マスク警察からのがれる。
バスに乗っていると、僕の布マスクをじっと見ている人がいたのです。これは不味いぞ、とわたしゃ思いました。朝のニュースで見たのです。なんちゃらというスーパーコンピュータがマスクは不織布マスクじゃないといけん!ということをはじき出したのだということを。布マスクとかウレタンのマスクはウイルスをまき散らしてしまうかもしれん。いちばんいいのは不織布マスクだと、スーパーコンピュータははじき出したのでした。
こりゃ、きっとそういうニュースを見た人なんだろうなあと、僕はその人を見ていたのです。ただまあ、僕とその人とは距離があったので、直接なにかを言われることはありませんでした。だけど、ちらちらと見るのです。とりあえず僕は読んでいた本をちょいと上にあげて、目隠しのようにマスクを隠しました。そして、あんまりその人を気にしないようにしたのです。
で、しばらくしてからふと顔をあげると、その人は相変わらずこっちを見ていました。が、僕ではなく見ていたのは、ウレタンマスクをしていた女性。や、やばい、これはもしかしたら、その女性が自粛警察ならぬマスク警察に逮捕されてしまうかもしれない。と、僕は心配しながら見守っていたのです。
案の定、マスク警察が動きました。その人、あ、その人っていうのはおじさんですが、そのおじさんが「ウレタンマスクは、ダメなんだよ。不織布じゃないと」と注意し始めたのです。すると、その女性が穏やかに言い返しました。「このマスクは不織布マスクよりも、飛沫が飛ばないように処理されているマスクなんです」と微笑みながらいうのです。「ほ、ほ、ほんまか」とおじさん。「ほんまです。だから、大丈夫です。それより安い不織布マスクの方が危ないんですよ」と女性。そこで、二人の会話は終わり、バスはちょうど終点の最寄り駅に。
みんな、何事もなかったかのようにバスを降りて言ったのですが、僕の隣にいたおばちゃんは言いました。「どっちゃでもええやないか」と。うん。そうだなあ、僕もどっちゃでもええと思います。思うけれど、マスク警察に絡まれるとイヤなので、不織布マスクをしようかな。なんだかもう、イヤだよ。ほんと。ドキドキするし、人間のものすごくイヤなところばかりが表に出てくる気がするよ。
植松さんとデザイナーのヤブウチさんがラインスタンプを作りました。
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植松眞人(うえまつまさと) 1962年生まれ。A型さそり座。 兵庫県生まれ。映画の専門学校を出て、なぜかコピーライターに。 現在は、東京・大阪のビジュアルアーツ専門学校で非常勤講師も務める。ヨメと娘と息子と猫のマロンと東京の千駄木で暮らしてます。
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ほ
はじめまして。
いつも楽しく読ませていただいてます。
マスク警察にはハラハラさせられますね。
マスクがなかなか手に入らなかった頃、あまりに息がしにくい中国製不織布マスクを分解してみたら、中から薄いウレタンシートが出てきました。
試しに口につけて息を吐きましたが、通気性皆無。
マスクの上下左右から呼吸してるだけの製品もかなりあるのではないかと思います。
不織布マスクなら良いと限りませんよね。
スーパーコンピュータで実験したのは性能の良いサージカルマスクだったんではないでしょうか?
uematsu Post author
ほさん
そうなんですよね。
布マスクでも、そこそこ成績のいいのもあったらしいし、アレルギーのある人は不織布マスクは苦手だというし、本当は正解ってなさそうな気がするんですけどね。
でも、一度流れができると、そこに正義が生まれて、なんだかギスギスしてしまう。
そういうのが、とても辛いですね
Jane
言われた女性の返す刀、見事ですね。その女性の答えた言葉、空白の吹き出しにしておいて、シナリオ作家志望の生徒に「あなたならどう答えますか」と聞いたら面白そう。私なら、「どんなマスクでもしゃべらないほうが飛沫を減らせますよ」というかな。そしたらおじさんに「おまえもしゃべっとるだろ」と返されるでしょうか。
uematsu Post author
Janeさん
僕ならなんで答えるかなあ。
何答えても、おっちゃんにキレられそうですねえ。