない。それはやっぱり室内で帽子を被っていたり、自分よりも目上の人のまで帽子を取らないのは失礼だという意識があるからだ。
でも、学校では「脱帽しなさい」とは言われていないので、学生たちは帽子を被って僕の授業を受けたりする。僕は帽子を被ったまま授業を受けられるのがいやなので、ちゃんと「脱帽してください」と言う。するとたまに「他の先生の授業では帽子を被ったままでもなにも言われません」と言う学生がいる。そんな時、僕はこんなふうに説明する。
「法律で帽子を被ってはいけない、と決まっているワケではないし、学校もうるさくはいわない。けれど、僕は室内で帽子を被らないように言われてきたし、ましてや授業中帽子を被ってもいいということを一度も教わらなかったので、僕の授業では被って欲しくない。なので、一応、注意します。でも、他の先生のなかには気にしないという人もいるだろうし、みんなの中にも『俺のアイデンティティなのだ、帽子は!』という人もいるかも知れない。そんな場合は仕方がない。それなら、そう宣言してください。僕が「帽子被ったまま授業を受けてもらうのはいやだ」と主張したのと同じように「帽子被りたい」と言ってください。法律も学校も認めているなら、僕が折れます。あと、肉体的な問題で帽子を取りたくない、という場合も僕に言ってください」
だいたい、こんな話を穏やかにする。この話をして、いままで帽子を取らなかった学生はいない。もしかしたら、これから出てくるかもしれないけれど、それはそれで自分なりの覚悟があるのだから逆にいいと思う。ただ、帽子を被ったまま授業を受ける学生が増えて「最近の学生は帽子を被ったまま授業を受けますねえ。表情が見えなくて気持ちが悪いよ」なんてあとで言うのはいやだ。
そして、そういう細かなところをちゃんと叱っておかないと、後々授業が必ずしんどくなってくる。だらだらとして、そのクラスの雰囲気が大きく乱れてくる。僕は邪魔くさがりだし、だらしのない人間だからこそ、最初にちゃんとしておきたい。こっちが腹を割って話せば、ほとんどの学生が分かってくれる。もちろん、分かってくれないのもいるけどさ(笑)。
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植松眞人(うえまつまさと) 1962年生まれ。A型さそり座。 兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。 現在は、東京・大阪のビジュアルアーツ専門学校で非常勤講師も務める。ヨメと娘と息子と猫のマロンと東京の千駄木で暮らしてます。サイト:オフィス★イサナ
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